付き合いの長さだけで言えば誰よりも長いのがコメット──Cだった。ただ、俺はあいつを理解できなかったし、あいつも俺を理解できなかった。
Cは幼い頃から実験のストレスからか些細なことで癇癪を起こし、物や人に当たった。そんな彼の世話を任されていた俺はそりゃもう散々な目にあった。このクソガキと何度思ったことか。教団がCに行っていた実験を考えれば多少同情もするが。
純粋な人間として産まれたのに、大人たちの都合で身体を無理やり落とし子と融合させられて。挙句の果てに偽物だと紛い物だのといった罵詈雑言を浴びせられ。あのようなひん曲がった性格になるのも仕方ないのかもしれない。
だからあいつは誰にも心を開かなかった。Cは父だけを信じ、父に会えることだけを夢見ていた。きっと認められたかったのだろう、自分の存在を。会えば認めてもらえると思っているのだろう、紛い物の落とし子として育てられた自分を。そのために使えるものは使った、俺とてその駒の一つに過ぎなかった。
作戦決行の前夜、教団の外で煙草をふかしているといつの間にか近くにいたCが声をかけてきた。ローブのフードを取ると、白く長い髪が夜闇の中でやけに目立った。
「……永田」
「Cか。どうした?」
「やっぱりなんでもない」
「そうかよ。じゃあ何しにきたんだ?」
「……僕が今何を考えているかわかるか?」
「いいや、わからん」
「知っていたけど、お前とは気が合わない」
「……わざわざそれ言いに来たのか?」
ふぅ、と呆れたように煙草の煙をCに吹きかける。Cはくしゃりと顔を顰めた。
「煙草は嫌いだって言ってるだろ」
「ふ、お子ちゃまめ」
鼻で笑うとCは余計に苛立たしそうに眉を寄せた。
「……僕はここの教祖だぞ、お前はもう少し敬意を払え」
「はぁ? 誰が今まで面倒見てやってたと思ってんだ。お前さんこそ俺にもうちっと感謝すべきだろうが」
「ふん、なんで僕が」
不遜な態度の彼は相変わらず可愛げというものがない。
結局Cが何をしに来たのかわからずじまいだった。
最後まで、わからなかった。
*
「あいつを止めてくれ」
一人の殺し屋と一人の作家を縋るように見た。どうしようもなく情けないが、彼らの力を借りる他なかった。世界への憎悪を極限まで膨らませたあいつはもうヒトへは戻れない。かと言って、完全な化け物にもなれないのだあいつは。
──いい加減、世界を恨むのも疲れただろ、お前さんも。だから、もう終わりにしようぜ。
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