目覚ましが鳴る音で目が覚めた。手を伸ばし、ボタンを押そうとしたところで違和感を覚える。手が全く届かない。それになんだか、この手は黒くて毛だらけで……。
「にゃにゃ、にゃ!?」
僕はガバリと起き上がると目線を動かした。明らかに僕の部屋ではあるのに、やたらと家具の全てが大きく見える。まるで見上げているような感じだ。
ぐるりと回ってみるとしっぽがあるのが見えた。この感じでいくと耳もあることだろう。もしかして僕、猫になってる……?!
「ピーター、どうしたんだ具合でも悪いのか」
部屋のドアが叩かれ、入ってきたのはハリーだった。ハリーは鳴り響いている時計と、僕とを交互に見て、疑問符をいっぱい浮かべた顔をしながら目覚ましを止めた。
「お前、どこから入ってきたんだ。ピーターが連れてきたのかな」
僕を見下ろすハリーは首を傾げながらそう言う。
ハリー、僕がピーターなんだよ!
「な、にゃーご、にゃ、あ」
必死に口を動かしても出てくるのは意味をなさない鳴き声だけで、ハリーは困ったように眉尻を下げた。
「ごめんよ、動物は苦手なんだ。……お前、ピーターがどこに行ったか知ってるか」
ハリーは僕のベッドに腰を掛けると、ぐちゃぐちゃになっているパジャマを取り上げた。
「あいつ、脱ぎっぱなしじゃないか。まったく、こんな朝早くにどこに行ったんだ?」
「にゃ、にゃご! にゃにゃ」
困った風に溜め息をつくハリーの膝に乗ると、とにかくにゃあにゃあと鳴き続けた。
気付いてハリー! 僕なんだよ、僕はここにいるんだよ!
「ああ、お前のこともほっとけないしな」
苦手と言ったわりに、ハリーは僕を抱き上げると腕の中にすっぽりとおさめた。
「青い目かぁ、少しだけピーターに似てるかもな」
ジッと見つめられ、これはチャンスだと思った。懸命に手足を動かして、ジェスチャーでもなんでもしてやるつもりだった。けれど、
「なあピーター。僕、君のことが好きなんだ」
ハリーが唐突にそんなことを言ってくるものだから、ピシッと動きが止まってしまった。
「なんて、お前に言ったってしょうがないよな」
ハリーは少し赤くなりながら、僕を持ったまま立ち上がろうとした。
あっ、ま、待って、なんか身体が。
「ぴ、ピーター!?」
一瞬眩しい光がきらめいたかと思ったら、僕の身体は元の姿に戻っていた。よかった!と安堵しながらも全身が羞恥で熱くなっていく。
猫の姿のまま抱きとめられていたのだ。つまり僕は真っ裸でハリーの腕の中にいるということで……。
「や、やあハリー……」
身を捩って全てをなかったことにしようと思った。彼の腕から逃げ出して、服を着てしまえばさっきのことは夢だったと思えるはずだった。
ハリーはというと、目を白黒させて僕の姿を見ている。無理もないし、僕だって穴があったら入りたい。
「ハリー、後で説明するから、ちょっと離して……」
「いやだ」
強張った声に彼を見上げる。ハリーは顔を赤くして、今にも倒れそうになりながら言葉を紡ぐ。
「それ、誘ってるのか。返事聞くまで、離したくない」
「にゃ、にゃあ……」
鳴き声だけでも猫のフリをしてみたが、逆効果だったことは言うまでもない。覆いかぶさってきたハリーに、僕は顔を真っ赤にして暫し抵抗するほかなかった。
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