三毛田
2024-09-22 19:29:33
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58 08. 言葉の代わりに

58日目 視線だけでもわかる

「アンタたち、よくそうやってくっついてるよね。お互いに鬱陶しくなったりしないの?」
 ラウンジで、丹恒の太腿に頭を乗せてゲームをしていたら、なのにそう言われて。
「丹恒の体温が低いからちょうどいい」
「今日は穹と一緒にいたい気分だからな」
 うわ。このバカップル。
 と、引いた声。
「ラウンジじゃなくて、部屋に行きなよ」
「パムにおやつお願いしてあるから、まだ戻れない」
 そう答えると、額に手を当てて首を横に振りながら大きなため息。
「今日はパウンドケーキを何種類か焼いてみたぞ。これだけは、ブランデー入りだから食べる時は要注意じゃ」
 少し大きめのお皿に、少し厚めのパウンドケーキが並べられて。ホイップクリームも添えられている。
「パム、ありがとう。ほら、穹」
 丹恒が受け取り、一口大にカットすると口元へと持って来てくれて。
 パムはなにも見ていないという表情で、なのにお皿を渡している。
「三月ちゃん、ブランデー入りを食べる時は気をつけるんじゃ」
「ありがとう、車掌さん。後でこの二人追い出しておいてね」
「う、うむ」
 紅茶を淹れていたパムは、なのの圧に尻込みして。
「ほれ、丹恒」
「ありがとう、パム」
「ケーキが甘いからの。ストレートが一番美味い」
「わかった。穹、飲むときは体を起こせ」
「うん。次のちょうだい」
 次のは、ママレードかな? 歯ごたえがある気がする。
「これはママレード入りか。皮のほのかな苦みがいい」
 丹恒はこれが気に入ったようだ。
「こっちは紅茶か。甘さ控えめで食べやすい」
 と言いながら、俺の口へと入れてくれる。
「ノーマルはホイップ乗せがいいかもしれないな」
 先に味見をして、それから俺の口へと運ぶ。
「姫子さんとヴェルトさんには持って行ったのか」
 今度はチョコ味。どれも美味しい。
「これからじゃ。コーヒーより紅茶の方がおすすめなんじゃが、姫子は自分で入れたコーヒーを飲むと譲らんじゃろう」
「ああ。姫子はよくわかんないこだわりがあるもんね。ウチは、このフルーツいっぱいのが好き!」
「俺はママレード入りだ」
「俺は、うーんと……全部好き!」
「こら、動くな」
 ぺしっと額を叩かれる。
「食べたから、戻るか」
「ブランデー入りは、部屋で食べるね」
 二人に手を振って、俺の部屋へ。
 部屋に着くと、ケーキのお皿をテーブルに置いてどちらともなくキス。
 言葉はいらない。キスをしたかったから、キスをした。キスをしてほしそうだったから、キスをした。
「エッチなことする?」