はるれに
2024-10-04 00:02:36
664文字
Public #SS(1〜30)
 


 手をつなぎたい、とキャスターのオレに頼まれる。ベッドに横並びに腰掛けていたオレは、差し出された手のひらを通過してキャスターの顔を見る。
「何企んでる?」
「何も。恋人らしいことしましょ、って言ってんの。抱かれてるときは縋り付いてくるのにオレの身体だけが目当ていたたたた」
 シーツに押し付けるようにして彼の上げた手を掴んだ。勢いに押されて付き合ってはいるが後腐れのない相手が欲しいだけだろうに。オレ相手にこういうスキンシップは必要だろうか。
 握り返してくるキャスターはにっこり笑みを浮かべる。案外単純なんだな。好きな定食が出てきたときみたいな顔をしている。
 オレは、どうだろう。キャスターが恋人という実感がない。ただ繋いでいるだけの手のひらから温もりが共有されて身の置きどころがなくなってくる。
「そろそろ離せ」
「よし、その辺一周してこよう」
「はぁ? 何でだよ離せって、おい、まて、クソッ、力強っ」
 一瞬ルーンの刻印が浮かんだ手が吸いついて離れない。立ち上がったキャスターは手を繋いだまま部屋のドアへオレを引きずっていく。
「散歩だって、行くぞ」
「行かねぇっ」
 浮かれたキャスターの隣にいるなんて冗談じゃない。小さな機械音を立てて開かれるドアの横壁に足をかけて抵抗するが、元々無い運が底をついたようだ。通りがかった槍持ちのオレは、恋人繋ぎをしたオレ達を興味深げに交互に見つめて呟く。
「お前ら仲良かったんだな」
「おう、付き合ってるからな」
 オレの手の中で骨の折れる音がした。