ぶんどき
2024-10-02 17:40:07
944文字
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春を送り、四季を巡る。

四季送り 現行未通過❌
HO春、春蘭の話。

 ──私は兄として、何をしてやれただろうか。

 妹──つくしが世界の中心だった。つくしが、私の世界を動かし春色に彩っていた。
 私が一方的に庇護していたと思っていたが、そんなことはなかったのだ。あの子は無知で無力なお人形なんかではない、何もかも知っていて、何度も、何人も、生まれて、そしてその精神はついに崩壊してしまった。
 あの時、つくしは「よろこび」の感情を探していた。それは私が何よりも彼女に抱いていたもので、願っていたものだ。つくしが喜びに満ちた人生を送ってくれますように。常に、ただそれだけを考えていた。
「私にとって、つくしの存在が何よりの喜びだよ」
 眠くなってきちゃった、と言ってうとうとする彼女を優しく抱きしめる。その華奢で脆い身体は自分の腕の中にすっぽりとおさまってしまう。

 昔歌って聞かせたような子守唄を久々に口ずさむ。彼女のまぶたはゆっくりと閉じられる。その寝息は天使のように愛らしい。子守唄をうたう声が震える。

 嗚呼、この最後の言葉を口にしたら、きっと、もう。

 それでも、妹を寝かしつけるのも兄の役目だろう。

 「──おやすみ、つくし」

 いつも寝る前の時と同じような声色で。彼女の眠りが安らかであることを願った。




 あれから月日は流れて、生まれ直した私と雨炎火くんは皆と再会を果たした。あびは今日も愉快で、居心地もいい。

 あたたかく、あどけない君の笑顔、いつだって昨日のように思い出せる。しかし人間の記憶は永遠のものではない、いつかは忘れてしまう日が来るのだろうか。
 それでも、何度でも、春が来るたびに君がすぐそこにいてくれるから。

 私を兄と呼んでくれた、14人の妹へ。
 厳しい寒さを乗り越え、春は必ずやってくる。
 生命の息吹きが、そこにはある。

 これから何度、君がいない春を送り、四季を巡ることになるだろう。
 ぽっかり空いてしまった君のぬくもりの代わりになるものはないけれど。
 美しい景色、花の香り、鳥のさえずり、君がもっと見るはずだった人生を土産話にするから、もう少し待っていてくれないか。

「今年も、綺麗に咲いたね」

 今日も窓辺の花に水を遣る。風に吹かれて薄桃色の花びらが応えるように揺れた。