三毛田
2024-09-23 22:35:26
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59 09. 唇に触れる指

59日目 エロスを感じる

「穹」
「んー?」
「動くな」
 手袋に包まれた手の先。きれいに爪が切り揃えられた指先が、俺の唇に触れる。
「これでよし。急いで食べようとするからだ」
「あ、ありがとう」
「子供じゃないんだ。ゆっくり食べろ」
「はーい」
 どうやら、唇にさっきまで食べていたドーナツのカスがついていたようだ。
 丹恒の指が触れた個所が熱い。気のせいかもしれないけど。
 残りのドーナツは、カフェオレと一緒にゆっくり食べる。
 空になった皿とマグカップをキッチンへ持って行き、他の食器と一緒に洗う。
 今更ながら恥ずかしい気持ちになって、唇を乱暴にこする。
 手袋をしていない、左手で触れられたらもっと心臓に悪かったかも。
 俺の片想い。俺は、丹恒に恋をしている。
 だから、ああやって突然触れられると困る。心臓に悪い。
 思っているより長い睫毛も、見た目よりも筋肉のついた肢体も。
 時折見せる愁いを帯びた瞳も。
「すごく、好き」
 そう呟いて、その場に座り込む。
「はあ……
 駄目だな。
 丹恒の新しい面を知れば知るほど、夢中になって。
「戻ったよ~」
「穹、口はつけていないからこれも食べてくれるか」
 おずおずと差し出されたのは、一口分だけ欠けたドーナツが乗った皿。
「良いの?」
「ああ。俺には甘かった」
「じゃあ、いただきます」
 口はつけていないと言っているが、俺としては口つけたものでも大歓迎だったけど。
「いただきます」
 折れたがべたものとは違う味だ。これも美味しいな。
 思わず笑みを浮かべると、丹恒が穏やかな表情でこちらを見ていて。
「丹恒?」
「お前が食べている姿は、ずっと見ていたいと思っただけだ」
 そう言いながら、また俺の方へと手を伸ばしてきて。指が、唇に触れる。
「またついてた?」
「ああ。子供みたいだな」
「うう……
 子供扱いされた。なんでだよ。
 丹恒がやたらと俺を子ども扱いする理由が分かったのは、仙舟に行ってから。
 丹恒が長命種だと知って。ああ、だからかと一人で納得した。
「えっちなお姉さんじゃん!」
「急にどうした」
 資料室でアーカイブを見ながら思わず小さく叫んだら、ジトッとした目を向けられた。
「だって、丹恒俺よりも年上じゃん? それに、その……
 本音を告げたら、引かれる気がして思わず口ごもる。
「言えないのなら、余計な事は言うな」
「はーい」
 答えながら丹恒の手を取ってラウンジへ。今日のおやつをもらいに行く。
「穹、ゆっくり食べろよ」
「うん」
 とは言ったが、始めた食べたものだったので唇についた。