多分、かばわれた。気付いたら手を引かれていて、らしくもなくぎゅうと抱きかかえられて。どうしたの、なんて聞こうとしたときには、達希の顔はすっかり苦痛に歪んでいた。
達希の姿勢がぐらりと崩れて、こちらに、一気に体重がかかってきて、支えることはできなくて、どうにか地面に転がして。それで、ようやっと、赤が見えた。
見慣れた、血液の、命の色だった。
なんで、どうして、いつの間に。気付けば、周囲は酷い騒音に包まれていた。悲鳴、怒声、走る音、救急車を、と叫ぶ声。混乱で状況の整理ができなかった。それでも、手は、身体は、染みついた動作を試みる。
鞄に入れっぱなしだった上着を引っ張り出す。傷口に当てる。強く圧迫する。それでも、血液は止まらない。命が、溢れていく。
「たつき、」
自分の口から溢れる声は、自分らしくない、と自分でも思うぐらいには弱々しいものだった。
「たつき」
返事はない。いつもなら、「どうしたの」って言って、こちらを見て、名前を呼んでくれるのに。
「たつき」
いつからかトレードマークとして身に着けるようになったサングラスは、いつの間にか地面に落ちていた。けれど、その瞼は開かれない。緑色は、見えない。
「たつき」
上着は、いつの間にか赤く染まっていた。
それは元々、達希におすすめされて買ったものだった。もっともっと淡い色をしたものだった。
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