kotokoto__0118
2024-09-22 02:20:20
597文字
Public 救世主
 

温度

救世主自陣 ネタバレはない
たぶんない? あるかもしれないIF

 多分、かばわれた。気付いたら手を引かれていて、らしくもなくぎゅうと抱きかかえられて。どうしたの、なんて聞こうとしたときには、達希の顔はすっかり苦痛に歪んでいた。
 達希の姿勢がぐらりと崩れて、こちらに、一気に体重がかかってきて、支えることはできなくて、どうにか地面に転がして。それで、ようやっと、赤が見えた。
 見慣れた、血液の、命の色だった。

 なんで、どうして、いつの間に。気付けば、周囲は酷い騒音に包まれていた。悲鳴、怒声、走る音、救急車を、と叫ぶ声。混乱で状況の整理ができなかった。それでも、手は、身体は、染みついた動作を試みる。
 鞄に入れっぱなしだった上着を引っ張り出す。傷口に当てる。強く圧迫する。それでも、血液は止まらない。命が、溢れていく。

「たつき、」

 自分の口から溢れる声は、自分らしくない、と自分でも思うぐらいには弱々しいものだった。

「たつき」

 返事はない。いつもなら、「どうしたの」って言って、こちらを見て、名前を呼んでくれるのに。

「たつき」

 いつからかトレードマークとして身に着けるようになったサングラスは、いつの間にか地面に落ちていた。けれど、その瞼は開かれない。緑色は、見えない。

「たつき」

 上着は、いつの間にか赤く染まっていた。

 それは元々、達希におすすめされて買ったものだった。もっともっと淡い色をしたものだった。