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らん
2024-10-07 12:41:55
1458文字
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さくこと
WB
あつい。そう思って起きるのはこれで二度目だった。
いつからそうなったのかあまり覚えていないけれど、桜の家に泊まる時、抱きしめられて眠るようになった。泊まる頻度はそんなに多くないから、きっと数度の経験のはずなのに、妙に居心地が良い桜の腕の中。居心地が良いのに朝まで起きずに眠ってられないのは、思ったよりも互いの体温が高いせいだ。
今日も背後から抱きしめられていて、寝返りを打てないことと暑さが私の目を覚まさせる。
うっすら汗ばんでいる気がする額に、パジャマの下。抱きしめられているから通っている腕の下もきっと汗をかいているだろう。
前に目が覚めた時は結局全てを諦めてそのままもう一度眠ったけれど、今日はちょっと暑すぎる。抱きしめられている力がいつもより強いのかもしれない。首筋にあたる小さな寝息と、ぴったり密着した身体はやっぱり嫌じゃない。だけど、暑いのも事実だ。
とりあえず少し空気が入れば違うかな、なんて寝ぼけた私は覚醒しない頭で考えて、身じろぎをする。桜から遠ざかるように前へ出ようとすると、寝てるせいなのか力が弱まらなくて桜の腕の中から全く抜け出せない。どうしよう。とりあえず動かせる腕を使って額の汗を少しだけ拭うと、結局抜け出すのは諦めることにした。
せめて寝返りは打てないだろうか。今度は回転するように身をよじれば、こっちはわりと上手くいった。桜の腕の中で起こさないように少しずつ角度を変えて、向き合う形に落ち着く。桜の瞼はしっかり閉じられたままだ。
暗闇の中でも桜の左半分はよく見える。真っ白の髪と睫毛。眉毛も真っ白だから、少しだけ発光してるみたい。
寝返りを打てたおかげでさっきよりは引いた汗と一緒に眠気が私をもう一度眠りに誘う。軽く桜の腰に腕を回して、肩に頭を押し付ける形でとろりと目蓋を落とそうとした瞬間、見えないはずの金色が見えた。
「抜け出すのかと思った」
いつもより低い声が至近距離で聞こえる。情事の時より掠れてる気がする。寝起きにしては、やけにはっきりした喋り方だった。
「
……
起こした?」
「出ようとするから」
まるで「出るな」とでも言いたげな言い方だ。トイレに行きたくなる時もあるかもしれないのに。そんなところを気にしている場合ではないはずなのに、眠い私は半分寝かけた状態でごめんと呟いた。
抱きしめられる力が強まる。これじゃあ本当に抜け出せない。ああ、そういえば、汗、かいてる、のに。
「さくら」
名前を呼んだらどうしてか唇が重なった。キスされてるな、と思って、息がしづらくなって、そこでようやくあやふやだった思考が覚醒する。
これじゃあ寝れない。今が何時なのか分からないけど、まだ朝じゃない事は分かる。起きるには早すぎるし、今からどうこうするには遅すぎる。胸板を叩いたらすぐに唇は離れたけど、身体が離れることはなかった。
「ね、たい、んですけど、
……
」
「寝ればいいだろ」
「
……
あんたも寝るの」
「ことはが寝たら」
馬鹿ね。別に捕まえられてなくたって居なくならないのに。
汗は引かない。むしろ増えた気がする。暑くて寝れる気もしない。でも、桜を強く抱きしめ返した。
「おやすみ。また明日ね」
顔はもう見えない。目蓋を閉じたせいでもあるし、そもそも、顔は肩に押し付けたから。このまま寝てやろう。あ、汗、桜もかいてる。
それでも桜は私を抱きしめる事をやめたりしなくて、むしろ頭を抱え込んでくるものだから、ちょっとだけ笑いたくなった。
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