鬼躯(おにく)
2024-09-26 18:31:48
1415文字
Public Dytica妖怪疑似家族パロ
 

胸を貸す

F崎様( https://x.com/f_saki_voyage )のDytica妖怪擬似家族パロの設定をお借りした三次創作の小話です 
Special Thanks:にじクイ

「一緒に遊んでくれる友達が欲しかったんじゃないですか?」

罰としての大掃除を終えて床に大の字で伸びている海座頭が、不意にそんなことを口にした。

「友達?」

見下ろす白狼の視線に、恨めしげな眼差しを返す。

「我々妖怪は生命の理からは外れた存在です。他の生き物とは一線を画すがゆえ、野生動物から本能的に忌避される。そういう相容れないものとして納得できる年齢ではないあの子たちは、果たしてどう思いますかね。疎まれる理由も分からずに避けられ、寂しく思っていたのでは?だから自分たちの手で命を作り出そう。そう考えてもおかしくありません。それなのに理由も訊かず取り上げて捨てたりして、さすがに短絡的で無神経が過ぎるのでは?」
……せっかくだからこの際、蔵掃除もしてもらうか」
「えー心優しく思慮深い小柳様におかれましては」










先刻の言い分も筋が通らない訳ではない。
というか、その感覚は身に覚えがあった。
自分の場合は狼という捕食者の立場上、他の動物とは目が合っただけで一目散に逃げられるのが常だった。
歳月を経てそういうものだと腹落ちするまでの期間、ずっと子供心に感じていたあの寂しさ。
それを今、あの子たちも感じているのだとしたら。
ましてや親兄弟のいないあの二人が誰にも言えずに抱えているとしたら。

……

心の隙間を埋めようとする稚拙な行為に対し、何という残酷な仕打ちを己はしたのだろう。

……はぁ」














昼寝から目覚めた小鬼は、目の前の光景を瞠視する。
そこには白くて密度の高い尨毛むくげを貯えた大型の獣が寝そべっていた。

「おおかみ」

べろりと鼻先を舐めて寝覚めの呟きに応える。

「どしたん、いきなり」
……

問いに答えず無言で身を寄せる白狼から、訝しげに距離を取る。

「こわなに?」
「あ──────……今朝のことは、悪かった」

気まずそうに口を開く。

「おまえらの話も訊かずに、せっかく作ったその、何?友達のこと、捨てたりして」
「?」
「これで詫びになるかわからんが、気の済むまで触って良い」
……え、待って、何の話?」
「んん?」

曰く

一、「なぁタコ、ねずみってどうやって増えるん?」
二、「ほこりに月の光が宿ることで動き出すんですよぉ」
三、「ホント?やってみようぜ!」

事の顛末を聞いた白狼は黙考の後、長ーい息を吐き出した。

一から十まで全部アイツの口から出任せが原因じゃねぇか!

「遊び相手が欲しかったんじゃあ……
「え、別に」
「わかったわかった、一旦噛み付いてくるわ」

仮に海座頭なりに鼠算ねずみざんの説明を回避した結果の悲劇だとしても、貧乏くじを掴まされて煮えくり返るはらわたが治まらないので八つ当たりを決行せんと立ち上がった白狼の前肢を掴む手があった。

「別にぼく怒ってへんけどぉ、狼が触ってええって言うなら、触ったげてもいいけどぉ」

一体誰に似たやら、素直じゃない口振りの小鬼が引き留める。

……

此方が全面的に非を認めた手前、どのような扱いも甘んじて受けるべきだろう。
誅罰の執行を一旦思い止まり、大人しく小鬼の正面に身を伏せる。

「へへへ」

嬉しそうに抱き付いて真っ白な毛並みに顔を埋める。
鼻息がくすぐったいなと感じながら、しばしの間相手の好きなようにさせることにした。