今シーズンの流行色はボルドー! こっくりと落ち着いた深い赤は色づき始めた秋の空気にもぴったり♪ メインのお洋服に取り入れるのは勿論、バッグやアクセサリー、靴などでコーディネートにアクセントを加えるのもおすすめよ!
注目アイテムはストラップシューズ! 本格的に風が冷たくなる前なら、アンクルソックスと合わせてのさりげない肌見せで軽やかさを演出するのも素敵ね!
芸術の秋、スポーツの秋、食欲の秋、読書の秋……あなたは今年の秋をどんなふうに過ごすつもり? 鮮やかに色づき始める季節にぴったりの素敵なあなたに着替えてぜひ街に繰り出してみない? 自分らしいスタイルに迷っているあなたにはGORO&姫子がついてるわ。ブティックURSULAは最新のトレンドからあなただけの魅力を引き出すとっておきまで、ここだけのこだわりのつまったファッションアイテムを多種多様にご用意してあなたのご来店をいつでもお待ちしております♪
うん大丈夫、これでちゃんと間違いない。姿見で全身を見直しながら、もう何度目かわからなくなった安堵のため息を静かに洩らす。
昨日の晩から三つ編みを結ってゆるくウェーブさせたのちにハーフアップにした髪にはパールをあしらったボルドーのリボンバレッタ、大きめの白い襟のついたココアみたいなこっくりした茶色のミモレ丈のワンピースはきゅっとしぼったウエストからふんわり広がったシルエットで、歩く度にふわふわ軽やかに裾が揺れるさまは、すこし昔の映画に出てくる女優さんになったみたいな心地にさせてくれるからお気に入りだ
サイドの髪をそっと耳にかければ、耳元にはゴールドの星のモチーフとガラスのビーズのイヤリングがしゃなりと軽やかに揺れる。
今日は氷上くんと星の写真展を見に行く約束だから――指先には星をイメージして薄いベージュにシルバーのラメを散らしたマニキュア、小指には流れ星モチーフのピンキーリング。たとえ自己満足にすぎないことくらいわかっていたって、暗号みたいにさりげなくその日のテーマをファッションに盛り込むのはわくわくする。
ふんわりとやわらかに色を乗せたパール入りのベージュのアイシャドー、ビューラーで丁寧にカールさせた睫毛にはロングタイプのこげ茶のマスカラ。頬にはアプリコットピンクのチークを淡くのせて、ピンクベージュの色付きリップの上にはとろりと甘いはちみつ色のグロスを薄く重ねる。
学校よりも少しだけ華やかに、それでも、高校生らしく華美になりすぎないように――頭のてっぺんからつま先までをしげしげと確認しながら、うんうんとひとり頷いてみせる。
大丈夫、お母さんだって似合ってるって言ってくれたし。あとはお気に入りのチョコレートみたいなこっくりした焦げ茶のショルダーバッグを持って、黒のストラップシューズを履けば完璧! お店で買う時に踵が音をたてないのは確認したし、家族や友達とのお出かけでも何度か履いてならしてあるから靴擦れだって心配ない。
うん、これで完璧! 壁時計で時間を確認しながら、思わずにっこりと得意げな笑顔を浮かべる。
大丈夫、きょうもきっと、とってもすてきな日になるって決まってるから。
「君、早いなぁ!」
森林公園の時計台のすぐ下――すっかりおなじみになった待ち合わせ場所で待っていれば、すこし焦ったようすのうわずった声の氷上くんに声をかけられる。
「すまないな、待たせてしまって。何か困ったことはなかったかい?」
ひどく恐縮したようなそぶりでぺこぺこと頭を下げてくれる姿に、ぎゅっと胸の奥を掴まれたような心地になる。いつも堂々して見える氷上くんのこんなどこか頼りなげな表情がどうしようもなくいとおしくってたまらないだなんてことは、氷上くんは気づいているんだろうか?
「ううん、平気。さっき着いたばっかりだよ。楽しみすぎて早く着すぎちゃっただけだもん、気にしないで?」
こちらの姿を見つけて慌てて駆け寄ってきてくれる氷上くんが見たいから、だなんて下心ありきで予定よりも早めに出てきただけだから――だなんてことは言えるはずもない、もちろん。
「ならいいんだが……ありがとう、そう言ってくれて嬉しいよ」
やわらかにほころんだ笑顔に、心にそっと小さなあかりを灯してもらったような心地よさがあふれ出す。
「ところで君――、」
こほん、と小さく咳払いをこぼし、すこしだけかしこまったようすで氷上くんはささやく。
「きょうの服装、とてもよく似合っているな――髪型も素敵だ、いつもよりもすこし華やかに見えて。いつもの君だって素敵だけれど、学校じゃそんなふうには出来ないだろう? なんというか、休日ならではだな」
心からのまっすぐな言葉は、いつだって手渡された瞬間に胸の奥でやわらかく音も立てずに優しく跳ねる。
「ありがとう、氷上くんもいつも素敵だよ?」
にっこりと笑いかけながら答えれば、途端に気恥ずかしそうな笑顔と言葉が投げ返される。
「いや、僕は君とは違ってファッションには詳しくないから……でもありがとう、君にそう言ってもらえるのは素直に嬉しいよ」
照れくさそうに肩を竦めて答えてくれる姿に、いとおしさとしか呼べない気持ちはますます膨らむ。
「どうもありがとう――立ち話が長くなって済まないな、そろそろ行こうか?」
「うん」
大きめに首を縦に振ってみせる仕草と共に弾んだ声で答えれば、途端に、まっすぐに見つめた氷上くんのまなざしにはかすかな戸惑いの色がよぎる。
「あれ、どうかした?」
ぱちぱち、とまばたきをこぼしながら尋ねれば、少しだけ首を傾げてみせながら、ぽつりとささやくような口ぶりで氷上くんは答えてくれる。
「いや、いま……花の香りがしたんだ、かすかにだけれど。不思議だな、ここらには咲いていないようなのに」
君も感じるかい? 戸惑い気味の問いかけを前に、にっこりと笑いかけながら私は答える。
「ああ。私かも、それなら」
得意げにやわらかく微笑みながら、続く言葉を紡ぐ。
「金木犀の香りでしょう? 去年の秋の帰り道で氷上くんが教えてくれたよね、子どもの頃から好きな香りなんだって。香りのするものってほとんど持ってなかったんだけど、こないだお店で見かけていいなあって思ったの」
ごめんね、驚かせちゃった? 小首を傾げながら尋ねれば、すこしだけ気まずそうな色を宿した、ぎこちない返答がこぼされる。
「あぁ、――済まなかったな、無粋なことを言ってしまって」
「そんなことないよ、気づいてくれて嬉しかったもん。私ね、あれから金木犀の香りがすごく好きになったの」
思わずうっとりと瞼を細めながら、〝一度目の秋〟の記憶を静かに思い起こすようにする。
「あぁ、もうそんな季節なんだな」
徒歩で通う私のために、と、わざわざ自転車を押しながら共に歩いてくれる帰り道、ふいに漂うおだやかなあまい香りに気づいたのは、確か去年のいまと同じ時期だったはずだ。
「幼稚園の頃だったかな、帰り道でふいに甘い香りがしてきてね。母に尋ねたんだ、これはどこからしてるの? って。そしたら母はすぐに歩道の脇に咲いていたオレンジの花を指しながら教えてくれたんだ。この花の、金木犀の匂いなんだって。この時期は僕の誕生日も近いだろう? 父や母が病院に通う時にもいつもこの香りに包まれていたから、金木犀の香りは僕の生まれてきたことの祝福を運ぶ匂いだって言ってくれて。なんだか照れくさいんだけれど、この時期になるといつも思い出すんだ」
すこし気恥ずかし気に――それでいて、どこか誇らしげなようすを隠せないままに答える氷上くんの笑顔の背後では、うんとちいさな火花を散らしたような鮮やかなオレンジの花が彩りを添える。
すこし乾いた秋風が運んでくれるやわらかに匂い立つような花の香りと共に刻まれた優しい記憶は、また同じ季節がこうして巡るようになったいまでも、少しも色褪せずに鮮やかなままだ。
「あの後教えてくれたでしょ? 金木犀の花はモクセイ科の植物の一種で、同じモクセイ科には白い花をつける銀木犀もあるんだって」
「ああ――そこまで覚えてくれていたんだな、なんだか照れくさいな。どうもありがとう」
「どういたしまして」
どこか気まずそうな口ぶりで答えてくれる姿をじいっと見つめながら、声を立てずに静かに笑みを浮かべる。
忘れるわけないよ、すっごく大切な思い出だもん、どれひとつ取ったって。
心の中でだけそう答えながら、あの頃よりもすこしだけ大胆な気持ちで、長袖のTシャツに包まれた氷上くんの腕へと自らのそれをそっと絡ませるようにする。
清潔感のあふれるさっぱりとした石鹸の香り、それに、かすかな整髪料の匂い――いかにも規律の正しい氷上くんらしいその香りに私の纏った花の香りが混じり合えば、そこからはどんな新しい色彩が生まれるのだろうか。
「うみ、」
戸惑い気味に言葉を詰まらせる姿を前に、いたって明るく私は答える。
「ねえ行こう、氷上くん? きょうの展示ね、私もすっごく楽しみにしてたの。今朝の番組でもちょっとだけだけど取り上げてたんだよ。早くいかないと混んじゃうかもしれないよ?」
すらりと背の高い氷上くんの眼鏡のレンズ越しに見える深く澄んだ優しいまなざしをじいっとのぞき込むようにしながらそう尋ねれば、瞳の奥に宿る光には、ほのかで心地よい、掛け値なしの温もりがゆらりと煌めく。
「あぁ……そうだな、それも。うん、行くとしよう。僕も予習はばっちりだ、何かわからないことがあれば遠慮せずに聞いてくれて構わないぞ」
「頼りにしてます、氷上先生」
笑いながら答えれば、火花が弾けるかのように、いくつもの色鮮やかであたたかな想いがふたりの間で音も立てずに瞬く。
ねえ、氷上くんは去年の秋のことを覚えてる?
いつものようにこうして公園で待ち合わせをしていたら、氷上くんは木陰で本を読みながら私のことを待っててくれたよね?
穏やかなぬくもりに満ちた秋色の日射しに優しく包まれた氷上くんの姿があんまりにも綺麗で目が離せなくなったこと、いつでも真面目な氷上くんが少しも顔色を変えないまま冗談を言ってみせるのがなんだかすごくおかしくって、これからもっと氷上くんのいろんな姿を知られたらなって思ったこと、いつになく真剣な瞳でひとつひとつの展示物をじっくり見ては、展示内容の補足説明をしてくれたこと――どれひとつだって欠かすことなんて出来ない大切な宝物みたいな思い出だってことを、氷上くんは知ってくれてるの?
私ね、あの時はちっとも思わなかったんだよ? あれから一年後にもまたこうやって氷上くんと一緒に過ごせるだなんてことも、こんなにも氷上くんとの距離が近づいてるだなんてことも。
Tシャツの布地越し、思いの外しっかりとしなやかで頼もしさを感じさせてくれる氷上くんの腕の感触と、そこから伝うおだやかな体温――その両方におもわずうっとりと瞼を細めたくなるのを感じながら、先ほどの言葉とは裏腹に、どこか歩調を緩めるように、私たちはゆっくりと歩みを進める。
新しい季節の訪れを、この美しい季節に生まれた人への心からの祝福を届けるように――かぐわしく穏やかな花の香りを纏いながら、私たちのありふれた、それでいて何よりも特別な一日が、またこうして始まる。
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