えぬを
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さばくのはな

rsmv_20220909公開
マヴはあの飛行機墓場の砂漠に咲く花みたいな人だな、と。
女性と楽しげに話すルスに嫉妬するマヴの話し。
あと、「こっちむけばか」を言わせたくて…
甘いルスマヴェ小話しです。
※オリジナルの登場人物が出てきます。

きれいな子だな、とマーヴェリックは思った。髪をまとめ上げたうなじがすっきりと美しく、体型はすらりとしていて背も高い。
後ろ姿から、最初はフェニックスかと思ったけれど、違った。フェニックスは今まさに、マーヴェリックの隣にいる。
「マーヴェリック、みすぎですよ」
……ブラッドリーとお似合いだなぁ、と思って……
……そういう台詞、セクシャルハラスメントって気づいてます?」
「え!こういうのもダメなのか!?素直な感想なのに!」
「『こういうのもダメなのか』って聞いて来るとこもダメですね。自分で自覚して」
「おじさんは針と糸で口を縫い付けるしかないじゃないか……
基地内の食堂で、隣り合って楽しげに話すルースターとひとりの女性を眺めながら、マーヴェリックはぼそりと呟いた。自分自身、随分と恨めしげな声が出ていたのではないかと焦っていたら、それ以前に視線の強さをフェニックスに指摘された。
「ルースターの想いを受け入れているにも関わらず、そういうことを言うのなら尚悪い。友人のために私は怒れる炎を吹き上げます」
「怖いなぁ……でも、本当に思ったんだ。あぁして見ていると、ブラッドリーはとてもハンサムだし、性格もすこぶるいい。エリートだし、さぞやモテるのに、とね」
「えぇと、私が聞かされているのは溺愛する後見人としての賛辞?それとも惚気なんですかね」
「頭の沸いた睦言を堂々と口に出せるほどに自信があれば、むしろその方が良いのだろうけれど」
親子ほども歳の離れた遺恨あるマーヴェリックと恋仲に至るまで努力したルースターが、むしろ哀れに感じるほどに、絵になる二人だった。談笑し、随分と打ち解けた様子と、彼女に向かってとろける様な瞳で話すルースターを見ていたのなら、そう思っても仕方ないだろう。
気の迷いだったといつ言われてもおかしくない、と、距離を保って最後の砦である心のうちを明け渡したつもりはなかったのに、既にそこは閉じきれないほどのルースターの愛情が込められている。手遅れだ。
「今の心境って嫉妬ですか?」
「未来あるエリートの若者が、父を死に追いやった老兵に熱を上げるだなんて、あまりにも嘆かわしい」
「本音を聞きたいんですけど」
「〝ブラッドリー、こっちむけばか〟」
ぶっは、とフェニックスは大きく噴き出した。
「もう、なんでそれ言ってあげないんです!」
……どう考えたってブラッドリーには輝かしい未来があったはずなのに」
「あなたと一緒だと未来がないって言うんですか?なにもしなくたって明日は来ますよ」
……不死鳥の君が言うとすごく説得力があるなぁ」
「マーヴェリック、あのね、私、実はルースターの隣に座る彼女と仲良いんですよ」
……そうなのか?」
「えぇ。彼女のこと教えてあげます」
「いや、そんな、いいよ」
マーヴェリックが慌てて首を振る。年甲斐もなく嫉妬していると自身を貶めている風情のマーヴェリックを気にすることなくフェニックスはセルフォンを取り出しながら続けた。
「彼女、つい先日結婚したばかりでして。私も招待されたんですよ。はい、その時の写真」
……は?」
「彼女のパートナー、キュートでしょ?」
見せられた画面に映るのは、揃いのウェディングスーツを着た女性が二人。幸せそうに寄り添っている写真だった。
「っ、」
「彼女のパートナー、随分と年上らしくて。ルースターと話しが合うみたい」
「フェニ、」
「彼らの間に挟まって互いの恋人自慢される私に特別手当とか出ないですかね」
勘違いと思い込みを、マーヴェリックは恥じた。恥じて、難しい、と痛感した。愛は盲目と言うけれど、それが嫉妬も恋情もなにもかもを包括したそれだとは思っていない。
「アップデートしていきましょう」
ただ単純に、フェニックスの言うとおりなのだ。過去も、未来も現在進行形で変現していく。
ルースターと、その隣に座る彼女がマーヴェリックとフェニックスに気づき、手を上げる。促しに席に近づいた。
輝かんばかりの彼女の美しさは、幸せの真っ只中にいるからこそなのだろうか。マーヴェリックは開口一番彼女に向かって祝辞を述べた。
「えぇと、結婚おめでとう。キュートなパートナーと最近結婚したばかりだとフェニックスから聞いて……あれ?これもセクシャルハラスメントになっちゃうのか?」
惑うマーヴェリックに、フェニックスは再度噴き出し、ルースターは右眉を跳ね上げ、そして彼女はしばし目を見開いた後、破顔した。
「他意がないのであれば、問題ないのでは?事実、私のパートナーはキュートだしセクシーなんです」
頭を悩ませるマーヴェリックに、敢えて自ら賛辞を付け加えた彼女が笑う。
「キュートでセクシーなところはあなたと一緒ですね、ミッチェル大佐。初めまして」
握手を求める彼女に安堵し、マーヴェリックは右手を差し出し、そして放たれた言葉を反芻し、なんとも言えない表情をするしかなかった。しばし談笑する中、フェニックスがちらりとルースターとマーヴェリックに意味ありげな視線を送った。
「聞いてよ。ミッチェル大佐ね、あなたとルースターが話してる様子を見て、嫉妬してた」
「ふぇ、フェニックス!!」
「え、ちょ、詳しく」
フェニックスの口を慌てて抑えようとするマーヴェリックをルースターが羽交締めにした。
「あら。そんな必要ないのに。話してた内容なら、私が彼女にしたプロポーズのシチュエーションについて、参考にしたいから詳しく教えてほしいってルースターが」
「ちょ、おぉい!」
マーヴェリックを羽交締めにしたままルースターが焦ったような声を上げる。ぴたりと身動きの止まるマーヴェリックと、大袈裟な身振り手振りで今言うなよちゃんと順を追って俺の口からと続くルースターの叫び声が食堂に響く。
エースパイロットとレジェンドの仲睦まじい、まるでティーンのようなやりとりを傍観しながら、彼女がフェニックスの肩を叩いた。
「目立つ友人と上官を持つと大変そう」
……やっぱ特別手当もらわないと割に合わなくない?」
そうして二人は顔を見合わせ笑った。
砂漠にだって花が咲く──それは奇跡でもなんでもない。
だから、比翼が揃いのウェディングスーツを纏う日も近いのだ。