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溶けかけ。
2024-09-20 21:48:35
1555文字
Public
ほぼ日刊
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初めてのキミへ
弊ワットの最高戦力の一角に感謝を伝えたい!!という気持ちで書きました。
クロリンデとフリーナのお話です。
「クロリンデ、お誕生日おめでとう!」
「あぁ、ありがとう」
マレショーセ・ファントムの面々に、ヌヴィレット、旅人、ナヴィア、その他大勢。色鮮やかな人々に囲まれているのは、紫紺を纏った美しい人。
普段は近付き難い雰囲気を持つ彼女は、今は目元を和らげて、周囲からの祝いの言葉に耳を傾けている。時折、上品に笑う姿は無敗の決闘代理人と彼女が同一人物だと結びつける方が難しい。現に、今年入ったばかりの職員の何人かは目を剥いてこの光景に見入っている。
「
……
っ!」
クロリンデと目が合った。そこからの記憶は曖昧で、気がつけば、パレ・メルモニアの外にいて、道行く人々が何事かとこちらを見ていた。呼吸を整えて何もなかったかのように歩き出す。ああ、今年は直接おめでとうと言いたかったのにな、とほんの僅かな後悔を抱えながら。
「フリーナ様?」
人垣の向こうから視線を感じてそちらへ顔を向ける。視線、とはいえ、嫌なものではない。敵意はなく、寧ろ、よく知っている気配にクロリンデは思わずその名を呼んだ。
視線の主が息を呑み、次いで走り去る足音がざわめきの中でも大きく聞こえた。
「どうかした? クロリンデ?」
ナヴィアがクロリンデに問いかける。フリーナのことを伝えるべきか逡巡し、やがて緩やかに首を振る。
「いや、なんでもない。私の気のせいだったようだ」
「そう?」
首を傾げたナヴィアは一先ず、クロリンデの言を信じることにしたようで、笑顔を浮かべながら人の輪へと戻っていく。不意に眉を少し寄せて困ったような顔をしているヌヴィレットと目が合った。その表情は手のかかる娘を持つ父親のようで、失礼だが少しだけ面白かった。
「フリーナ様」
「うわっ!? って、なんだクロリンデか
……
驚かせないでくれよ」
ナヴィアと棘薔薇の会が中心となって準備したパーティー会場でクロリンデは目的の人物を見つけて声をかけた。
目的の人物
――
フリーナはグラスを片手に壁の華をしていた。以前のように静かに後ろに控えれば、彼女が何故ここを選んだのかがはっきりと分かった。
「
……
よく見えますね」
「ふふっ
……
だろう? みんなが楽しそうでなによりだ」
フリーナとクロリンデがいる場所は、会場がよく見渡せるが、会場からはこちらの姿が見えない特別な場所だった。テーブルと椅子が一組しか設置されていないことから、元々、彼女のために用意されていた席なのだろう。クロリンデの誕生を祝いに来た者の中には、彼女へ複雑な想いを抱いているものも少なからずいるため、フリーナとナヴィア、双方の気遣いなのであろうことは容易に想像できた。
「祝いの場に水を差すわけにはいかないからね」
「そう
……
ですか
……
」
フリーナはクロリンデに向き直ると深呼吸をして、手の上に載った小さな箱を掲げた。
「初めての友達に何を渡したらいいか分からなかったんだ。だから、君の好みかは分からないんだけど
……
受け取ってくれたら嬉しいな。誕生日おめでとう、クロリンデ。僕をあの部屋から連れ出してくれてありがとう」
緊張した面持ちで告げるフリーナにクロリンデは微笑みを返す。護衛と護衛対象、決闘代理人と国の神、そして、新たな友人。君たちを興醒めさせてしまうかも、と怯えた表情をしていた元神様は共にお茶をして、笑い合う良き
友
・
人
・
になった。
「ありがとうございます、フリーナ様。今度は私にもお祝いさせてください」
クロリンデの言葉にきょとんとした顔をするフリーナ。やがて、言葉の意味を理解したのか、花が綻ぶような笑みを浮かべた。
「じゃあ、その日の予定は空けておかなくてはね。大切な友人が祝ってくれるなんてこの上ない贅沢だ」
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