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三毛田
2024-10-05 19:41:56
2969文字
Public
穹丹
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君の指先を整えて
10/05 第50回穹丹ワンライ
「あいてててて
……
」
情交を終え、汗を流すためにシャワー室へ。
お湯を背中にかけた時には気にならなかったが、泡立てた石鹸で軽くこすったら沁みた。
「丹恒滅茶苦茶爪立ててたもんなぁ」
痛かったのか、気持ちよかったのかはわからない。でも、爪を立てていることに気づかないくらいギュッと強く俺にしがみついていたのは確かで。
『きゅう
……
』
熱のこもった瞳でこちらを見上げ、必死に俺を求めてくる。
そんなシチュエーションに興奮しないわけがない。
というわけで、俺も夢中になって彼を抱いてしまった。ので、おあいこだろう。
「うわぁ
……
」
全身を綺麗にし、体を拭いて鏡で背中を見るとすごいことになっていた。
放射線状に伸びる赤い線。しかも、それが何本もあって。
肩甲骨回りが特にひどい。
でも、ある意味丹恒からの愛情表現だと考えれば気分は上がる。
「もう出たのか」
不満そうな声がかかる。振り返ると、タオルを手にした丹恒。
「わぁ
……
」
俺よりも白い肌にいくつもの花が咲いているのを見て、照れくさいような自分に引くような声が出てしまった。
「なんだ?」
「丹恒、痛くない?」
「別に大丈夫だ。その、お前こそ大丈夫か?」
丹恒の視線が鏡に向けられ。
「うん。ちょっと沁みたけど、部屋に戻ったら傷薬軽く塗るから」
「そうか。それならいい」
と呟き、己の手を見て。それにつられ、俺も自分の手に目を落とす。
『相手を傷つけないために、少し深爪になるくらいがちょうどいいかもしれません』
的なことが、ネットの記事に書いてあった。
でも、足りない。もっと綺麗に、丁寧に。丹恒を絶対に傷つけないような、そんな指先にしないと。
「穹」
「うん?」
「風呂から戻ってきたら、俺の爪を、切ってくれるか」
「お、俺が切ってもいいの?」
「ああ。本当は色々な道具を使って丁寧に形を整えるのが一番いいのだろう。だが、俺は爪切りでお前に切って整えてもらいたい」
駄目だろうか?
と、強請るように俺を見てきて。そんな頼み方されたら、断れるわけないじゃん。
「いいよ。丹恒が出てくるまで、起きて待ってるから」
そう告げると、嬉しそうに笑って。
「ありがとう。待っていてくれ」
俺の頬にキスをして、浴室へと入っていく。
俺の恋人が今日も男前すぎて、可愛すぎて頭がおかしくなりそう。
そして、そんな姿を見せられたら下半身も勝手に元気になってしまう。
「今日はもうむりだって、言ったの俺だもんね
……
」
丹恒は少々不満そうであったが、精根尽きるまで搾り取られたら動けなくなってしまうので、我慢してもらった。
「さっさと戻ろう」
着替えて部屋に戻り、お風呂上がりの丹恒のために冷たい飲み物も用意しておく。
「戻った」
「え。早くない?」
ゲームのミッションを確認していたら、丹恒が戻ってきた。時計を見ると、いつもより早い時間だ。
「お前と触れ合える時間が長い方がいいと思ったからだ」
「ちょっと。髪の毛濡れてるって」
「じゃあ、拭いてくれ」
「なら、ここに座って」
脚の間を叩くと、嬉しそうに腰を下ろして。タオルドライをしてから、ドライヤーをかける。
「丹恒が珍しい」
「気持ちばかりが逸っていた。ありがとう」
「俺もいつもと逆で楽しかったよ」
うなじにそっとキスをする。くすぐったそうに小さく声を上げ。
それが可愛いので、噛みついたら振り向きながら叩いてきた。地味に痛い。
キスはいいけど、噛みつくのは駄目だったらしい。
「丹恒、手を出して」
爪切りを手して告げると、素直に手を出して。
まずは右手をとり、パチンパチンとそっと切っていく。切り終えたら、爪切りのやすりで尖ってしまった部分を丸く整える。
「はい、右手終わったよ。次は、左手」
俺が切った右手を眺めながら、左手を出してきて。
こうやって爪を切らせてくれるくらい、俺を信頼してくれているのだと思うと胸の奥が熱くなって。嬉しくて、同時に泣きたくなってきた。
「穹?」
俺の手が止まったことが不思議なのだろう。振り返って見上げてくる。
「大丈夫。嬉しくて、胸が苦しいだけ」
「そうか。それならいい」
と納得してくれた。そこは納得するんだ。
「はい、出来上がり」
数分かけて、左手も綺麗に切り終える。
目を輝かせ、前に着き出した自分の両手を眺めて。
「穹、ありがとう」
「どういたしまして」
「今度、穹が爪を切る時には、俺にやらせてほしい」
「わかった」
と頷いたものの、きっと忘れるんだろうなと思っている。
「じゃあ、寝ようか。明日もあるし」
「ああ」
爪切りの中の爪をごみ箱に捨て、小物入れにしまう。
それから寝転がると、丹恒はいそいそと俺の腕を枕にして。
毎度毎度のことだけど、愛しさが胸の中に広がってくる。
「おやすみ、丹恒」
「おやすみ、穹」
キスを一つして、目をつぶり眠りの世界へ。
***
「仙人爽快茶、ホイップ追加でシロップ多め!」
「
……
」
「うわ。甘そう」
常連になったからと、仙人爽快茶のカスタムを解禁してもらった。
どうせなら甘い方がいいと、そんな注文をしたら丹恒からハム号の冷たい視線。なのも引いた声を出して。
「お待たせしました」
「ありがとう! うん、甘くて美味しい!」
「ウチは、シロップ少なめでホイップ追加でお願い」
「俺は、シロップ抜きで」
二人もなんだかんだで、カスタムを使っている。うんうん。人がやってるのを見ると自分もやりたくなるよねえ。
「丹恒、一口どう?」
「確実に甘いのがわかっているから、遠慮する」
問いかけると、ストローから口を離して手で拒否する。
「シロップ少なめでも美味しい!」
「俺はこれくらいがちょうどいいな」
「毎日飲むと、胸焼けするけどたまにならいいよね」
廻星港を歩きながら、三人で食べ歩き。
「金人港のご飯もいいけど、たまにはこっちでもいいかなって」
「仙舟に宿泊中なら、金人港から宅配もしてもらえるからいいんじゃないか」
「だよねえ」
「二人で勝手に泊りなよ。ウチは列車に帰るから」
「いいよ」
「ああ。好きにしろ」
俺たちが同じようなことを口にすると、なのはわかりやすくため息をつき。
「もう。バカップルには付き合えないよ」
肩をすくめて、仙人爽快茶を飲む。
「穹、今夜はどうだ」
「ごほっ」
人通りのある場所でお誘いを貰うとは思っていなかったので、むせ返る。
「穹? 大丈夫?」
俺がむせたのが耳に届いたようで、なのが振り返る。
「大丈夫そうだ」
「気をつけなよ」
「う、うん。ありがとう」
なんでもないような顔をして、俺の背中を撫でる丹恒を睨むが、本人は知らぬ存ぜぬと明後日の方へと視線を向け。
「丹恒、夜覚えておけよ
……
」
思わず低い声が出ると、どこか期待をした目を逆に向けられて。
いや。
それは狡いでしょ。
赤くなっている頬を見られないよう視線をそらしながら、ずずっと仙人爽快茶を勢いよく啜った。
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