まよこ
2024-10-10 17:16:46
611文字
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地獄で目が覚めた。

短文

 目が覚めると人類は滅んでいた。

 かろうじて残っていた世界で、文明の遺産は人類と似た姿を形どりなんの記憶ももたない僕を慰め励ました。一番の理解者である友人は、僕が一人で寂しくいることがないようにと常に側にいてくれる。
「もう、大丈夫。ここでなら生きていけます」
 徐々に思い出すことがある。胸を押しつぶすような痛みもその一つ。
「それは不治の病です」僕の胸に手を当て心気づかう瞳は、ガラス色だ。
 徐々に気がつくことがある。眠らされている人々のこと。僕もその一人だったということ。

「それは不治の病でした」保存されていた僕のカルテを解説しながら友人は告げた。
「どれほど大丈夫だと伝えようと、そのままの貴方で生きていていいと励まそうと、死を選ぶ人々はいる。それは治しようのない病だと、我々は判断しました。それを癒すことがたとえ今は不可能だとしても。はるか未来の技術に託しました」

それが、僕たちだ。
彼らの言うはるか未来が訪れる前に、人類は滅びてしまったという話。

全てを思い出してしまった。
この胸を押しつぶす痛みは出どころのない不安だ。声もなく涙をこぼす僕は、唯一の理解者などどこにもいなく、目の前の友人は決して望むものを与えてはくれないと悟る。霞んで見える優しい笑顔に言葉をかけた。
「地獄って知ってる?」
とても穏やかな笑顔で友人は応える。
「誰も死なないところ」

      地獄で目が覚めた