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溶けかけ。
2024-09-29 23:40:07
2134文字
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ほぼ日刊
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もう二度と禁忌魔法は使わないと念書を書いた
貴族ヌヴィレット×魔女フリーナのお話です。
もっと書きたい。
初恋は叶わないと人は言うけれど、前世からの初恋は初恋というのだろうか?
少女が一人、立っていた。彼女の手には金の細工が美しい青い宝石の嵌まったブローチが載せられている。少女はゆっくりとブローチに口付けると、チェストの奥深くへとブローチと恋心を仕舞込んだ。「さようなら、ヌヴィレット」と少女の口が別れの言葉を告げる。
――
これで未練はない。胸の大半を占める恋心をブローチへと預けた少女はすっきりとした顔でベッドへと沈み込む。明日はいよいよ、実行の日。
フリーナは内心でガッツポーズをした。
二人を上手く誘導し、二人きりにした後、本音を言いやすくする魔法と恋心を増幅させる魔法をかけた。
ヌヴィレットは兎も角、女生徒の方には効果が強すぎたようで、泣き出してしまった。ぼろぼろと大粒の涙を流して、蹲る彼女の背をヌヴィレットが擦る。その様子はどこからどう見ても想い合う恋人たちの姿で、フリーナは女生徒の魔法を解くとそっとその場を後にした。
パーティー会場に戻り、何事もなかったかのように壁の華に徹するフリーナ。感じる複数の視線は悪意もあれば好意もあった。いつものことだ、と彼女はため息をつく。もし、何かしてこようものなら、魔法による迎撃が待っているだけだ、と思いながらグラスに口をつける。
失恋の痛みには丁度いい、レモンの酸味とシュワシュワとした炭酸が喉を潤す。少し苦みもあるが、飲みやすく、調子にのって二杯目に伸ばした手を白い手袋が制止した。
「らにしゅるんだ
……
」
「それは、君が飲むべき物ではない。飲むならこちらにしたまえ」
水の入ったグラスを手渡される。フリーナはいやいやと幼子のように首を左右に振るとグラスをヌヴィレットに突き返した。
「アルコールを薄めるためのものだ、飲みなさい」
口元にグラスが運ばれる。尚もフリーナは抵抗を示す。
「いーやーだー!」
暴れるフリーナにヌヴィレットはため息をつくと「ならば仕方ない」と言って彼女を抱き上げた。
「離せよ! 自分で歩ける!」
「泥酔している者の言葉を信じる愚か者がどこにいるのかね? 大人しくしていたまえ」
人目につかない道を選び、忍ぶようにして自身の寮の部屋にフリーナを連れてきたヌヴィレットは柔らかなベッドに彼女を降ろした。酔いは夜風のおかげですっかり醒めているようだった。
「な、なんでヌヴィレットが
……
!? というより、ここどこだ!?」
ヌヴィレットは逃げようとするフリーナを捕まえると、ベッドへと腰を降ろす。
「君が距離を取りたがっていたようだったので尊重したのだが
……
どうやら、間違いだったらしい」
フリーナを背後から抱き締めたヌヴィレットは彼女に回した腕に力を込める。まるで、離さない、とでも言うかのような力強さに彼女は早々に白旗を上げた。
「魔法をかけたことを怒っているなら謝る。だから離してくれ
……
!」
懇願にも似た声でフリーナが叫ぶ。お願いだから期待させないで、と。
「愛している
……
君を。前世から
……
」
はたとフリーナの動きが止まる。前世なんて、覚えていないと思っていたのに。
「な、なんで
……
キミ、覚えていなかったはずじゃ
……
」
「薄情者ですまない。君に避けられ続けて、ようやく、記憶が蘇った。だが、記憶があろうとなかろうと、ずっと君に惹かれていた
――
初めて会ったあの日から」
ヌヴィレットがフリーナの瞼にキスを落とす。彼女は力なく落としていた腕を弱々しく彼の腕に絡めた。
「全部忘れているキミのそばに居続けるのは、ずっと苦しかった
……
僕だけが好きで、キミを縛り続けているのではないのかって
……
」
彼は黙って僕の話を聞いていた。
「恋心を増幅させて、本音しか言えなくなるようにすれば
――
キミの口から彼女が好きだと聞ければ諦められるんじゃないかって
……
」
「もういい
……
」
ヌヴィレットがフリーナの言葉を遮る。
「もういいのだ、フリーナ殿。君がこれ以上、傷つく必要はない」
「えっと
……
ヌヴィレット
……
? その、これは一体
……
」
ヌヴィレットが微笑む。フリーナは結局、彼からは逃げ切れず、膝の上で愛の言葉を聞いていた。
「君を不安にさせない、と言ったであろう?」
「そ、それは分かったよ
……
でも、もういいよ
……
キミの気持ちは十分に伝わった
……
それに、こんな夜遅くまで女生徒、それも年下の女を連れ込んだなんて噂が立ってしまったら、キミの沽券に関わる」
「
――
その程度で私の地位が揺らぐとでも?」
ひくっ、と喉が引き攣った音を鳴らした。自信満々に言い放つ彼は王族顔負けの血筋の持ち主だ。流石は次期、公爵といったところか。
「さて、続けよう
……
なに、夜はまだ長いのだから」
「まだ続けるのかい!?」
「
――
一晩で足りるとでも? 君はどれほど私に愛されているのかを自覚するがいい」
翌朝。一晩中、愛の言葉を囁かれ続けたフリーナは寝不足の瞼を擦りながら、覚束ない足取りで学校へと向かう。隣にはどこか満足そうな年上の幼馴染を携えて
――
。
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