まよこ
2024-10-10 17:30:56
867文字
Public 浦日
 

猫の写真

900字以下短文。
登場人物: 浦日(うらか) ホラー作家

 推している作家が猫を飼ったようだ。
 その作家はホラーしか書かないとごく一部では有名で、SNSのアカウントも持ってはいるが月数度、取材旅行で出かけた先の当たり障りない風景だとか今日食べた物だとか、まれにあった不思議な出来事だとかを投稿する程度だった。
そんな作家のSNSに、『猫を飼いました』とコメントと画像が投稿された。それからは以前よりも更新頻度が上がり、週に一度は猫の様子を伝える短い言葉と共に画像が投稿されはじめた。
『これで私も猫を飼う作家の仲間入りですね』
絵文字があるわけではないが、どこか楽しそうにも感じられる言葉が続く。SNSでもコメントを残すファンが増えた。
『可愛い猫ちゃんですね!』
『目つきが悪そうなところも愛嬌があります』
『怪我をしてるようですが野良だったんですか?』
 どのコメントにも作家から返答が無いのは以前からだが、『怪我をしていたところを拾ったんです』と画像が投稿されるのをみるに、コメントをみてはいるのだろう。あまり人柄のつかめなかった作家のSNSは珍しく、ファンの間で静かに盛り上がっていた。
 けれど自分の目には、投稿される猫の写真というものはただの真っ黒な画像にしか見えなかった。
作家のメディア欄は次第に真っ黒の画像で埋め尽くされていった。初めはなにかの冗談で、周りのファンもそれに乗っているだけだと思っていた。それにしてはしつこいくらいに続いているし、『なんだ、あの作家ちゃんと存在してたんだw』なんて冗談まじりのファンの言葉もみる。なんなら、作家のアカウントも猫好きのフォロワーが増えている程だ。
思い切って、直近の一つの画像にコメントを送った。
『画像全部、真っ黒ですよね?^^;』
すぐに作家から返答があった。
普段ならどのコメントにも返答なんて無いのに。
『皆、可愛いでしょう』
ただ一言だけだった。
それからなんの補足もネタバラシもなく、やがてまた月数度合間に猫の画像が貼られる頻度の更新となった。
皆には何が見えていて、作家はなんの画像を投稿しているんだろう。