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浮き流し
2024-09-28 12:21:15
6851文字
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イチ松
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大事を収めてなくしてみれば
・pixivと同じものです
「この後 過去1忍耐した」
松がなくしものをするお話
2年、付き合って3ヶ月ぐらい 頑張ってキスまでのふたり
お店はカ●ディ、ものはオリジナルサマー缶2024を参考にしていますが、店頭にあるかは存じません…
2024,10,04〜06 右松ウェブオン2 記念に
風呂の後、オレは松本のベッドでくつろいでいた。
松本と同部屋の奴は、一度人の部屋へ行くと追い返されるまで戻って来ない。それをいい事に、オレは恋人とただ一緒にいるだけの空間を満喫していた。
「あれ、ここにあったはずなんだけど
……
」
松本の声に振り向くと本人は勉強机の方を見ているため、どうやら独り言のようだ。
「ん〜
……
?」
引き出しを開けては閉める音と松本の悩ましい声が、何度も生まれては虚空に消えていく。探し物は嵩張るものなのか、プリント類に目もくれず机の周囲を覗き込んでいる。
「どうしたの」
「イチノに貰った缶が見つからなくて
……
」
最近そんな渡したものでもあっただろうか。
「缶?どんな?」
「ナタデココのドリンク缶」
ナタデココとヨーグルト味のドリンクを頭に思い浮かべる。寮や学校の自販機で売っている飲み物だ。言われてみれば、松本がたまに机に置いていた気がする。
「あ〜たまに持ってきてるやつ。溢した?」
「飲み終わってはいるんだが
……
」
「ならよかった。でも、虫が湧く前に見つけ出さないと」
「いや、洗ってもいるんだ。その、保管してて
……
」
洗浄してあるなら急がなくてもいいか。そう思ったところに、会話のためにこちらを向き手を止めた松本が不思議な事を口にする。
「空の缶を?なんで」
松本は人に貰ったものは大事にするし、ナタデココのドリンク自体も好んで飲んでいる。それは知っているけど、空の缶を取っておくほどとは思わなかった。
「また買えばいいだろ」
「あれじゃなきゃダメだ」
オレは口をへの字に曲げ強く反論する松本の様子に疑問を抱く。そのドリンクは別に売り切れになる事も当たりが付いてる事もないというのに。
「なんで」
松本は体をオレの方へ向けるも視線は合わず、拳を握り眉間に皺を刻む。当然予想できた質問で口ごもる様子に、嫌な想像が頭をよぎる。
(
……
なに。女子にでも貰った?)
オレの想像が疑惑へ変わるより先に、松本が軽く深呼吸をして硬い声で告げる。
「あれは
……
、お前から初めて貰ったプレゼントなんだ
――
」
松本が去年の10月の事、お前は覚えてないとは思うけどと話し出す。
あのドリンクは、夏合宿を経て部活の一員から学校でも話す仲になった頃、お前が奢ってくれたものなんだ。
『松本って意外とそれ好きだよな』
『ああ。そんな甘ったるくないし歯応えあるし、割と気に入ってる』
『へー、意外。お前絶対お茶派で、飲んでポカリぐらいだと思ってた。でもそれ、オレも好きだね』
「
――
お前にとってはなんて事ない出来事だったかもしれない。だけど、オレには大事なものなんだ」
そう告げられてびっくりする。そんなに大事にしていたのか。
松本はオレと付き合う前から、松本がナタデココのジュースを机に置いてる事はあった。ただ見かける頻度は高くなかったから、談話室で飲み切らず部屋に持ってきたのだと思っていた。
だけどそうじゃなかった。多分、眺めてたのを隠す前にオレが部屋に入ったんだ。
「ごめん。オレ、気軽に捨てればって言った」
謝るオレに、松本は仕方ねえよと慰めの言葉をかける。
「オレだって普通ならそう思う。それに缶も好きも、言う気はなかったんだ。お前は同じ気持ちとは言ってくれたけど、こんなの、気持ち悪いだろ」
松本は自分を貶す内容に反し軽い口調で続ける。オレに拒絶される前に予防線を張りたいんだろう。口角は上がっているものの、笑みを作るには些か表情がぎこちない。
「お前はそんなつもり100%ないと、ちゃんと分かってた。お前がくれたって事実と言ってた言葉を良いように捉えて、勝手に喜んでただけだ」
「
……
そうだったんだ」
オレが松本と付き合う事になったのは松本の告白がきっかけだ。口を衝いた恋心を冗談にできなかった、今と同じような諦念で投げやりな告白からだった。
「すまん、今のは忘れてくれ。捨てるのに善処はするが、無理でも見えるところには置かないから」
話は終わりと言うように、松本はまた勉強机に向かい探し物へと戻る。
受け入れられるわけがないと、最初から諦めたその思考に怒りが沸く。オレはベッドに転がっていた姿勢を正して松本を見据える。
(なあ、返事した時の事覚えてないのか)
やたら合う視線とかやけに緩んだ表情を見せるとか、オレが気付いたのはなんでだって言った?お前が恋に気付くよりも前から、オレはお前に恋愛感情を抱いてるんだ。
「なら今だって同じだろ」
それが松本の言う最初の時かは確証がなくても、かこつけた言葉には覚えがある。
「ジュースとかアイスの味が好きって言う時、こっそり松本への好きを混ぜてた。いかに友達っぽく言うかドキドキしてた」
一般常識と倫理観の塊が男を好きになるとは思えなかった。オレは忍耐には自信があるけど、真剣なトーンでマジレスや冗談も言うため、真意の読めなさにも定評がある。少しなら、と欲を出した。
「だから好きの意味は、今も変わらない」
「
……
そう、なのか
……
」
松本は机の方を向いたまま、俯いていた顔を少し上げて噛み締めるように呟く。
「また同じもの買ってあげる。だから無くしたものに囚われるなよ」
「いや
……
、それはもう少し探してみる。あの缶は思い入れがあるものに違いないから」
松本はオレの提案を冷静に却下し、再び机の隙間を探し出す。松本のその反応に、もやもやとした気持ちが広がる。
(なに。去年オレが何気なくあげたものなのに、今オレが贈るものより良いのかよ)
今のオレを見てほしくなり、松本の説得にかかる。
「なら今度一緒に買いに行かない?ドリンクの缶じゃなくて、もっと特別っぽいもの。なくしたのが出てきても、お前の宝物でオレを連想する出来事が増えるわけだろ」
耳を傾けるだけだった松本がゆっくりとこちらを振り向く。
「デートしよう」
もう一声かけると松本の瞳が揺れる。その瞳を見つめて言葉を重ねる。
「お前の宝物、改めてオレからプレゼントさせて」
オレの言葉に、松本は再び下を向き声を震わせてしまう。
「それは
……
贅沢すぎる。
……
イチノでいっぱいになってしまう」
「いいだろ。ずっとオレでいっぱいにさせて」
欲しいものを考えてとお願いしたものの、松本からの要望はなかなか返ってこなかった。
寮住みで部活漬けの高校生には、ケーキ以外の特別そうなものが思い浮かばない。参考としてクラスメイトに特別欲しいものを尋ねてみたものの、小遣いでは手が届きそうにはなかった。
また、普段行くところなんて学校周辺の公園と広場で、出かけるとしたら小さなイオンかファストフード店ぐらいだ。近くに商店街はあるものの、高額なイメージがあり冷やかしに入る勇気はない。
だから、山王を離れて秋田の街へ行く。なに買おうなにが欲しいかの前に、なにがあるか分からない。大きなショッピングモールに行き、中の店を回ってみようと思う。
デート当日、朝ご飯を食べて早々に寮を出る。
ショッピングモールでは目的を忘れて靴や松本の服を見る。便利グッズの特化した機能に感心するものの、寮で使う機会はないと笑い合う。同年代と思しき女子の多さに驚き、女子向けの可愛らしい店の前をドキドキしながら通り過ぎる。
途中でレストランのメニューを見たものの、量と値段を吟味した結果フードコートで大盛りセットメニューを注文する。
ショッピングモールを何周かして、最終的にお洒落な雑貨屋でなく食品の店に入った。
その店は見知った日本語の商品がある事に驚く程、見た事のない外国の食べ物が所狭しと並べられていた。色々なお菓子や飲み物、説明があってもよく分からないもの、店を回るだけでも海外旅行した気分になれそうだ。
その中で、松本は旅行カバン型のクッキー缶を選んだ。
「それでいいの?他のもあったのに」
そんなおもちゃみたいな、という感想は飲み込む。流石に本物のカバンは所持金的に痛いものがあるから、そこそこで折り合いを付けたい。だけど、最初から遠慮はしてほしくない。
「ああ。なくしたのは缶だから、新しく貰うのも缶製品がいいかと思って。それにこれは店の名前があるからどこで買ったか分かるし、表面の加工と濃い青と白デザインがかっこいい」
「まあそうだけど、外国のお菓子じゃなくていい?確かこれとかクッキー多かったけど」
オレは内容量30個以上の丸い大きな缶を指差す。松本が選んだものは10個入りで、四角い缶自体も松本の手のひらに収まるサイズだ。
納得した上での決定なのか、別の選択肢を出してみても松本は揺らがない。
「これがいい。多分それだと大事にしすぎて湿気らせてしまうと思う。でもこれは個包装みたいだし、缶自体は大事な小物入れにしようと思う」
食べだすと早いけど、手を付けるまでが長いそれは容易に想像できてしまう。
「そう。松本がいいならそれにしようか」
でも美味しい内に食べてよと念を押しながらレジへと向かう。
買い物デートへ行って1週間。もったいなくて食べられないと言う松本の口に、小さなクッキーを押し込んだその翌日。松本は尻を上げ這いつくばった姿勢で、ベッドの下を覗き込んでいた。
掃除中に鳴った音の原因を発見し、驚きの声を上げる。
「あ!」
慌てて荷物を移動させ周囲に空間を作ると、再び掃除機を潜らせる。ガチャガチャと試行錯誤すると、引っ掛けたものが転がり出てくる。
「なんでこんなところに
……
」
現れたのはナタデココの缶だ。松本が先週なくなったとショックを受けていた缶と、驚きの再会を果たした。
「分からないけど、見つかってよかった」
「しかし落下音で気付かなかったのか
……
?」
普段はどこに置いていたか聞くと、机の1番下の引き出しの中に仕舞っていたと言う。また、咄嗟の時は重ねた教科書と壁との隙間に隠していたそうだ。
今オレが座ってる松本の勉強机から反対の角にあるベッドを見る。床はフローリングとはいえ、単に落ちて転がっていくにしては少し距離が長いような気がする。
きれいに整頓するタイプでない相部屋の奴が移動させたり気付かず蹴飛ばした?
「本条は?」
「知らないって言ってたな」
「そう
……
」
自分のではないものに気が付けば松本の陣地に戻してくれるらしい。
「あっ」
記憶を手繰り寄せていると、オレがいる時机に大きな衝撃を与えた出来事が思い浮かぶ。
「テスト期間中、松本が暴れてあちこちぶつけてた時とか?」
「暴れ
……
そんな事したか?」
松本が心外そうに眉をひそめる。表現は盛ったけど、オレは確かに覚えている。
「した。テスト期間初日、勉強を頑張ったご褒美としてキスをしようって決めただろ
――
」
ご褒美の内容はオレが提案した。松本は照れてなかなかOKを出してくれなかったものの、普段できないしそれ以上はなにもしないと粘って約束を取り付けた。
2人とも普段から予習復習をしているためそこまで時間は取られず、部活がないから自由な時間は沢山ある。勉強中はまだしも終わって緊張感が解れると、この状況が特別なものに変わる。この部屋のもう片方の主は談話室で絶賛勉強見張られ中だ、そうそう戻っては来ない。
横並びの机は息遣いも分かる距離で、2人きりの空間はお墨付きを得たような錯覚に陥る。隅に追いやったピンクの想像がまた頭の中心に戻ってくる。
オレは椅子を転がして松本に近付く。じっと目を見つめると、松本はあからさまに動揺して視線を彷徨わせる。オレが触れ合いそうな距離で口を尖らせると、ギュッと目と口に力を込め待ちの体制に入る。その姿が、堪らなく愛おしい。
鼻が当たり唇を重ねると力が入って少し固く、ひんやりとサついた感触が伝わってくる。角度を変えて唇を喰むとくすぐったそうな声が上がる。
顔の角度を変え緩んだ唇をノックをすると、そっと扉が開かれる。ゆっくり舌を差し込むと、松本の温かく薄い舌が出迎えてくれる。
口から出す舌を半分程だけに留め、ゆっくりと擦り合わせる。柔らかな粘膜が触れたところから、ぞくぞくと快感が走りだす。
求めていた刺激に、もっと続きが欲しくなる。ざらざらした方で唇をなぞり、舌を絡めては包むように吸い付く。松本の頭に回していた左手で耳を辿り首筋をなぞりうなじを撫でる。するとそのたび松本の体がビクビクと快感に震え、上がった喘ぎとともに唾液を飲み込む。
胸や尻を撫で回さないよう、堪えて両手を松本の背中に回す。深いキスはまだ早いと言われ、浅く舌を入れるだけに留めている。それでも、快感と興奮で体温が上がり、呼吸がし辛くなるぐらいには気持ち良い。
断続的に水音や熱の籠った息が喘ぎとなって響く。そのうち、懸命に舌を絡める松本に興奮が抑えられなくなる。
舌を大きく侵入させると、驚いた松本がくぐもった抗議の声を上げ、腕をバタバタと動かし抵抗を試みる。元凶のオレへぶつけるのはともかく机で痛そうな音を立てるものだから、頭の冷静な部分が心配を思い浮かべる
「ごめんもう少し」
松本の頭を押さえるように耳を塞ぎ、敢えて音が響くように口を開けて舌を大きく絡ませる。頭の中で響く粘着質な水音に、許容量を超えた松本は全力でオレを突き飛ばした。その反動で2人とも机にぶつかり、よろよろとしがみつく事になった。
「
――
可能性としては、多分その時」
「そっ
……
、お前のせいじゃねぇか
……
!」
羞恥と怒りで松本の握っている缶からベコッと音が鳴る。
オレが来ると分かっている時に内緒の缶は出さないとは思うも、松本はそこまで頭が回らないようだ。敢えてそこには触れず、オレはその時の情景を思い浮かべる。
「あの時松本が熱心に求めてくれたの、すごい嬉しかったんだよね」
よろめいたオレをよそに、松本が絞り出した言葉は『そんなしっかり洗ってない』だ。その強引さから次のステップに進むのではないかと早合点したと言う。
「えっちなキスでストップかけるくせに、もうちんこ触る事考えてるとは思わなかった」
その事をしっかりと思い出した松本は勢いよくベッドに突っ伏す。
「忘れてくれ!!」
頭を左右に動かし穴を掘るような仕草で羞恥を紛らわそうとする。ついでに坊主頭だから、頭の先から首まで全体が真っ赤になっているのがよく見える。こうやって体全体でリアクションをとってくれるのだから、本当に可愛くて仕方がない。
緩む頬をそのままにして、松本の宝物へ視線を移す。
「でもそのおかげでオレを思い出す要素が増えたし、あの店もオレとの買い物デートの記憶しか存在しないわけだろ」
「
……
恥ずかしい記憶も付いてくる
……
」
シーツに吸い込まれてくぐもってはいるものの、嬉しさ以上に羞恥で不貞腐れた声色が返ってくる。
「じゃあいらない?」
浮かぶ笑みを抑えて揶揄い交じりに聞いてみると、ぶっきらぼうながら力強く宣言される。
「
……
もっと大事にする」
羞恥よりオレとの思い出を優先する事に、愛しさが込み上げる。抱きしめたいキスがしたいとは思うものの、ベッドの前で赤くなる松本にそれをするとマズい。ただでさえ試されている忍耐が危うくなってしまう。
そのため、松本本人でなく持っているナタデココの缶に目を移す。握った部分がヘコんでいるが、それよりも今後の行方が気になる。
「その缶、どこに置くか決めた?」
「
……
クッキー缶と一緒で机に仕舞おうと思ってる」
「そう、残念」
目に見えるところにあれば、松本はオレのものと宣言してるみたいなのに。一応今後松本に気を付けてほしい事だけを伝える。
「もし飾るならぶつかったぐらいじゃ落ちないところにしてよ。今度キスしたい、エッチしたいって時に中断されたくないから」
「ッ
……
イチノッ!!」
大声を上げ烈火の如く怒る松本に謝罪の言葉を口にする。
「ごめんて。もう言わない」
舌先だけじゃなく大きく舌を絡めるキスは最近慣れてくれたけど、押し倒したり胸や下半身を撫でたりするのはまだ許可が出ない。この調子なら次へ進むにはまだ当分時間がかかりそうだ。
(キスもしばらくお預けかな
……
)
大きく溜息を吐き頭をかいて天を仰ぐ。揶揄いすぎたことを反省していると、小さな音が耳に入ってくる。
「
……
トとか
……
」
発信源を見ると真っ赤になったままこちらを見つめる松本がいる。松本はプルプルと拳を震わせながら、目が潤ませて何かを訴えていたようだ。
「?」
声が小さすぎて言葉が聞き取れなかったため、松本の顔を見つめてもう1回を促す。意図が伝わったのか松本は口を歪ませると、声を少しだけ大きくして言い直してくれる。
「下に、
……
耐震マット、
……
とか」
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