haru_haru0704
2024-10-14 00:58:25
6205文字
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統率者である以上

カカロ×忌炎 全年齢

オリキャラのゴーストハウンド団員がいます
あんまり主張は激しくない

『君には、夜帰軍の忌炎将軍を殺してもらいたい』
「・・・・・・」
カカロは無言のまま、じっとデバイスを見つめていた。
そんな彼に構わず、デバイスの向こう側の人物は話を続ける。
『もし断れば、君の隣にいる彼の体に取り付けられた爆弾を爆発させる。爆弾の威力は・・・そうだな、そこの拠点を丸ごと木っ端微塵にするくらいかな?』
その言葉を聞いた幽霊猟犬の下っ端団員のレネは、恐怖と申し訳なさに体を震わせた。
自分がミスをして、爆弾を取り付けられたりしなければ。幽霊猟犬のアジトに辿り着く前に、爆弾を何とかできていれば。
そう。カカロとレネは今、幽霊猟犬のアジト内の一室にて、デバイスを介した通話をしていた。
『まずは、私からの依頼を受けるか受けないか、その返事から聞かせてもらおうか』
「受ける」
カカロは即答した。
受けると言わなければ、彼とレネ、そしてアジトにいる数十人が爆死してしまう。
『よろしい。では次に、詳しい条件だ。まず、依頼内容は忌炎将軍を殺して、死体を持ち帰ってくること。できる限り綺麗な死体で頼む』
「何故だ?」
『詳細は省くが、彼の体に生えている鱗に用事がある。それと、ついでに夜帰軍の戦力を削いでおきたい理由もある』
「わかった」
『依頼の遂行方法は君に一任する。だが、おかしな動きをすれば即爆死ということを忘れるな。そこの爆弾が巻かれた彼と同様、徹底的に監視させてもらう。彼の腕に監視装置をつけておいたから、それをひとつ取って身につけてくれ』
レネがおずおずと腕を上げて見せる。
たしかに、彼の両手首には監視装置らしきものが取り付けられていた。
片方はレネの分、もう片方はカカロの分ということだろう。
カカロはレネの右手首から装置を取り外し、自身の左手首に装着した。

その後、カカロは依頼主といくつかの事項について確認をし、通話を終了した。
「だ、団長・・・ごめんなさい、俺のせいで・・・」
レネは泣きそうな顔で謝罪した。
いや、既にほんの少し泣いている。
カカロはそんな彼の頭をわしゃっと撫でると、優しく笑んだ。
「いや、お前はよくやった。俺のところに生きて戻ってきただけで、上出来だ」
「団長・・・でも、本当に忌炎将軍を殺るんですか・・・?」
カカロは一転、酷薄な笑みを浮かべた。
「当然だ。俺たちの命と、あの将軍の命、どちらを優先すべきか。その答えはとっくに出ている」
レネはごくりと唾を飲む。
カカロが放つ殺気に、背筋がぞくぞくと震えた。
団長は、本当に忌炎将軍を殺すつもりなのだ。レネはそう思った。

*
「忌炎将軍!幽霊猟犬からの宣戦布告です!」
部下の報告に、忌炎はゆっくりと頷いた。
「ああ。先ほど、俺のデバイスにも直接メッセージが届いた」
忌炎は、戦略モニターに表示された宣戦布告文を物憂げに見やる。
何の予兆もなく、唐突に寄越された宣戦布告文。
そこには、カカロが忌炎との一騎討ちを望んでいる旨が書かれていた。
「俺が勝てば、幽霊猟犬は無条件降伏。俺が負ければ、夜帰が無条件降伏か・・・」
「い・・・いかがなさいますか」
ふう・・・と溜息を吐くと、忌炎はその身に怜悧な殺意を漲らせた。
「応じよう。彼らが何を考えているかは分からないが、俺が勝てばいいだけの話だ」
静かに猛る将軍を目の当たりにし、夜帰兵士は震え上がった。
この一騎討ちで、カカロか忌炎のどちらかは死ぬかもしれない。そう思わせるほど、忌炎の気迫は凄まじいものだった。

*
夜帰軍に宣戦布告文が届いてから、僅か15分後。
カカロと忌炎は、破陣基地近くの開けた場所にて睨み合っていた。
彼ら2人から数十メートルほど距離を取るようにして、幽霊猟犬の団員たちと夜帰軍の兵士たちが事の成り行きを見守っている。
「さて。まずは一騎討ちに応じてくれたことに感謝しよう」
「・・・・・・」
「俺の目的はお前だ。忌炎将軍。お前を殺し、その死体を持ち帰る」
「そうか。俺からは特に言うことはない」
「潔いな。なら、早速始めるとするか」
二者の間の空気が、殺気によってどろりと濁る。
彼らは互いに得物に手をかけ、相手の隙を窺った。
やがて、カカロの身に纏う紫電がパチリと弾ける。
それを契機として、彼らは同時に地を蹴った。

両陣営の観戦者たちは、青龍と紫電が激しくぶつかり合う様を固唾を飲んで見守っていた。
残像と共鳴者との戦いを見ることは数多くあれど、共鳴者同士の殺し合いを目撃するのは初めてなのだ。
鋭い風と共に何もかもを切り裂く、青龍の大あぎと。
掠めただけで肉体を激しく損傷させる、高圧の紫電。
更には、長刃と槍の応酬。
何度も繰り出される致命的な攻撃の数々を、しかし彼らは紙一重で避け続けていた。
いまだ二者共に、有効打はひとつも与えられていない。
拮抗状態の戦いは、そのまま数十分も続くかと思われた。
だが、彼らの戦いは突如として終わりを迎える。
忌炎が僅かに体のバランスを崩したのだ。
そして──
カカロの握る長刃が、忌炎の胸へと突き刺さった。
刃はあやまたず心臓を刺し貫き、刀身は忌炎の背まで突き抜けている。
「・・・!」
観戦者たちがどよめいた。
あまりにもあっさりとついてしまった決着に、誰もが信じられぬという顔をしている。
忌炎は呆然とした表情を浮かべ、自身の胸に刺さった刃を見下ろしていた。
ややあって、彼は口からごぽりと血を吐き出す。
カカロが長刃を引き抜くと、彼は地へと倒れ伏した。
「忌・・・!忌炎将軍のバイタルが、フラットラインに・・・!」
忌炎のデバイスから送られるバイタルデータを確認していた夜帰軍兵士が、悲痛な声で叫んだ。
「そ、そんな・・・」
「忌炎将軍・・・!」
兵士たちの間に、絶望と悲しみ、そして憎しみの入り交じった感情が広がっていく。
忌炎が操る青龍は、跡形もなくかき消えていた。

夜帰を導く青龍の旗印は、今この時をもって地に落とされたのだ。
それも残像ではなく、人間の手によって。

*
カカロは忌炎の腰からデバイスをもぎ取ると、夜帰全軍への通達のために使われる一方向通信を開始した。
「忌炎将軍は死んだ。これより、夜帰軍の指揮は幽霊猟犬が執り行う。・・・せっかく忌炎将軍に守られた命だ。有意義に使えよ」
通信を切り、デバイスを適当に放り投げる。
そして忌炎の死体を担ぎ上げると、カカロは歩き出した。
「レネ!俺についてこい。他の奴らは、夜帰が妙な動きをしないか見張っておけ。・・・慎重にな」
指示を残し、カカロはレネと共に依頼主の元へと向かった。
忌炎の死体を届ければ、依頼は完了だ。

*
カカロとレネは、指定された地点へと辿り着いた。
そこは、終戦の関からやや東にある、小さな小さな島だ。
「やあ、カカロ団長。ご苦労だったな」
島の中央には、護衛を伴った初老の男が立っていた。
「あんたが依頼主か?」
「そうだ。昨日、デバイス越しに話していたのは私だ」
「意外だな。最後まで顔を見せないものと思っていた」
依頼主の男はくつくつと笑う。
「ずっと君のことを疑って監視していたが、君は最後まで怪しい動きをひとつもしなかった。だから、その誠実さに応えようと思ってね」
「なら、さっさとこの爆弾を外してもらおうか。それから報酬の金だ」
カカロの言葉に、依頼主の男はやれやれと首を振った。
「せっかちだな。・・・まあいい。お前たち、あれを外してやれ」
依頼主の男が指示すると、護衛たちがレネを取り囲んだ。
何かしらの装置をレネに近付け、腹に括り付けられた爆弾を手際よく外していく。
やがて爆弾が取り去られると、レネは安堵の息を吐いた。
「ところで、その爆弾は処理させてもらってもいいだろうか?」
カカロは男に尋ねる。
「処理、というと?」
「海の方に投げて、爆発させる。裏切られる可能性はとことん消しておきたいタチでな。構わないか?」
「なるほど。構わないぞ。だが、最低でも400mは離れたところへ投げてくれ」
「分かった」
カカロは爆弾を掴むと、海の上空に向かって思い切り投擲した。
飛距離は400mを優に超え、どんどん遠ざかっていく。
やがて依頼主の男がデバイスを操作すると、爆弾は大爆発を起こした。
「さて、ではそろそろ忌炎将軍の体を渡してもらおうか。報酬の金はそれと引き換えに・・・」
「ああ。もういい」
男の言葉を遮り、カカロは首を振った。
「すまないな、忌炎。そういうわけがあったとはいえ、随分と迷惑をかけた」
「なるほど。よく分かった」
ずっとカカロの肩に担がれていた死体が、言葉を発した。
否。もちろんそれは死体などではない。
「ずっと死体のふりをするというのも、疲れるものだな」
忌炎はむくりと身を起こすと、カカロの肩から降りた。
依頼主の男は慌てふためく。
「な、なぜ・・・!?口裏を合わせることなどできなかったはずだ!ずっと監視していたのに・・・!」
「お前にそれを教えてやる必要はないな」
カカロが冷たく言い放つ。
その瞬間、男の首に青龍が巻きついた。
「こいつの身柄は夜帰が預かろう。詳しく聞きたいこともあるしな」
「ああ。任せる」
カカロは無造作に雷を操り、残った護衛たちをあっさりと昏倒させた。

*
忌炎が「ひとまず伏波陣地に移動しよう」と提案したので、彼らは捕縛した男たちを抱えて西へと向かった。
レネは歩きながら、カカロに尋ねる。
「団長、いつからこの計画を立ててたんですか?」
「最初からだな」
カカロには、自分が死ぬつもりも、レネや忌炎を死なせるつもりも毛頭なかった。
今までの全ては、依頼主を欺くための芝居だったのだ。
「じゃあ、どうやって計画を忌炎将軍に伝えたんですか?俺、団長とずっと一緒にいたのに、そんな素振りひとつも・・・」
カカロの代わりに、忌炎がレネの疑問に答える。
「俺は何も聞いていないぞ。ただ・・・ずっとカカロの雰囲気を妙だと思っていた。だから何か思惑があるのだろうと思って、うまく合わせただけだ」

まず最初に忌炎が疑問を抱いたのは、カカロから届いた宣戦布告文を見た時だった。
夜帰全体に届いた文章と、忌炎個人に届いた文章が僅かに違っていたのだ。
夜帰宛の方は、一騎討ちの時間や場所、そして決着後の取り決めなどが書かれているのみだった。
しかし忌炎宛の方には、『お前の心臓を貫いて殺す』という文章が最後に添えられていた。
なぜ文面が異なるのか?
そして、わざわざ『心臓を貫いて』と指定しているのはなぜなのか?
彼はその疑問の答えを保留にしたまま、一騎討ちの場へと赴いた。
そこで、次の疑問が浮かぶ。
一騎討ちを見守る幽霊猟犬団員の雰囲気が、妙に不安げで、そして困惑しているのだ。
それは、忌炎の背後にいる夜帰兵士たちとまったく同じ雰囲気だった。
唐突に宣戦布告された夜帰が困惑するのは当然だが、宣戦布告をした側が困惑するというのはなぜか?
そして忌炎が最も違和感を覚えたのは、カカロと戦っている最中だった。
彼の雷が、避けやすい場所にしか落ちないのだ。
加えて、普段は彼を支援するように現れる影が、一切その姿を現さない。
忌炎はカカロの目を見た。
そして、漲る殺意の奥に、別のものを感じ取ったのだ。
だから、脚にパチリと弱い雷が走った時、忌炎はわざと体勢を崩した。
次の瞬間、彼の胸に突き立てられたのは──カカロの『牙』だった。
『牙』は折れているのだから、もちろん胸を貫けるはずもない。
だがしかし、忌炎の胸には赤い液体がべとりと付着した。血のりだ。
同時に、観戦者たちがどよめく声が聞こえた。
忌炎本人からは見えなかったが、彼の背には血のりに塗れた刃先があった。
それは、カカロの影が生み出した刃だ。影は器用にも、刃だけを忌炎の背中から生やしていた。
そして更に、忌炎の口の中にぶよぶよとした袋が詰め込まれる。
カカロが雷のような速度で口の中に押し込んだのだ。忌炎以外に、その動きを捉えた者はいないだろう。
まるで手品師のような早業だと感心しながら、忌炎はその袋に歯を突き立てた。
中からどろりと溢れるのは、当然ながら血のりである。
忌炎は青龍を引っ込めると、地面へと倒れ込んだ。
その後は、ただ力を抜いてカカロに抱えられていただけだ。

「そういえば、うちの兵士がバイタルフラットの報告をしていたな。カカロ、あれはどうやったんだ?」
忌炎はふと思い浮かんだ疑問を口にした。
カカロは少し得意げにしながら答える。
「お前のデバイスに、ごく弱い電気を流してやった。初めてやったが、上手く偽装できたらしい」
「もし失敗したら、どうするつもりだった?」
「さっさとデバイスを剥ぎ取って、有耶無耶にするつもりだった」
「なるほど。細部まで抜かりないな」
「お前こそ。さすがの判断力だった」
忌炎とカカロは互いを称え合い、軽く笑った。

*
やがて、一行は伏波陣地へと辿り着いた。
「随分と静かだな」
軍事基地ゆえ普段から騒がしいというわけではないのだが、それにしても静まり返っている。哨戒兵も見当たらない。
きょとんとした顔で首を傾げた忌炎に、カカロは呆れて溜息を吐いた。
「お前が死んだことになってるからだろう。可哀想に、今頃お前の死を悼んでいるに違いない」
カカロは伏波陣地に向かう前、「俺のデバイスから連絡を取るか?」と提案していた。
しかし忌炎は、「そう急ぐ必要もないだろう。それに、無用な混乱を招きそうだ」と断ったのだ。
忌炎の言い分には一理あるが、それでもやはり、皆を早く安心させるために連絡すべきだったのではないかとカカロは思う。
「皆、どこにいるのだろうか・・・伏波陣地は広いからな」
「やはり俺のデバイスを使うか?」
いや、と忌炎は首を振った。
直後、彼の背に青龍が現れる。
「こっちの方が手っ取り早い」
青龍は伏波基地上空を飛び回り、雄々しい龍吟を響かせた。
その音を聞きつけ、建物の中から兵士たちがまろび出てくる。
「将軍!?」
「将軍が生きてる・・・!?」
「いや、溯洄雨の幻影・・・?」
「でも雨は降ってないぞ!」
兵士たちは口々に叫び、慌てている。
忌炎は大きく息を吸うと、声を張り上げた。
「今回のことは、俺とカカロの狂言だ!俺は生きている!皆、心配をかけて悪かった!」
兵士たちは、一瞬静まり返り──そして、歓声を上げた。

かくして、今回の騒動は幕を降ろした。
ちなみに、この騒動は後に『将軍ドッキリ事件』という少々間抜けな名で呼ばれることとなる。

***
後日、カカロは夜帰兵たちに手製のクッキーを配り歩いた。
どうしても詫びがしたいと言ったカカロに対し、忌炎が提示したのがクッキーだったのだ。
「ああ、どうも。わざわざこんなところまで来てもらって、悪いね。・・・へぇ、甘いものが苦手な奴ら用に、しょっぱいのもあるのか。気が利いてるな」
とある夜帰兵士はカカロからクッキーの包みを受け取ると、その場で1枚口に放り込んだ。
「うん、美味い。あのマヌケ・・・いや、我らが将軍様もこのくらい料理が上手かったらいいんだがな」
そう言って笑う彼は、『将軍ドッキリ事件』の命名者である。