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ユコ
2024-09-22 10:04:43
7558文字
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fly me to the moon
お題:月夜
うっかり「月が綺麗ですね」を口にしてしまったギャンブラーと教授の攻防戦の話。
覗き見る月のように丸い顕微鏡の視界には、今日も望遠鏡で見る惑星の地表の模様よりも複雑な微生物の世界が広がっている。
最近、発見された惑星の生物調査の一環だった。宇宙ステーションの一室に引きこもり、ひたすらその惑星から採取された水や大地の砂から微生物の繁殖の特徴を調査する。数日は顕微鏡の中の世界と睨み合うだけの作業が続く、孤独な時間。けれど、研究とはそう言った地道な作業と観察の積み重ねでようやく小さな一歩が生まれる世界だ。
そんな重要な顕微鏡の世界と向き合う静謐な時間を邪魔するように、僕の端末はさっきからメッセージを受信し、震え続けていた。
「ハロー」「君が研究室に引きこもってるって聞いてさ」「宇宙ステーションって娯楽に欠けてるだろ?」「退屈なスターピースカンパニーラジオは聞き飽きた頃じゃない?」「そんな君にラジオアベンチュリンなんてどう?」「博識な友人だけが聞ける特別なラジオチャンネルだよ」。
まるで蛇口を撚れば流れ出す水のように、画面に絶え間なく現れる喧しいチャットに、僕は観念して渋々と通話のボタンを押した。無視をすれば反応があるまでこの文字でも喧しいアティニークジャクは「ねえ、教授?」「教授ってば!」「おーい、レイシオ!」と連続で僕のことをチャットで呼び続け、不愉快なスタンプを連投してくることが目に見えている。スタンプなどとコミュニケーションを低俗に変えた発明をこの男と出会って心底恨んだ。煩いのは声だけで十分だというのに。
「はぁい、教授」
通話ボタンを押したと同時に軽快な男の声が聞こえてくる。僕は端末をスピーカーに切り替え、顕微鏡に向き合い直しながら口を開いた。
「で? ラジオアベンチュリンとやらは僕にどんな有益な時間をくれるんだ? 僕の時間の価値を君は知らないと見える。退屈と感じたら速攻で通話を切ってやるからな」
「わお。君って友人間コミュニケーションってやつ知らないの? 世間では友人同士はこういう無駄話や世間話に花を咲かせて、距離を縮めるんだよ」
「これ以上、君と距離を縮めて僕に何の価値があるんだ」
仕事でのコミュニケーションは困らないほどには縮まっているだろう。
そういうとアベンチュリンはつまらない男だな、と通話越しに溜息を吐く。
「
……
で? さっさと本題に入れ。いつもの困り事だろう」
「察しが良くて助かるよ、教授。でもさ、仕事の話じゃなくて。これは僕の友人として相談に乗って欲しいんだよね」
「珍しいな。僕が君の友人だと?」
「そう。博識な僕の友人」
「僕はなったつもりはない」
「まぁ、君が僕を友人と思ってなくても、僕が友人と思っているからいいんだよ」
勝手な理屈をこねる男を無視して、僕は顕微鏡越しに増えるバクテリアの動きを具に観察する。このプレパラートの中には観察したい繁殖行動をとっているバクテリアはいない。次の観察するべきプレパラートを顕微鏡にセットし、顕微鏡のピントを合わせ直す。
「相談したいのは、恋愛の話なんだ」
アベンチュリンの口から出たその言葉に、顕微鏡のピントを合わせる捻子を弄っていた指が滑った。ぱりん、と顕微鏡のレンズの先端とプレパラートの薄い硝子がぶつかって割れる。まるで新人のようなことをやらかしてしまったことに僕は思わず舌打ちをした。
「え。教授、怒ってる?」
「
……
怒ってはいない。ただその話題なら、尚更なぜ相手に僕を選ぶんだ。切るぞ」
「待って、待ってったら! 言語コミュニケーションの齟齬なんだよ、僕の発言で相手に誤解を生んじゃったかも知れなくて。でも僕の行動の何がおかしかったのかわからないから、知識を持っている人間からの客観的な意見が欲しいんだ」
「
……
話してみろ」
この男は交渉のために自分の見目を武器にすることは厭わない。けれど、適切な距離を保つことには長けている男のため、仕事に同行してもそういった相手に誤解を生むような面倒を起こさないことだけは評価していた。そんなギャンブラーとしての珍しい失態に僕は耳を傾ける。アベンチュリンはおずおずと口を開いた。
「今さ、仙舟に視察に出向いてるんだよ。仙舟って独特な文化があるじゃない? 特に麻雀をはじめとした遊戯の文化とかをカジノに持ち込んだら結構、利益を出しそうな気がしてさ。だから、そういうことに造詣がある伝統事業部の人間に声をかけて来たんだよね。ちなみに女性」
「
……
カンパニーはいわゆる社内恋愛は禁止では? 規則違反だな」
「誓って、僕に気は無いってば。カジノや賭け事に理解があるカンパニーの人間って少ないけど、伝統事業部の人間は遊戯に理解があるってだけで選んだんだ。その彼女と一日、仙舟の遊戯場を回ってね。結構、夜遅くなっちゃったんだよ。宿は別々にとってたけど、夜道を女性一人で歩かせるわけにもいかないから、宿まで送って行くよ、って僕は彼女に言った。でも、流石に一日中彼女と一緒だったから、その道を歩きながら話題に尽きてさ。手持ち無沙汰に夜空を見上げたら、仙舟の夜って衛星惑星の『月』が綺麗でね。いわゆる満ち潮の時で、綺麗な満月だったんだ。まるで夜空から落ちて来そうな綺麗な月だった。だから思わず隣にいた彼女に言ったんだよ。『見て、月が綺麗だね』って」
「
…………
」
「そしたら、彼女なぜか恥ずかしそうに顔を赤らめて、黙っちゃってさ。すごい微妙な空気になった。宿についても、僕と別れる時にちょっと彼女の視線が熱っぽい感じがして。あ、これ僕がやらかしたな、ってわかったけど、ここまでのコミュニケーションで僕の失態ってある? 社内の人間と誤解でも恋愛感情が芽生えるのは避けたいんだよ。それとなーく、フォローをしておきたくてさ」
つまり、女性側を傷つけることなく、自分には気がないことを伝え、彼女との間に流れている気まずい空気を払拭したい。
どう考えても僕相手にする相談ではないことを尋ねる彼に、僕は頭が痛くなる前にこめかみを揉んだ。
「それなら、トパーズあたりに聞くのが適任では? 相手は女性なんだろう」
「それはまずいって。悪手にもほどがある。そのまま人材奨励部にハラスメント問題で議題に挙げられたら僕、降格だよ。こんなまぬけな降格、理由ある?」
「僕としては非常に愉快だ。前代未聞の石心会議になりそうだな」
「そんな一人も味方がいなさそうな会議、冗談じゃないよ」
頼むよ、君ぐらいしかこんな相談できる友人いないんだよ。
そう泣き言を言う彼に、僕は溜息混じりに新しいプレパラートを作り、顕微鏡にセットしながら口を開いた。
「仕方ない。物事を知らないアティニークジャクに知識をくれてやろう。彼女は伝統事業部の人間と言ったな。おそらく古典の造詣もある人なのだろう。君は惑星、アフロディテを知ってるか?」
「いや? 聞いたことがない」
「辺境惑星の一つだが、その惑星は別名、愛の惑星とも呼ばれている。そこでは愛や恋という価値観が何よりも重視され、彼らはおはようの挨拶と同じ感覚で、家族や恋人に『
I love you
愛してる
』を言葉にし、朝からキスでそれを表現し合う。5秒でも他人と目を合わせ続ければ、運命の相手とみなされ、恋人だ」
「わぁ。なかなか大変な惑星だ」
サングラスが手放せそうだと嘯くアベンチュリンに僕は頷く。
「そこは同感だな、僕もあまり足を踏み入れたくない。その惑星に、とある研究者が降り立った。まだここまで共感覚ビーコンも発展しなかった頃の話だ。その研究者はあらゆる惑星の文学を収集し、それを宇宙に伝える、いわゆるその頃の『翻訳者』の仕事をしていた。けれど、その惑星の文学を手に入れて、驚いた。その研究者の価値観と、アフロディテの『
I love you
愛してる
』の価値観はかなりずれていたからだ。こんにちわの感覚でいう愛してるも、愛の告白をするときの愛してるも、さようならで伝える愛してるも、アフロディテでは全て同じ『I love you』なんだ。これでは自分の惑星にアフロディテの文学を持ち帰っても、話の意図が伝わらない」
「その研究者が持ち帰った文学ってどんな話なの?」
「普遍的な恋愛文学だ。愚かな恋に堕ちた男が好いた女にどうやって告白しようかと煩悩に苦しむ」
「ふうん。愛の惑星でも、好きな人間に愛を告げるのはためらいがあるんだね」
そこは全宇宙共通だ、と嬉しそうにアベンチュリンは言った。
「まぁ、好いた人間に嫌われたくない、認められたいと思うのは人間の承認欲求の一種だからな。どれだけ環境が違ってもそう言った人間の根本的な欲求は全宇宙共通だろう」
「で、その研究者はそんな愚かな男の『
I love you
愛してる
』をなんて訳したの」
「月が綺麗ですね、と訳したそうだ」
君が彼女に告げた言葉と同じだな。
そう淡々と僕がいうと、通話越しの彼の声がえ? と戸惑いの声を上げた。
「もしかして、そういうオチ?」
「そういうオチだ。まぁ流石にこんな昔の逸話ごときで、君のその言葉を誤解してはいないだろうが、元々、君に気はあったんじゃないか。君の顔は女性が好む美しい顔をしているし、そんな見目のいい男に昔の逸話とはいえ二人きりの時間で『
I love you
愛してる
』と同じ意味の言葉を囁かれば、顔も赤らむだろうし、浮かれもするだろう」
「ありがとう。突然、君から顔を褒められた僕の戸惑う顔を君に見せられないのが残念だ」
「画面通話に切り替えてもいいが? 僕にも美醜を判断する価値観はある。対外的に見て、君の顔が綺麗なのは知っているし、僕もそう思う」
「あ、うん。わかった、わかったから。もうそれ以上淡々と言わないでよ、君からそういうことを言われるのに慣れてないんだ。それにしても、『月が綺麗ですね』がどうして『I love you』の意味になるのさ。共感覚ビーコンでも伝わらないよ、そんな翻訳」
「君は想像力が足りないな。想像してみろ。月が綺麗ですねというほど美しく闇夜に月が輝いているということは、あたりに街灯りもない暗闇なんだろう。そんな灯りもない夜に二人きりで過ごし、自分が感じる美しいものを隣にいる人間と共有したい。だから、男の口からぽろりとそんな言葉が出たんだ。そんな奥ゆかしさがある『
I love you
愛してる
』だ」
僕の説明にようやく想像がついたらしい。通話越しに軽快な指を鳴らす音が響く。
「ああ、理解した。つまり
情緒的
ロマンティック
ってことか。随分と遠回しだな」
「奥ゆかしさの欠片もない君にはわからないだろうな」
「そうだね。月を誉めるよりも、そんな好きな相手と二人きりの時間なら、キスした方が早いと思う」
「君がハラスメントで訴えられないことを願うよ」
「だから僕は彼女に気なんてないんだって! 好きな相手って言っただろ」
「ふん」
つまり、この件とは別に、この男には好いた相手がいるということだ。
ばき。また手元のプレパラートが音を立てて割れた。今日は、本当に調子がおかしい。
この無謀なギャンブラーが恋する相手がいるのは、誉めるべき話だ。この男は放っておくと哲学的ゾンビ──表面上、人間らしさを演じるだけで、人間的な感情を持たない人間に成り下がってしまうのではないかと、常々思っていたのだから。なので、この哀れなプレパラートの欠片を産み続ける愚鈍と成り下がるのはいい加減にやめろ。そう自分を叱咤し、僕は口を開く。
「まぁそういうことだ。彼女が妙な空気になったのも君が無知ゆえだし、そう言った知識がある女性なら逆に今頃、君のその言葉に反応してしまったことを悔いているのでは? 出張中にさりげなく自分の無知ぶりをアピールでもしておけ。君は芝居が得意だろう。それで笑い話で済む」
「有益な助言をありがとう、教授」
「こちらこそ、無益で無駄な時間をどうも。切るぞ」
「あー、待って。お礼にさ、ちゃんと面白い話をするよ。君の退屈しのぎにさ。今度は君は相槌を打つだけでいいよ」
「僕はラジオに相槌を打つほど暇じゃない」
「まぁまぁ。君は、聞いているだけでいいんだから」
どうにも推しが強い男に僕は思わず黙り込んだ。彼がこう言うふうに攻め込む態度に出る時は碌なことがないのを、彼と出会って時間を共にした結果、身に沁みて理解している。とっとと通話を切った方が得策だと理解していても、聞かなければ損することも起こり得る。僕の無言を許可ととらえたのか、アベンチュリンはいつものように軽快に話を切り出した。
「この間のピノコニーでさ、博識な友人と二人で夢境のバーでお酒を飲んだんだよ。随分と世話になった相手だし、一杯奢ろうと思って。あ、今度の相手は女性じゃない。男だよ。君が想像している人物で合ってる」
「
…………
」
「珍しく、彼は結構酔っ払ってたんだ。ピノコニーの夢境のバーって洒落た名前のカクテルも多いじゃない。いわゆる、
情緒的
ロマンティック
ってやつだ。彼が最後に頼んだカクテルは、月の名前が入った『ブルームーン』っていうカクテルだった。水色の綺麗な色をしていてね。酔っ払った彼は独り言のようにブルームーンの逸話を話してた。博識な男だからさ、僕が聞くと何でも教えてくれるんだ。曰く、衛星惑星はだいたい一月の周期で満ち欠けをするのを、昔の人は暦にしたとか。でもその周期が数年に一度狂って、満月が二度現れるような奇跡的な夜があるんだとか。これはそういう奇跡的な名前がつけられた一杯だって、その一杯を僕の飲んでいるキールのグラスに乾杯をして彼は言った。『君と見るこの月は綺麗だ』って」
「
………………
」
「酔っ払ってたし、彼、口が滑ったんだろうね。とはいえ、ずいぶん唐突な文句だなって思ったんだ。だって、月の名前が入ったカクテルを手にしてるとはいえ、室内の星も見えないバーで突然、月の話だよ。無知な僕にとっては、ただの青いカクテルだ。うん、そうだね、ってその時は適当な返事しか返せなかったんだよ。で、まぁその晩は気持ちよく飲んで別れた。ところで、大前提を話すのを忘れてたけど、僕はその博識な友人に好意を持ってる。割と好きだ。割とというか、あわよくばキスしたいなっていう下心もある方の好きだ。でもそういう低俗なことを言うと嫌われそうだなと思って、そのバーでも僕は必死で酒に溺れずに、奥ゆかしい清純な自分を意識して、演じた」
「
…………
!
……
、
…………
」
「君、ちゃんと相槌打ってくれてる? 今すぐ、画面通話に切り替えてやりたいな。──あ、画面通話NGのボタン先に押されてるや、残念。じゃあ、このまま音声だけのラジオを続けるね。で、この仙舟に来て、綺麗な満月を見上げて、そういえばあの博識な友人が言った月ってこれなのかなって思い出した。共感覚ビーコンだと、『月が綺麗だ』は文字通り『月が綺麗だ』と言う意味でしかない。でもこういうのってその惑星の文化の人しか知らない意味ってあるじゃないか。だから、それ以外の意味ってあるのかなって、茶屋とかでいろんな人たちに聞いてみたんだよ。そしたら、とある女性が恥ずかしそうに教えてくれた。それはね、逸話で「愛してる」の意味を持っているんですよって。隣にいる人が特別な人だから、綺麗なものがより綺麗に見える。そんな美しいものを共有し合う、大切な時間。そんな奥ゆかしい、遠回しな愛を表現してるんだって。それでようやく合点が行ったんだ。もしかして、あのバーで彼が言ったのってそういうこと? って」
「
…………
っ、
……
、
…………
。
…………
」
「でも、流石に話を蒸し返すにも今更すぎるし、その場で気づかなかった僕も対外、間抜けだ。その博識な友人の口癖が「バカアホマヌケ」だから、普通に話を振ってもそれで片付けられそうだし、酔っ払っていたことを理由に「そんな記憶はない」とか突っぱねられても悔しいじゃない。だから、この話をどう暴露して、彼の退路を塞いでやろうかって機を伺ってるんだよ。以上、アベンチュリンラジオでした」
どう? 結構、面白かったでしょ。
茶番にも程がある話を口にした男は、揚々と僕にそう言う。気づけば、僕の手元には数えるのもうんざりするほどのプレパラートの欠片の墓場が積み上がっている。この男の喧しいラジオのせいで何枚、哀れなプレパラートが生まれてしまったことか。僕は研究続行を諦めて、顕微鏡から目を離した。
「
……
謀ったな」
僕はなんとか言葉を捻り出して、彼にそう言ってやる。
画面通話に切り替えなくても、子憎たらしいにやついたギャンブラーの顔が透けて見えた。
おそらく、彼は仙舟に訪れて、僕がピノコニーで酔っ払った勢いでつい口を滑らせた発言の意味にようやく気づいた。けれど、僕がその発言に知らないふりをすれば終わりだ。何せ、僕はただ月の名称がつけられたカクテルを褒めただけだと言い逃げることは十分できた。その退路を塞ぐために、くだらない女性社員との話を振って、僕に知識を先に喋らせたのだ。僕の問いにギャンブラーはのらりくらりと発言を交わす。
「まさか。その博識な友人が思っているよりロマンティックな人間だったって話をしたかっただけだよ。随分と可愛い男だと思わない?」
「思わない。まぬけな凡人だ」
「そう。愚かにも愛を口に滑らせた男と、その愛に気づくのにずいぶん時間がかかってしまった男。そんなまぬけな凡人同士の勝負だ。賭けてみて良かったよ。僕の勝ちだ」
僕、勝つ勝負しかしない人間だから。
愛を確かめるのにずいぶんと臆病に遠回りしたくせにそう勝ち気に嘯く男に、僕は呆れながら問いかける。
「
……
君、週末の予定は?」
「もちろん空いてるよ、
教授
ダーリン
」
「気持ち悪い呼び方をするな」
「あはは」
はしゃいだ男の浮かれた笑い声が響く。
どうしよう、いまなら浮かれて月まで飛べちゃうかも。
そんな酒でも飲んでいるかのような浮かれたことをいうアベンチュリンに僕は溜息をついた。
僕は彼の嬉しそうな声を耳にしながら、いくつか星間列車で行けそうな仙舟の夜空に浮かぶ月のような衛星惑星が浮かぶ惑星の候補を脳内で羅列する。好いた男が言うのなら、本当に月まで連れて行ってやろうじゃないか。恋する人間が盲目なのは、共感覚ビーコンで訳さなくてもれっきとした事実だ。こんな哀れな凡人に愛を告げられて月まで飛べそうなんてはしゃいで浮かれる男の方が、よほど可愛いなと思った。
(fly me to the moon)
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