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ニシナ
2024-09-29 00:44:47
4343文字
Public
ミリダラズ
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会長とおれ(シオン・マサ)
チョイダリのマサくんとミリダラズのシオンくんが同じ学校の先輩後輩っていう設定が大好きで昔書きました
シオンくん視点で恋愛要素とかはないです
ーーおれには、憧れている人がいる。
それは、この学校で1番人気といっても過言ではない、生徒会長のあの人のことだ。
そこそこの進学校であるウチの高校も成績順のヒエラルキーや陰湿ないじめ、それから馬鹿げたマウントが少なからずあるのに、それをものともせず、そして真っ向からそれに向かっていく強くて優しい生徒会長。
スポーツだけじゃない、顔も成績も良くて、その上性格まで良いなんてどういう奇跡なのだろうかと噂されているけれど、おれは会長はそれだけじゃなくて意外と人間臭いことも知っているし、そこも含めてカッコいい、と思っている。
「四条くんは会長とは違う路線だよね」なんて言われることもあるけど、人間が向かう方向なんて未来しかないのだ。
「ーーアルバイトもあるのに手伝ってくれてありがとね」
会長は口元を緩め、柔らかく微笑みかけてくれた。
「おれ、バイトも会長の手伝いもどっちも好きなので♪」
いつものようにおれも全開のスマイルでそう伝える。
最初はバイトを始めたことで生徒会の手伝いはいらないって言われるんじゃないかって心配もしたけど「四条くんは自分でスケジュールを決められるから任せるよ。もちろん無理のない範囲でね」っていってくれた。
それって、おれを信頼してくれてるってことなんだよなぁ、って思って嬉しくなったし、期待にはちゃんと答えなかったら会長に迷惑をかけるだけじゃない、その信頼まで失ってしまう事なんだって逆に気がピンと張り詰めたりして。
なんていうか、とにかく、人の心を掴むのがすごくうまいひとなんだと思う。
現におれもすっかり会長のトリコだしね。
「会長の彼女は幸せだろうなぁ」
ある時、作業中に他の役員がそんなことを言い出す。
「えっ会長って彼女いるんですか?」
「うちの学校内ではないと思うけど、きっといると思う。いない訳ないよ」
とワイワイ噂話は盛り上がり、ついに会長の耳にまで入る大きさになってしまった。
「彼女かぁ、いるって言えたらいいんだけどね」
少しだけ困ったように笑う会長の顔は、明確に好きな人がいると示唆している。
「えーっ!誰!? 誰ですか!?」
「付き合っているわけでもないのに明かしたら、向こうの迷惑になるから言わないよ」
「えええ〜!」
「いつか
……
そう言えるようになったら隠さず話すから、今は手を動かそうね」
上手に丸め込まれてしまったけれど、「会長が誰かに恋をしている」という情報は間違いなく明日この校内のトップニュースになることだろう。
相手は誰なんだろうとか、自分だったらどうしようとか。
勝手にポジティブな考えをするのは別に悪くないけど、それで会長に迷惑がかからないといいな、とおれは思った。
翌日、放課後の生徒会室に会長はいなかった。
「会長ならファンの生徒から呼び出されたきり戻ってこないよ。告白でもされてるのかな、ただでさえ今日はあちこちから質問攻めだったみたいだし」
副会長の同情に満ちた声を聞いて、おれは会長を探しに行くことにした。
「
――
ちょうどよかった、四条くんこれ体育倉庫に戻してもらってもいい?」
たまたますれ違った体育教師に会長の行方を聞いたことで、おれは雑用を頼まれてしまった。
「垣内くんならまだ帰っていないと思うし、校内にはいるんじゃないかなぁ」という曖昧な返事の代償がこれかと思うとちょっと割に合わない気もするけど、笑顔で引き受ける。
おれがこうしてニコニコしていい子でいることが、会長の評価にもきっと繋がるだろうしね。
思春期を拗らせることなく育ったおれは、自分の価値というやつをそこそこわかっているのでこういう時はいつだって笑顔で引き受けることにしているのだ。
少し多すぎる気もする荷物を担ぎ上げ、「はぁ〜い」といい声をあげた。
長い廊下を歩いて体育館へ向かう。
吹奏楽部がパート別に練習しているらしく、あちこちの教室から色々な楽器の音が聞こえてくる。
(ニカちのピアノもまた聴きたいな。本人ははぐらかしてたけどマメ几帳面な性格が音に出てて好きなんだよね)
夕焼けを見ておねーさんを思い出して、楽器の音でニカちを思い出して、猫を見たらイチくんを思い出して。
自分でも気がつかないうちにおれの生活はすっかりあのビルに染まってるんだなぁ、と気がつく。
そして、みんなの中にも同じようにおれの居場所があったらいいな、と。
特におねーさんの心の中の割合は1番でありたいな〜なんて思ったりもするけど、今あの人はマイナスをプラスにすることで頭の中は100%だろうし、おれの居場所は7分の1、いやオーナーを入れたら8分の1の割合しかないこともわかってる。
(ま、ゼロじゃないだけマシだよね♪)
ゼロじゃない。なんてったっておれたちは「仲間」なんだから。
ゴーくんにそう言ったら「仲間なんかじゃない、全員恋敵(ライバル)
……
お義兄さん以外は」
って言われたりもしたけど、おれはそのポジションでいいと思ってる。
そんなことばっかり言ってるから、「楽観的」って言われちゃうのかもしれないけど。
体育倉庫の前に到着して、鍵がかかっていないか確認して扉に手をかける。
静かに横にスライドさせると、埃っぽい特有の香りがツンと鼻をくすぐった。
「
……
お邪魔しまぁす」
すでに薄暗くなった体育倉庫に入り、右手を伸ばして電気のスイッチを探す。
冷たいコンクリをなぞっていくと、指先に微かな凹凸を感じたので、そのまま力を入れる。
パチと乾燥した音が響くとリズムよくチリチリと小さな蛍光灯が鳴り、部屋の広さの割に心許ない大きさの蛍光灯が点く。
(そういえばビルの倉庫もこんな感じの蛍光灯だったっけ)
おれは一度しか入ったことないけど、おねーさんはオープン前あそこに数日間こもり切りだったらしい。
「いいシオンくん、ああいう部屋では入ってすぐの換気が大事だよ」
真面目な顔で力説するおねーさんを思い出すと、自然と口元が緩む。
今日は道具を片付けるだけだからだいじょーぶだよ、と心の中でおねーさんに言い訳をして振り返ると、体操マットの上で何かがもぞもぞと動く気配に気がついた。
「
……
え」
「ん
……
?」
体育倉庫、マットの上、人の足。
おれが出会ってしまった気配の正体がマトモな何かではないことはすぐにわかる。
いじめ? カップル? この学校に不良みたいなのはいなかったと思うけど
……
頭の中のPCがものすごい速さで色々な可能性を割り出している中、そのすべてを否定するように相手は姿を見せてきた。
「あぁ、四条君か。見つかっちゃったね」
「か
――
垣内、先輩?」
幽霊の正体見たり枯れ尾花。
枯れ尾花どころかこの学校一番の花の登場におれは文字通り言葉を失った。
「あ、そうだ。それ今日戻すって話だったよね。もしかして体育の先生に掴まっちゃった?」
うんうん、と大きく頷く。
「そっか、手間かけさせちゃったね。重くなかった?」
ううん、と大きく横に首を振る。
「それならよかった。来たのが四条君で助かったよ」
会長
――
垣内先輩は寝起きと思わせないほど爽やかに微笑み、マットからひらりと降りた。
「
……
先輩は、どうしてここに?」
「ん? まあ
……
体育倉庫の点検、かな。球技大会前で鍵もかかってないし、道具がなくってないか点検もしたかったしね」
会長が人をはぐらかすときのちょっと悪い笑み。
おれはその言葉と表情で大体察して「なるほどー」と笑顔で相槌を打つ。
「マットの点検も大事な仕事ですよね!」
「そうだね。今日はちょっとだけ
……
気が抜けちゃったけど」
少しだけ照れくさそうにしながら先輩は箱を受け取ろうと手を差し出した。
「朝からずっとチェイスゲームなら仕方ないですよ。あ、おれやっておきます」
「助かるよ。
……
外って誰かいた?」
おれが首を横に降ると、先輩はようやく気が抜けたように深く息を吐く。
先輩がこうしてリラックスできる存在になれていることが嬉しくて、おれは片づけを始めながら外の状況を軽く説明した。
「
……
副会長にも迷惑かけちゃったな。みんなが早く飽きてくれればいいんだけど」
「しばらくは難しいかも
……
あ、そうだ」
おれはブレザーの胸ポケットから生徒手帳を出すと、その中に小さく畳んでいた一枚の紙を取り出した。
「よかったら今度、おれのバイト先に来てください」
「四条君の? ええと、カフェだっけ」
会長は受け取った紙を開きながら小さく名前を読み上げる。
「そうです、病院のコンセプトでやってるカフェなんですけど、そこに”恋患いパルフェ”っていうメニューがあって、好きな人と一緒に食べると片想いが終わるってSNSとかでちょっと話題になってるんですよ」
「
……
そこに、彼女を連れて行くって?」
「それでももちろんOKですけど、会長ひとりでも、お友達とでも♪ 来てくれたらおれが「会長が恋患いパルフェ食べてた」って一緒に写真撮って個人垢に先輩の恋愛成就祈願をアップします!」
生徒会長の垣内先輩が恋わずらいをモチーフにしたパフェを食べたり、誰かの事を想っているなんてこと、みんなは考えてもいないんだろう。
相手が誰だとかどうして付き合わないんだとか、ひとりひとりが納得いくまで会長を追いかけまわして聞くなんてなんのメリットもないんだし、そもそも会長が一人の人として、健全な男子として誰かを好きになるのは当然だし、それならその恋を応援しようって流れに持っていった方が健全だとおれは思う。
好きな人には幸せになって欲しい。
少なくともおれはそう思っているし、そのために出来ることがあるならなんだってやる。
……
なんてことは、本人たちには絶対言わないけど。
チラシをじっと覗き込んだまま、思案顔の会長に後押しするように一言添える。
「ちなみに、そのチラシ持ってきてくれたらおれの社割でサービスしますよ♪」
「そっか
……
うん、いや
……
そういうのも、アリかもね
……
」
返事ともつかない声を出し、うん、と晴れやかな顔をする。
「ありがとう。四条君の計画に乗らせてもらうよ。もっとも、彼女を誘えるかどうかはわからないけど
……
その時は親友と伺うね」
「はい! おれ全力でおもてなししますから、ぜったい来てくださいね♪」
「ありがとう、絶対だね」
何か面白い計画を思いついたのか、会長の顔がふっと柔らかくなる。
会長のこんな顔見ちゃったら、見た人は絶対好きになっちゃうじゃん。
だから、今この顔を見ているのがおれだけで良かったと思う。
それから、会長が”彼女”と来店した時にまたその顔を見られたらいいな、と思うのだった。
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