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きなこ湯
2024-09-23 14:31:39
1050文字
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それが運命でも
ワンライ自主課題「用意周到」の伯特です。
「はい、お手をどうぞ。お姫様?」
差し出された手のひらとにっこり笑った顔を交互に見返し、それから特待生はおずおずと片手を重ねた。伯玖は満足そうに頷き、しっかりと手を握り返す。
「足元、気を付けて」
「は、はい
……
」
「まあ、おまえさんが踏み外してもちゃんと受け止めてやるから、そこはおれを信じてくれて構わんよ」
そろりと踏み出した片足に気を払いつつ、特待生は絶対に落ちまいと決意を固めた。左足に巻いたサポーターは緩んでいないし、痛みだってだいぶ引いている。階段の昇り降りくらいなら一人でも大丈夫だろうが、万が一にも転んでみれば、今度こそ伯玖の冗談を受け流せない。
同行した任務先で転倒した時の怪我だった。ちょうど、別の怪我で怪異薬を服用した後だったため、足については一般的な処置に留まったのだ。特待生にとってはこちらのほうが馴染み深いが、問題は周囲の反応だった。
階段の踊り場で偶然すれ違った伯玖は、特待生の怪我を見た途端くるりと方向転換し片手を差し出した。
「それにしても。おまえさんに怪我させるなんて、どこの任務だったんだ?」
「シノストラのお手伝いで
……
」
「あー
……
」わかりやすく苦笑を浮かべて肩をすくめる。「そりゃ災難だったな。おれがいられたらよかったんだが」
「ああ、はじめて会った時みたいに」
先に階段を降りる伯玖が足を止めた。
普段は見上げていることの多いその顔を、今は正面に見下ろしている。階段の影が長く伸び、穏やかな顔立ちに薄らと暗い影を落としていた。自分を見上げる穏やかな眼の奥に
――
なぜだか、知らない色が滲んでいるように見えた。繋いだ手がわずかに緩む。
「もし、最初からおれがあんたに出会うことを知ってたと言ったら、どうする」
囁くような声だった。
「最初からって
……
」
冗談のような言葉だが、普段のような口振りではない。
少し考え、特待生は困惑しながらも繋いだ手を握り返した。
「どうもしません。私を助けてくれたのは、伯玖さんですから」
すると、伯玖はわずかに両目を見開いた。そんな言葉が返ってくるとは少しも考えていなかった、不意打ちを受けたような表情だった。
「
……
、どうもしない、か」
「はい」頷くと、その決意はより強固になる。「私、伯玖さんのおかげで、今ここにいられるんですよ」
「それは、」
伯玖は何か言い掛けてやめた。それから普段通り人の好い表情で微笑み、静かに「なんでもない」と首を横に振る。
薄暗い階段には冷たい風が吹いていた。
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