紬実
2022-07-23 23:47:22
1051文字
Public ハンボブ
 

解放の儀

ハンボブ
攻めの愛に応えられない受けが好きです。ボブはハングマンのこと好きだけど彼の態度が本気であるとわかるかハッキリしない限り自分から好きだと言うことはないだろうなという解釈で書きました。

からかってやるつもりでいたんだ。俺たちはそれで成り立つくらい特別ではなかったから。
「愛してるって言ったらどうする」
俺の言葉にボブは一瞬だけ時が止まったように固まった。レンズ越しに見える瞳が考えを映し出し、眉は訝し気に歪められた。しかしそんな彼の仕草も瞬きの間に終わりを告げる。
「思ってもみないこと言わないほうがいいよ」
優しく微笑みながらノートや配られた資料を手に持ち直す。微笑を湛えたまま「じゃあ」と軽く手を振るボブを見つめた。
喜ぶまでは想像していなかったけれど、まさか本気だと思われもしないだなんて。本気と捉えて欲しかったのか、自分自身ですらまとまっていない思考が彼の言葉で揺らぎ始めた。
「待てよ」
思わず伸びた手が彼の腕を掴んだ。ぽやりとした外見に似合わない筋肉の付き方に、こいつも同じように選ばれし者だったことを思い出す。
「痛いな、離してよ」
キス以上のこともしたくせに、まるでそんなことはなかったとでも言いたげな口調に無性に腹が立った。
「話くらい聞けよ」
他のメンバーはとっくに部屋から退出し、この空間にいるのは俺とボブだけだった。静まり返った室内は話をするには最適だが、重い空気をも醸し出していた。
「──どうもしない。それに嘘だと思う」
腕を掴んでいる手を引きはがそうとしながらボブはそう言った。俺が最初に言ったことへのアンサーで、どうもそれは本心であるように聞こえた。
「俺は嘘はつかない」
言い切るとボブは少しだけ驚いた顔をした後「確かにそうだね」とまた笑みを零した。
「僕になんて言って欲しいの。僕も君のことを愛してるって言えばいい? それともただ認めて欲しいのかな自分の気持ちを」
君がそうして欲しいなら僕は言ってやれるけどね。浮かべた笑みはそのままにボブは淡々と言葉を発した。何を言うべきか迷っている俺を残してボブはクルリと踵を返す。離れていく背中に急激な焦りが芽生え今度は身体が動いていた。
ガバリと後ろから抱き着くと自分の声とは思えないくらい情けない呟きが漏れた。
「ベイビー行くなよ」
「ハングマン?」
心配のこもった視線を向けられる。柔らかな髪が頬に当たりその感触に心臓が脈を打つ。
「愛してる」
抱きしめる手に力を込めながら言えばボブは「うん」と頷いた。
「ボブ愛してる」
「うん、ありがとうハングマン」
首に回した手に唇を寄せられ温かく湿り気を帯びた感触が伝わってくる。ボブは今度は優しく笑うこともなくただ俺が抱きしめるのを静かに受け止めていた。