ひろか
2024-09-24 13:03:16
8577文字
Public 観劇録
 

*観劇録*『素敵なカミングアウト』(Team STAR)感想と考察とツッコミ。

『素敵なカミングアウト』感想と考察と、観劇中の私のツッコミです。⚠︎内容に関するネタバレと深読みを含みます。

⚠︎内容に関するネタバレと深読みを含みます。苦手な方はご注意ください。




どこにでもいそうなとある一家の、そう頻繁には起こらなさそうな事件の話。

"抱腹絶倒のファミリーコメディー‼︎"と銘打って上演された『素敵なカミングアウト』は、まさにそんな作品だった。

Team STARとTeam Moonの2班上演だったのだけど、私はTeam STARを観劇。

Team STARで主演を務めた鈴木祐大さんは友人の推しで、度々お芝居を観る機会がある役者さんだ。
今作が記念すべき初主演ということで、ひと足先にこの演目を観た友人から「(祐大さんも作品も)本当にとっても素敵だったからぜひ見に来て欲しい」とお誘いを受けて観劇に行くことになった。



とーーってもおもしろかった!!
役者さんたちの力はさることながら単純に脚本がおもしろくて、何度も再演されている理由がわかる。
たぶんこれ、両班観たら役者さんによる違いとかが如実に表れてより楽しいんだろうな。


コメディを真の意味でおもしろく作るのってとても難しいんじゃないかと思う。というのもいまの世の中における"笑い"は人を傷つけかねない危うさを含んだものが多いから。たとえばちょっと誰かを馬鹿にしたり、下に見たり、揶揄したり、そんな笑いはわかりやすいけれど"おもしろさ"ではない。
その点『素敵なカミングアウト』で起こる笑いは、ただ目の前に突然訪れた予測不能な事態に一生懸命対応しようと空回り続ける登場人物たちへの愛おしさで構成されていた。いやいやそうはならんでしょ、と心の中で突っ込みを入れつつも、次に彼らが何を"一生懸命にやらかす"のかを心待ちにしてしまう。冷静な頭で考えれば絶対にやらないようなことを次々とやってのける"苫米地家"のきょうだいたちと、奇跡的ともいえる勘違いが新たな嘘を呼ぶ展開に、純粋な気持ちで涙が出るほど笑った100分間だった。
それでいて等身大の自分でいることや、そんな自分でいられる場所としての"家族"を描いているところが、これまでこの作品に触れてきた多くの人たちの心を掴んでいるんじゃないだろうか。



舞台はとあるホテルのレストランの待合室。
場面転換は一切なく、これから起こるすべてのことがこの待合室で完結する。

物語が始まってまもない段階で、おや?と思わせるのが舞子ちゃんだ。
堀内まり菜さん演じる舞子ちゃん、本当にかわいらしくて。すべてにおいてオーバーリアクションなのに、そのオーバーさがわざとじゃなく天然からくるものなのがわかる振る舞いとくるくる変わる表情にすぐにこの子のことを好きになった。鈴木祐大さんが演じる主人公・次郎の婚約者という立場で久しぶりだという家族の集まりに顔を出してもいいものか、結婚の報告はするのか、とやきもきする気持ちが全部行動に出てしまっている。うち何人かは会ったことがあるとはいえ、彼氏の家族との初対面、緊張するよね大変かわいい。
彼女のこれぞコメディ!と拍手したくなるようなリアクションの大きさが、この作品の世界観に観客を引き込む上で重要だったのだと思う。舞子ちゃんを観ていて一気に肩の力が抜けて、この作品を思い切り楽しむ準備ができた。

そんな舞子ちゃんに対して、次郎は一貫して穏やかで優しい姿勢を崩さない。舞子ちゃんのオーバーリアクションに動揺さえ見せず、当たり前のように受け止め返す姿は紳士そのものだった。
やさしい人なんだなと思ったけれど、実は最初のうちは次郎のこの対応に少し冷や冷やしていた。あまりにも"完璧"すぎる。舞子ちゃんに対してとてもやさしくて素敵なんだけれど、それ以上でも以下でもなくて、どことなく距離を感じるというか……逆に付き合いが長いからこそこういう対応になるのかな?と思ったりもしたのだけど、舞子ちゃんの立場だったらこの対応、かえって不安にならないだろうか。案の定舞子ちゃんは「何も言ってくれないんです」と次郎の妹・朋美にこぼすけれど、その理由が次郎に愛されているかどうかの不安ではなくて純粋に次郎が心配、なのもとてもよかった。とんでもなくクセは強いけどいい子すぎる舞子ちゃん。


それはさておき、苫米地家が集まるに至った理由はどうやら次郎と舞子ちゃんの結婚報告ではないらしい。むしろ結婚報告をするのは、妻に先立たれ7年が経ったお父さんだそうで。


人生には"2つの家族"が存在するという話を聞いたことがあるのだけど、『素敵なカミングアウト』はその狭間の話だ。
それぞれ大人になって、家族から巣立って各々の人生を送っている。生まれ育った"ひとつめの家族"からは離れて、今度は自分が主体となって"ふたつめの家族"のフェーズに人生が移行し始めている苫米地家の子どもたちにとって、父親の再婚に反対する理由は特になさそうだった。
……お相手が男性だと知るまでは。


そう、これこそがこの物語のきっかけとなる"カミングアウト"なのだ。
お父さん役の水谷あつしさんのここのセリフ回しがとってもよくて。言い始めるまでは本当に緊張していて、言うべきかどうかをずっと悩んでいる様子だった。けれどいざ話し出したらもう止まらない。たとえ我が子が置いていかれていたとしても、抱え続けた思いを語らずにはいられないんだ!と言うかのように話すお父さんは、いつのまにかとんでもなくきらきらとした表情をしていた。

余談だがここで『チョコレートドーナツ』が出てきたの、あっ!と思った。
仕事柄あの作品は"ゲイカップルの話"というよりも"ダウン症の子を家族に迎え入れる話"として観ていたのだけど、なるほど、『チョコレートドーナツ』を知っているお父さんなら世の中の偏見を差し置いてでもルディと一緒になる道を選ぶかもしれない。たとえ世間から少し離れることになっても、自分らしく、手のひらにあるものを大切に生きる道を選ぶ小さなしあわせを知っているだろうから。


しかし本人はそれでいいとしても、やはり周りはそう簡単にもいかないわけで。
予想外のカミングアウトに完全に置いていかれ、心底動揺し、まだ会場に辿り着いておらず父と仲がいいとはとても言えない長兄の存在に頭を悩ませる次郎と朋美、そして重彦。

兄に、そしてちょうど席を外していた舞子ちゃんに、こんな大事件を知らせてはならない。
パニックに陥った3人はここからどんどん誤魔化しに誤魔化しを重ねていくことになるのだけど、そんな彼らに手を貸してくれるのがキム・ヨンソクさん演じるホテルコンシェルジュの京本だ。


私、京本大好きで。今作のMVPだとすら思う。
自分の仕事をこなし、スマートにホテルのコンシェルジュを勤めていた彼が、たまたまカミングアウトに居合わせてしまった場面。
あぁかわいそうに彼は真面目に仕事をしていただけなのに巻き込まれてしまってと一抹の同情さえ抱いていたのに、彼は本来そこにはないはずの客席に向かって盛大に口パクで語りかける。

「まじで???」(口パク)
「ほんとに????」(口パク)

あんなに口パクで何言ってるかわかることあるんだ……と感動すると同時に、彼がこの状況にわくわくしてしまっていることも察せてめちゃくちゃ笑ってしまった。
いや、あなたが語りかけてる方向物理的には客席があるけれど、本来は壁だからね?


混乱を極めるきょうだいたちに京本が声をかけたことで、ここに奇妙な協力関係が発生した。


謎にきりっとした京本に「助けが欲しい時はメガネを外して合図をください」と言われた次郎は、その申し出を突っぱねる。
次の瞬間、彼は勢いよくメガネを外した。

いや外すんかい!
助けを求めるまで一瞬だったな……

思わず心の中で突っ込んでしまった。
けれどこの場面、次郎のキャラクターを考えると彼がどれだけ追い詰められていたかわかる場面だったなと後から思った。


思うに、苫米地次郎というのはものすごく真面目で、人の期待に応えようと頑張ってきた人なのだと思う。
スマートで物腰柔らかで、常に余裕さえ感じさせる振る舞いの裏で、彼はいつでも必死になって現実に食らいついていた。争いごとが苦手で、場を穏便に済ませるためなら自分の意見を飲み込んだり多少無理をしたりしながら、自分の行動でその場の辻褄をあわせてしまう人なんだよね。実際この時彼の胸の中には誰にも言っていない大きな秘密がある。そっちはひとりでなんとかしようと抱え込んで誰の手助けも求めないのに、"お父さんが実はゲイだった""その婚約者(男)が心の整理のつかないうちに到着してしまった""さらには父と拳で語り合うこともある兄(何も知らない)もこちらに向かっている"という事実は、次郎にとってはキャパオーバーにもほどがあった。
その結果、彼のプライド的には本来絶対に許さないであろう"他人に助けを求める"という行動に出るしかなかったのだと思う。

ある意味、世間体をとても気にする見栄っ張り。
あまりこの表現は好きではないけれど、とても日本人らしい人なのだ、次郎は。


この婚約者もなかなかクセが強くて……正木郁さん演じる川島ケンジ、とてもかわいらしい役でありつつやはりどこか抜けている。
手土産、飛び出す絵本か。飛び出す絵本、飛び出す絵本か!?と次郎たちと一緒になって三度見くらいしてしまった。ページを捲るといい感じの音楽と、どこか子どもの頃を思い出すような懐かしい空気……

一瞬その空気に呑まれそうになるも、ただでさえ心の準備が出来ていないところに登場した個性強めの"婚約者"。次郎たちもびっくり通り越して頭真っ白である。
あらためてこの混沌を外野から無責任に楽しめる観客でよかった……と、必死な彼らには申し訳ないけれどたくさん笑わせていただいた。


ここで助けを求められた京本が、予想に反してめちゃくちゃ"できる男"だったのも一周まわっておもしろかった。
「当ホテル一万人目のお客様」(100万人目だったかもしれない)なんてよく咄嗟に出たな……それを思いつくまでの「あの……それは………」の必死で頭回してますって感じのお芝居の間も絶妙。彼を見守るきょうだいたちの縋るような視線も、京本のファインプレーに水を得た魚のように喋り出すのも、全員が全力で助け舟に乗ったのがわかっておもしろかった。


しかしその助け舟の効果も長くは続かない。
とうとう苫米地家長男・道彦が到着し、買い物に行っていた舞子ちゃんも戻ってきて、場は混乱を極めていく。
次郎たちが必死にその場を丸く収めようとするたびに、勘違いが勘違いを呼び、気づけばさすがに無理がある状況が出来上がっていた。


個人的には、道彦が舞子ちゃんのことを父親の婚約者だと勘違いしているのが発覚した時に、次郎が舞子ちゃんに事情を話して協力してもらうべきだったのではないかと思う。
舞子ちゃんはたぶん協力してくれたし、兄のことだけに集中して誤魔化し続けるならまだやりようがあった気がする。もちろん頭が真っ白でそのことに思い至らなかった可能性もあるけれど、これもまた次郎の"見栄"なんだよね。

次郎のスマートな身のこなしが逆に冷や冷やした、というのは冒頭で書いたけれど、このあたりになってくると彼の思いが見えてくる。
要するに次郎は、舞子ちゃんの前ではかっこよくてやさしくて頼りになる男でいたかったのだ。弱みなんて見せたくないし、心配もかけたくない。舞子ちゃんは舞子ちゃんらしく全力で舞っていて欲しいのだ。ひらひら舞う彼女の心を曇らせそうなものはできるだけ自分のところで止めておきたいその気持ちは、見栄ではあれどたしかに愛だった。


実際の関係性と、道彦が思い込んだ関係性の齟齬に苦しむ次郎たち。
そんな彼らをまたも京本がアシストする。集合写真の人の並ばせ方、さすがに京本ができる男すぎて心の中で拍手喝采だった。

「ヒザは英語でー?」
「knee!!」

これ写真撮る時に言われても絶対反応できない。


ただ、無計画に取り繕ったものは自然と綻び始めてしまうもので。

すべてが明るみに出た時、空気がどっと重くなったのが客席にまで伝わってきた。
これまでのコミカルさはなんだったのかというほどその場の空気ががらりと変わって、役者さんたちのギアがすごい。思わず固唾を飲んで彼らの動向を見守ってしまった。

この場面のケンジくんの表情がとてもとてもよくて。
彼自身、今日この場にとてつもない勇気を振り絞って来ていたと思うんだよね。ゲイであることについての世間の偏見や冷たい目を、彼は身をもってよく知っている。好きになった人は死別しているとはいえ奥さんがいて、子どもたちがいて受け入れてもらえるだろうかという不安とともに、ひとつの家族のかたちを自分の存在が壊してしまうんじゃないかということも怖かったのだと思う。

勇気を出してここに来て、ぎこちなくはあれど表向きはあたたかく受け入れてもらえて、彼はどんなにほっとしただろうか。
それが一転、実は受け入れられてなどいなかったのだと突きつけられた時のショックは彼の繊細な心に深く突き刺さったのではないだろうか。
それでも、彼はただ悲しそうな顔をするだけなんだよね。わかっていたと、これまでもそうやって腫れ物に触るような扱いをされてきたからこそ、その反応が当然だと諦めるような悲しそうな表情に胸がきゅっとなった。


けれど、道彦は違った。
一度はあまりの衝撃に退室したものの、父の勇気あるカミングアウトと、クセは強いが心優しい父の婚約者の門出を心から祝福する。

道彦というのは、とても頑固で、それでいて信念のある人だ。次郎とはまた違うベクトルで真面目な人だからこそ、自分が抱えた家庭の問題に頭を悩ませ、それを誰にも相談できずにいた。
けれど父のカミングアウトに勇気を得て、自分の問題を話し出す。道彦を演じた八木将康さんは、威厳ある長兄の雰囲気も醸し出しつつ、勘違いに勘違いを重ねている時のチャーミングな表情や声音がとても魅力的だった。だから静かに語り出すこの場面がより強く印象に残っていて、家庭の問題に心を悩ませていた彼が父のカミングアウトに強く背中を押されたのだということが言葉にせずとも伝わってくる素敵な場面だった。

この展開はその場の誰もが想像していなかったようで、なんだ、それなら最初から言えばよかったね、ということでめでたしめでたし……



「振り回されるのはいつも俺だ!」。
次郎の叫びが、たしかな怒りを持って響く。
ここまでの気苦労はなんだったのかと、当然のように疎遠になりつつあった家族のひとときを丸く収めようとした自分が馬鹿みたいじゃないかと。

だけど、はたして本当にそうだろうか?
思えばこの混沌、きっかけはお父さんのカミングアウトだったとはいえ、次郎は本当に振り回されていただけなのだろうか?


事態を正確に飲み込めない舞子ちゃんに「私が説明するから」と咄嗟に行動できる朋美は最高に長女だった。
朋美はここまでもお父さんを迎えに行ったりケンジの様子を見に行ったりと、男2人に行き届かない細やかな部分でたくさん走り回っていた。想定外の事態にパニックだったのは彼女も一緒だったろうに、それでも役に立たない男どもに任せてはいられない!と努めて冷静に動いているのが印象的だった。朋美を演じた鈴木友梨耶さんのシャープで洗練された雰囲気がとても素敵。

対して苫米地家の愛すべき末っ子、矢代卓也さんが演じた重彦。
とても自分には手に負えない出来事にあわあわしつつもどこか楽しそうで、たばこのついでに胃薬も買ってきてくれる気の利いた弟。突然踊り出したり漫才をさせられたりと、作品をおもしろくするための"スベリ"シーンを担わされながらも、なんとかして道彦を誤魔化せるようにとちょこまか動き回っていた。


こうして考えてみると、振り回したのはむしろ次郎ではないだろうか。
朋美も重彦も、そして舞子ちゃんも。
次郎の"なんとかして場を穏便に済ませたい"という思いに振り回されている。


次郎の生き方は間違っていない。
ことを荒立てず、可能な限り穏便に、社会に適応して生きていく。それが大人になるということだ。

けれどそれが"家族"という場に帰ってきた時にはどうだろうか。
迷惑をかけたり、かけられたり、それが家族じゃないだろうか。もちろん家族の中にも中間管理職というか、バランサーみたいな人は必要だ。次郎は性格もあってその立場にいることがきっと多いのだと思うけれど、家族と一緒にいる時までそのスタンスでは息が詰まってしまう。


私は、鈴木祐大さんの魅力は緩急のあるお芝居だと思っている。
面白いことができる人なのでそちらに注目が行きがちだけど、だからこそその役の感情が露わになる場面やどちらかというと抑えたような場面がとても映えるんだよね。それこそ友人の誘いで過去にもいくつか作品を拝見しているのだけど、彼のお芝居の緩急と、物語の鍵になる大事なセリフをしっかり立てて印象づけるセリフの言い方には毎回ハッとさせられる。

今作でもひたすらから回り取り繕う場面では面白おかしく、「振り回されるのはいつも俺だ!」という叫びからエンディングにかけては彼の感情が見えるお芝居をされていて、このメリハリが観ていて心地いいなと思った。


「お前たちには隠したくなかったんだ」というお父さんの言葉に、次郎は痛いところを突かれたような気持ちだったのだと思う。
人からの期待に応えようと頑張ってきた結果が、もう後戻りできないほどに見栄を張ってしまった自分だということを次郎は痛いほど自覚していた。だから自力でなんとかしようとした。

そんな彼が、舞子ちゃんに秘密を明かすラストシーンがやっぱり一番印象に残っている。
明かしてしまえば失望されてしまうかもしれない怖さもあっただろうし、舞子ちゃんの前でかっこよくいたいという次郎自身の望みは叶わない。それでもひと言ずつ言葉を選びながら話す次郎を、普段あれだけ賑やかな舞子ちゃんが「うん」「それで?」「だから?」と穏やかに続きを促して聞いてくれるのもまた、舞子ちゃんから次郎への愛だなと思った。


次郎のことだから、自信を持って舞子ちゃんと結婚できるようになるまで婚約自体を先延ばしにするんじゃないだろうか。
そんな予想はいい意味で裏切られた。

「僕を信じてついてきてほしい。」

ここでそれを言うのかって。
この作品の根幹は"等身大の自分"だったと思っているのだけど、ずっと見栄を張って本当のことを覆い隠してきた次郎もまた、お父さんのカミングアウトに影響を受けて等身大の自分を伝えることになった。それは彼が隠していた秘密のこともそうだけど、それ以上に"それでも舞子ちゃんについてきてほしい"という気持ちでもあったんだろうなと思う。きっと次郎的には格好がつかない告白だったんだろうけど、舞子ちゃんはとっても嬉しかっただろうなぁ。


そして今度は舞子ちゃんからもとっておきのカミングアウトがもたらされる。

「実はね、」
「え!?待ってそれってどういうこと!?」

舞子ちゃんのカミングアウトは客席には語られない。
それでも次郎がなんだかとっても嬉しそうで楽しそうで、舞子ちゃんも楽しそうで、この作品のエンディングにふさわしいワンシーンだなと思った。



見栄を張ることも、無理をすることも、生きていく上で避けては通れない。
親の手を離れれば生まれ育った家族からは自然と遠ざかってしまうものだろう。
家族のかたちだってどんどん変化していく。

それでも、家族という場所が帰る場所であり、等身大の自分を受け入れてくれる場所であることはきっと変わらない。

大人になると忘れてしまいがちなそのことを思い出させてくれて、観た人が心に抱えているものを勇気を出して話してみようかと思わせてくれる、おまじないみたいな作品だった。



〈『素敵なカミングアウト』公演情報〉※敬称略
主催:ライズコミュニケーション
公演期間:Team STAR 2024年9月13日〜16日
Team Moon 2024年9月20日〜23日
会場:浅草花劇場
脚本:田中大祐
演出:池浦毅(男肉 du Soleil)、安藤亮司(劇団ウルトラマンション)