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溶けかけ。
2024-09-28 21:25:00
1944文字
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ほぼ日刊
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陰謀論
ヌヴィレット×3と終幕後のフリーナのお話。
※若干のキャラ崩壊を含みます。全部アビスってやつの仕業なんだ。
ヌヴィレットが分裂した。何を言っているのか分からないと思うが事実だ。そりゃあ、僕だって、この目で見ていなければ「何言ってるんだ、こいつ」って言っただろうし、本気でそいつの頭を心配したと思う。だが、事実は時に小説や戯曲より奇々怪々で複雑怪奇なものなんだ。
「つまり、三人のヌヴィレットはそれぞれ違う記憶を持っている、こういうことかい?」
目の前のヌヴィレットが頷く。残りの二人のヌヴィレットには席を外してもらった。
「そのようだな。他の私はそれぞれ、フォンテーヌの予言が起こる前だと認識していた。詳しく話を聞いたところ、非常に興味深いことが分かった」
フリーナがヌヴィレットに視線だけで続きを促す。彼は頷くと再び口を開いた。
「まず、君に襲いかかった私だが
……
どうやらフォンテーヌ廷に来る前、もしくは来た直後の私の記憶から抽出されているらしい」
「なるほどね
……
でもそれだと記憶との矛盾が生じていないか? キミは確かに警戒心を露わにしてはいたけど、実際に襲いかかったことはないはずだ」
ヌヴィレットが頭を縦に振る。顎に手を持ってきて足を組むと考えこむように目を伏せた。
「それは私も思っていたことだ。私と君の記憶が改竄でもされていない限りは、私が君にあれほどの憎悪や嫌悪を向けたことはない。それは、君も同意見なのだろう?」
フリーナが「ああ」と同意を示す。彼女も腕を組むと頭を少しだけ傾け、考え始めた。
「確かに、フォンテーヌ廷に来たばかりのキミは目つきが険しかった。だが、それは仕方がないことだろう?
フォカロルス
もうひとりの僕
の言葉を借りるなら、特別なキミであり、特殊なキミだったんだから。だけど、キミはその特異な部分を認めた上で僕たち人の営みを見守ってくれていた。僕らを害そう、なんて考えたことなかっただろう? でなければ、フォンテーヌは早々に水底に沈んでいただろうさ
……
なんだい?その顔は?」
ヌヴィレットは僅かに目を見開き、ぽかんとした顔でフリーナを見つめていた。それからゆっくりと口元に手を当てると目を細め、「ふふっ」と笑い声を上げた。
「な、なんだよ? 何かおかしいことを言ったかい?」
頬を染めて、恥ずかしそうに怒るフリーナにヌヴィレットは降参というように手を上げた。顔こそ、いつもの表情を保っているものの、その肩は小刻みに震えていた。
「いや
――
随分と信頼してくれていたのだと、嬉しく思ってね」
「フリーナ!」
焦りと緊張で膨張した風船が弾けるかのような鋭い声が飛ぶ。ひゅん、と何かが頬を掠める。次いで、生暖かいものが伝う感覚がした。どくどくと体中の血が勢いよく心臓へと運ばれているのが分かる。先ほど自身がいたはずの石畳には主を失った青白い髪が数本落ちていた。
「
……
なんのつもりだ?」
「それはこちらの台詞だ
――
彼女に危害を加えるのならそれ相応の罪に問われると忠告したはずだが?」
僕がよく知るヌヴィレットは今すぐにでもこちらに襲いかかって来そうなほどの殺気を放っているヌヴィレットに杖を突きつけながらそう言った。
「フリーナ殿。駆けつけるのが遅くなってすまない」
耳元で優しい声が聞こえた。心配そうな、後悔を滲ませた声は紛れもなく彼のもので。
「ううん
……
駆けつけてくれてありがとう。おかげで助かったよ」
もうひとりのヌヴィレットが「そうか
……
」と安堵の表情を浮かべながら僕の頬に優しく触れる。温かみを帯びた青い光が彼の手から発され、傷が瞬く間に治っていく。
突如、土埃が立ち、視界が黄土色に埋め尽くされる。傍にいたヌヴィレットが結界を張ってくれなければ、爆風に吹き飛ばされていたことだろう。
「
……
いるなら出てきたらどうだ?」
土埃の中からヌヴィレットの声がする。青い光が見え、土埃が消え去る。立っているヌヴィレットと地面に横たわっているヌヴィレット。ぞわりと鳥肌が立って自身を掻き抱いた僕の肩を傍にいた彼が支えた。「安心したまえ」そう、言った。
「くっ
……
何故、分かった?」
建物の陰からアビスの魔術師が現れる。ヌヴィレットが水の弾丸を飛ばす。
「おかしいと思っていたのだ。記憶から抽出された存在でありながら記憶と相違する個体、水神に対して憎悪し、殺意を抱く性格
……
だが、アビスの汚染を受けていたのなら納得だ
――
何が目的だ?」
黒いブーツがアビスの魔術師を踏みつける。アビスの魔術師が呻きながら首を左右に振った。
「ならば、仕方ない。少々、手荒な手段を用いるしかあるまい
……
あぁ、安心したまえ。魔物に対する拷問を禁止する法律はフォンテーヌには存在しないのでな」
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