三毛田
2024-09-25 21:11:12
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61 01. 恋の切なさ

61日目 切なさは甘さに

 初めはこれが何なのかわからなかった。
 どれだけアーカイブを漁っても、当てはまるものはなくて。
 だけど、三月がアーカイブに登録しておいてくれと渡していた本にあった。
 それは〝恋〟というものであると。
「恋、か」
「どうかした?」
「いや。独り言だ。気にするな」
「そう? 丹恒も食べる? 甘いもの食べると思考がスッキリするかも」
 封を切り、俺の返答などお構いなしに穹は飴を口へと入れてきて。油断していたといえばそれまで。
 少し大きい飴玉を、口の中で転がす。
 甘いが、彼の言う通り少し思考がスッキリしてきた気もする。
 時折歯に当たって音を立てて。
「丹恒、キスしていい?」
「は?」
 思わず怪訝な声が出てしまう。
「丹恒の口の中の味が知りたい。駄目?」
 肩を掴まれ、逃げようにも逃げられない。
 背中を冷汗が伝う。もう少し躊躇え。
 頬に手を添えられ、否応なしに唇が重ねられる。
 引き剥がそうと上着を掴んだところで、舌が入り込んで。
 口の中にある飴玉が、消える。ほっとしていたのもつかの間。また戻され、穹の舌が俺の舌に絡められ。
 熱い。
 ひたすらに熱い。
 俺の舌が冷たいのもあるし、穹の舌が熱いのもあるかもしれない。
 だんだん頭がぼーっとしてきた。
 気持ちいい、もうやめたい、もっとキスしたい、これ以上は駄目だ。
 相反する感情がせめぎ合って。
 駄目だと思っているのに、穹を求めてしまう。
「うわっ」
「あっ」
 いつの間にか出ていた尻尾が、穹の胴に絡みついていて。
 ああ。
 もっとと彼を求めてしまう俺の心が、勝手に表に出てしまった。
「えっ。今、すごい音が」
 半分ほどになっていた飴玉を、がりがりとかみ砕く。口の中だけ変身を解いて、だ。
「もう自室の戻れ」
「えー」
 不満そうな声を上げるも、構わず追い出す。
 これ以上一緒にいると、口から勝手に言葉が飛び出してしまいそうで怖い。
 胸が締め付けられ、チクチク痛む。
 これが、恋の切なさなのだろうか。
 初めてなので、わからない。
「恋なんか、しなければよかったのだろうか」
 蹲り、そうこぼす。
 だけど、言葉にしたらますます胸の痛みが強くなって。
 鼻の奥がツンと痛くなり。
 違う。こうやって自分の恋心を否定してはいけない。
 恋愛指南書として、アーカイブに登録した恋愛小説や恋愛漫画でも読んでみようか。
「丹恒!」
「入ってくるなら、静かに入れ」
 鼻を少し強めにこすり、入口へ視線を向け。
「丹恒が好きです!」
 そんな言葉を口にしつつ、俺の前まで来て。手を掴んで見つめてくる。