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紬実
2022-10-23 21:53:16
2489文字
Public
ルスボブ
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秋めく唇
ルス→(←?)ボブです。二人とも無意識に心を許してるところがありそうだなと思います。ルスボブはほのぼのカップルですね!
ドンと両手に溢れるほどの資料を手渡される。
「みんなに渡しておいてくれないか」
マーヴェリックは満足そうに頷きながらそう言った。まるでこれで一仕事終わりましたと言いたげな表情だ。
いやアンタが配ればいいだろ、と言ってやりたいのを堪えて渋々メンバーを探す。まったく、俺はマーヴのあの顔に弱い。それに昔から頼みごとを断れない性格だった。
ラッキーなことにほとんどの仲間たちは休憩室にいた。順番に渡していき手に持った資料も一部となった。あといないのは
……
、
「ボブは?」
グルリと室内を見渡してみたが、あの特徴的な眼鏡の子はいなかった。
「ボブなら自分の部屋にいるんじゃないか。さっき出てくのを見た」
コヨーテに教えられ資料を手にボブの部屋を訪れる。今思えばそれくらいあとで渡したってよかったと思う。でもマーヴェリックからの頼まれごとだったし、俺も一仕事終えたという安心感がほしかった。
「ボブ、いるか?」
軽く扉をノックしてみたが反応はない。いないならまあ、それはそれでいいかと思ったが室内から漏れ出る光が廊下をうっすらと照らしていた。ドアノブを回すと扉は開き、覗いてみるとボブはそこにいた。
ベッドにうつ伏せになりすやすやと寝息を立てる年下の男。音を立てないように部屋に入ると机の上に資料を置く。そのまま出て行こうとしたが彼の寝相が気になって仕方なかった。
シーツはぐちゃぐちゃで、最初は被っていただろうに今は床に落ちていた。眼鏡は無造作に枕の横に置いてあるし、カーキ色の揃いの制服も着たままだ。
疲れて眠ってしまった少年を見ているようで苦笑する。まるで子どもだ。シャワーも浴びないのか。いつもこんな寝方を? このままじゃ風邪を引く。
落ちたシーツを広げると彼の上にかけてやる。本当は襟元やベルトを緩めてやりたいが、そこまでやられてはボブも嫌だろう。
俺の動きがうるさかったのか、ボブはううんと唸ると寝返りを打った。髪の房がハラリと乱れ、ドキッと心臓が跳ねた。
幼さの残る寝顔をしている彼。それなのに、大人な雰囲気も醸し出しているんだからたちが悪い。
ああもう、なにを考えているんだ。ボブは弟みたいなものじゃないか。
子どもにするように顔にかかった髪を直してやる。近くで見ると寝息をたてる彼の唇は皮が剥け少しばかり荒れていた。
「ん
……
るー
……
すたー
……
」
わずかに目を開けたボブがぼんやりとした口調で呟く。眼鏡がないためはっきりとは見えないのか、一度枕に顔を押し付けると手探りで在りかを探す。
無理に起きる必要はないのに彼は起き上がると眼鏡をかけ、俺を見て息をついた。
「
……
ごめん、寝てた。なにか用事だった?」
「いや俺の方こそ起こしてごめん。これ、持ってきただけ」
机に置いた資料を指すと、ボブはわざわざ立ち上がりそれを手に取る。
「ありがとう」
目を擦りながらもパラと資料をめくるボブ。そんな彼のカサついた唇がまた目に入った。乾いた皮に赤い膨らみ。最近寒いからな、なんてことを思いながらボブを見続ける。
無意識だろうか。ボブは小さく舌を出すと下唇の皮むけをペロリと舐めた。俺はその姿をジッと見つめる。上手く言えないけど、なんだかかさぶたを気にする子どもみたいで、やっぱり放っておけないと思う。
「ルースター?」
あまりにも見つめすぎていたからか、ボブは「なにか僕の顔についてる?」と首を傾げた。
「いや、唇が荒れてるなって」
「あー確かに」
ボブはまたしてもめくれそうな皮むけに舌を這わせた。
「ちょっと待ってて」
俺は自分の部屋に戻るとリップクリームを持ってくる。
「塗ってやるよ、唇見せて」
どこで買ったかも覚えていない未使用のリップクリーム。それを開けるとボブの唇にあてがった。
だから俺が塗ってやらなくてもよかったんだって、後で後悔するのだけれど、ボブもボブで目をつぶって唇を突き出してきたんだから彼にも悪いところがあると思う。
ズレないように顎に手を添える。柔らかな肌に触れたことに何故か心臓が跳ねた。ゆっくりと真ん中から横に向かって動かし、彼の唇が光るのを見る。目をつぶり全てを俺に委ねる彼に心配が生まれてくる。
こんな無防備で大丈夫だろうか。寝てる姿も寝起きの姿も見てしまった。それに、こんなキスを待つみたいな顔
……
。俺じゃなかったら手を出されていたかもしれない。
思わず顎に添わせた手に力が入る。ふふっとボブが笑いを浮かべ、くすぐったそうに身を捩った。
「くすぐったかった?」
「少しね」
顎を触りながらボブは「ありがとう」と言う。
「いやたいしたことじゃないし
……
」
彼にリップを手渡しながら内心ドキドキとしていた。邪な気持ちがないと言えば嘘になる。手を出したいわけじゃないのに、誰かがボブに触れたらと考えると胸が焼けるようにモヤモヤとする。
俺だけが触れることができたらいいな、なんて弟に思うことじゃない。急激に意識し始めた脳はフル回転して彼の動向を記録している。
「ルースター?」
首を傾げて俺を見るボブ。その髪は無造作に乱れたままで、唇は塗ったばかりのリップで潤いを持っていた。全部俺が悪いのかな。悔しいな、きっと俺は彼の眼中にも入っていない。
「シーツ、ちゃんと被った方がいいよ。それに服も皺になるから脱いで寝ないと」
「なんだか母親みたいだ」
ボブは笑い声をあげるとベッドにボスンと身を投げた。言った側からの態度に俺は呆れてしまう。ボブはこんなにも子どもらしかっただろうか。
「
――
だからかな、君といると安心するんだ」
ボブは天井を見上げながら呟く。ほら、やっぱりそういう対象じゃない。ガッカリすると同時にチャンスかも、なんてことが頭を過る。
「おやすみボブ」
音を立てながらベッドに手をつく。母親がするように彼の額に口づけを落とした。
「
……
おやすみ、ルースター」
驚きながらもボブはふわりと笑う。いつかそういう目で俺を見てくれたらいい、そう思いながら彼の部屋を後にする。眠そうな彼の姿を見たからだろうか、今日は早く眠りたい気分だった。
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