三毛田
2024-09-26 21:41:39
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62 02. 暖かく包み込む手

62日目 お前の手が好きだ

 過去の記憶が、責める声が、寒い牢獄が、命を狙う刃が。
 俺を蝕む。
 痛くて苦しくて、胸をかきむしって。冷や汗をかきながら飛び起きる。
「たんこぉ?」
「起こしたか。寝てていいぞ」
「一緒に寝るぅ」
 穹は目をこすって俺を見上げ、それから気にせず寝て欲しく思い頭を撫でた手をぎゅっと握ってきて。
 ああ。暖かい。
 痛みと恐怖と緊張でこわばっていた身体の力がゆっくりと抜けていく感覚。
 彼の要望通り再び寝転がれば、嬉しそうにふにゃふにゃ笑って。
「おやすみ、たんこう」
「ああ。おやすみ、穹」
 相当眠かったようで、すぐに寝息が聞こえてくる。
 穹は不思議な奴だ。
 するりとこちらの懐に入り込んでくるのに、秘密を無理やり暴いたり、話したくないと口ごもれば不必要に干渉してこなくて。
 だから、隣にいるのが、ひどく心地よい。
 こんな無口で秘密だらけで人見知りもある俺を、彼は好きだという。
 底抜けな明るさとはまた違うが、俺が立ち止まれば手を伸ばしてくれて、行く先を照らしてくれる彼を好きにならないほうがおかしい。
 ただ、それは植え付けられた好意ではないかと疑って、初めは拒絶した。
 けれど、諦めが悪い男はなかなか引かなく。気づけば絆され心だけでなく、体の奥まで暴かれ。
「お前がいてくれたから、俺はあそこに立つことができた」
 鱗淵境で龍尊の力を使うことを、厭わなかった。
 過去と向き合うことは、完全には出来ていない。それでも、彼と一緒であれば、いつかは出来るだろう。
「うう~ん……よく寝た」
 大きく伸びをして、穹が起き上がる。
「おはよう」
「丹恒の胸もおはよ~」
「こら」
 挨拶をしながら、胸に顔を埋めて頬ずりして。頭を撫でると、嬉しそうに口元を緩ませ。
「チューしていい?」
「今は駄目だ。食事を終えたら好きにしていい」
「言質はとったからね」
「ああ」
 数回片手で俺の胸を揉み、首に頬ずりしてから立ち上がる。
 どうして胸を揉むんだ、穹は。
 胸をさすってみるが、彼の趣味がよくわからない。
 そして、胸に触れて首を傾げている俺をニコニコと見つめてきて。
「ほら、ご飯食べよう」
「そうだな」
 俺の手を取り、部屋を出る。
 やはり、穹に手を握ってもらうのは嬉しい。
 胸の奥までポカポカしていって。
「丹恒、嬉しそう」
「ああ」
「手を握られるの好き?」
「お前に握られるのも、手を繋ぐのも好きだ」
「そっか。嬉しい」
「嬉しいのか?」
「うん。俺も丹恒と手を繋ぐの好きだから嬉しいんだ」
 と飛び切りの笑顔を浮かべる。