らん
2024-09-23 20:09:02
1516文字
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とみとが

WB 続き思いつかなかった

「それ、わざとですか?」
 佐狐に問われた意味をあの頃の兎耳山は理解出来なかった。『それ』の指し示す先が皮を剥ぐようにジャケットを脱がせる事だとは掴んだものの、肝心の『わざと』というものを解釈できなかったのだ。
 故意にやっているのか、という意味であれば当たり前にイエスであり、『わざと』の後に暗示された『何か』があるのなら、それは兎耳山には分からない。
「考える事は亀ちゃんに聞いて?」
 オレはただてっぺんに居るだけだから。
 入ったばかりの佐狐に上手く説明するだけの技量もない。自分の感情を上手く外界に溢す為の手段も他者より持ち合わせていない。全部十亀にお任せした方がチームが上手く回る事には気づいていたから、その日の兎耳山はいつも通りそう言った。
「今思えばさ、あの時の『わざと』って、どういう意味だったか分かるよ」
 試し行為だ。剥ぐ相手に対するものではない。チームメンバーに対する威嚇でもなければ、自分に言い聞かせるものでもない。あれは、十亀に対する試し行為だった。
 どこまで許されるのか。どこまで呆れないでくれるのか。いつまで一緒に居てくれるのか。いつまでオレの隣に立ってくれるのか。
 結局、すぐに兎耳山は十亀に皮を剥ぐ事は禁止されてしまったし、その重荷を十亀自身に背負わせた。
(あのとき、もうやめようって言われてもオレは止まらなかっただろうけど)
 それでも確かに、誰かに「もういいんだ」と言われたかったのかもしれない。
 眼前でずっと瞬きを繰り返すだけの佐狐の髪は黒い。相変わらず唐突な人だと思われているのか、彼は兎耳山の話を理解してはいなそうだ。
「とにかく、残ってくれてありがとね、さこっちゃん」
……残ってくれて、って、なんだか気味が悪い」
「素直な感謝なのに〜!」
「あんたが感謝を述べるべきは、副頭取では?」
「それがさー、毎日言ってるけど全然受け取ってくれないんだよね」
「自業自得」
「厳し〜ひど〜いオレ頭取なのに〜」
 たいして気にもしていなそうな兎耳山を前に、佐狐は隠す気もなく溜息をついた。
「お互い様にしたいんじゃないですか」
「イヤだ」
……オレに言われても……
「亀ちゃんにも言った!」
「じゃあオレ以外に話を振ってください」
「ぬまちゃんにもありまにも言ったら、同じ事しか言わないんだもん」
「多数決で答え出てるじゃないですか!」
「でもー!だってー!オレが納得できないよー!」
 喚き始めた兎耳山に呆れ、佐狐はそれ以上一言も発さなくなる。なんだどうしたと流れを見守っていたメンバーも事件性が無いと見るに誰も助け舟は出さず、兎耳山がひとり勝手に完結するのを待つのみだ。
 すると、ちょうどやって来た十亀が兎耳山の襟首を掴んで軽く浮かせる。
「ちょーじ、人を困らせないのぉ」
「亀ちゃんのせいなのにー!」
「オレのせいにもしないよお」
 ろくに内容も分からぬだろうに十亀が佐狐に対して謝ると、兎耳山もつられたように謝りが続く。思わず目を見張ってしまい、佐狐はただ頷くしかなかった。
 首根っこを押さえていた手を離し、持ち前の身軽さですぐ向きを切り替えて共に連れ立つ兎耳山を見、十亀はのんびりと話を聞き出す。
「なんで佐狐にちょっかい出してたのぉ」
「亀ちゃんがオレの感謝を受け取らないって話をした」
「えー、もう受け取ったよぉ……みんなにも謝って、風鈴と友達になって、髪も切った、抜ける奴等も見送った、残った奴等と楽しくやってる。感謝が必要なものなんてないのに、受け取れないでしょお」
「好きになってごめん!ありがとう!ってコト!」
…………は、?」

続かない