三毛田
2024-10-12 13:20:44
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78 08. 愛してるの一言

78日目 

〝愛してる〟
 そんな言葉とともに、熱い口づけ。
 恋愛要素のある映画の定番だ。
……
「しないからな」
 恋人になったばかりの丹恒を思わず見ると、そんな冷たい返事。
「いいな〜。女の子なら、一度は憧れるシチュエーションだよ」
 両手を胸の前で握り、目をつぶってうっとりした表情を浮かべるなの。
「俺はやらないからな」
「俺も。なののことは好きだけど、愛してるまではいかないかな」
「アンタたちにやってくれだなんて、一言も言ってませんけど?!」
 ぷんすこ怒りながら、部屋を出ていく。
「怒られちゃった」
「そうだな」
 苦笑すると、丹恒もちょっと困ったような表情を浮かべて俺を見ていた。
「丹恒」
「どうした」
「今、すごくキスしたくなったんだ。いい、かな?」
 心臓がうるさい。
 初めてのキスが、こんな雰囲気の中でいいのかと、理性のようなよくわからないものが訴えているけど仕方ない。
……お前は、俺とキスがしたかったのか」
「というより、今、したいんだ」
 一歩分距離を詰める。でも、丹恒は逃げない。
 もう少しで、触れることが出来る距離まで近づいた。
 俺を突き飛ばして逃げようと思えば逃げられるだろうに、近づくのを拒否しないでいてくれて。
「いい?」
「一回で満足するのか?」
「わからない。だって、丹恒とキスするのって初めてだから」
「それもそうだな」
 頷くと、手にしていたパンフレットのようなものを綴じて少しだけ俺に近づき。
「キスの仕方は?」
「知らない」
「そうか。実は、俺も知らない」
 お互いに知らないのかと、驚くよりも先に何となく嬉しくなって。
「さっきの映画みたいに、やってみる?」
「そうだな」
 ゆっくりと顔を近づけていく。が、まず鼻にぶつかって。
……
……
「ふふっ」
「ふっ」
 ファーストキスは、失敗しちゃった。でも、嫌な気持ちではない。
「顔を傾ければ、出来そうだな」
「じゃ、そうする」
 もう一度顔を近づけ、今度は鼻と鼻がぶつからないよう少し傾けて。
 ふに。と、柔らかなものが触れ合う。
……
……
 さっきまで食べていた、キャラメルポップコーンの味がした。
「キスって、ドキドキする」
「ああ、そうだな」
 心臓が、これでもかというほどうるさい。だって、耳鳴りがする。
「キスをして、愛してるって言って……
 丹恒を見ると、多分俺と同じくらい顔を真っ赤にして。
「丹恒、好き。大好き」
「俺も、穹が好きだ」
 キスをしただけなのに、ますます互いが好きになった。
「もう一回、いい?」