著者: 雷歌/らいと
2018-02-14 19:51:22
1083文字
Public 戦セバシリーズ
 

双子の魂、魔法使いに拾われる。

「執事セバスチャンの職業事情」のユーゼフ氏と双子に関しての話。

「おや……?」

夜の散歩に出ていると、黒いもやを見つけた。ふわふわと、もしかしたらふらふらと飛んでいる。
もやには二つの明るい光のようなものが見えた。
悪さをするようなものでもない。放っておいても自然消滅するだろう。
それでも気になってしまったのは、ひとつの媒体にふたつの魂が入っているからだ。
しばらく見つめてみても、どこか行きたい場所があるわけではないのだろう。右に左にと、ふわふわ、ふらふら飛んでいる。

「魔のものか、それとも……生まれそこなったかな……?」

ひとつのからだにふたつのたましい。
今の時代、そのような状態では生れ落ちるのは難しいだろう。無事に生まれたとしても、迎え入れてくれるかどうか。
近づいてみても逃げる様子はない。善も悪も判別がつかないのだろう。

「僕が、拾ってあげようか?」

ずいぶんと卑怯な聞き方である。
いつかの時に何か言われても選んだのは君たちだ、と言えるように。自分に責任が及ばないような。
もやは相変わらずふわふわとふらふらと、それでも僕のほうへ近づいて、トン、と触れたような気がした。

「そう。良いよ。酸いも甘いも、表も裏も、そして闇も教えてあげよう」

まるで大事なものを持ち上げるように両手ですくいあげ、その足を屋敷へと向ける。

「そのままだと不便だから、体を探さないとね」

作ろうとするとどうにもうまくいかないから、なるべく綺麗な、そして双子の体を見つけなければいけない。
なかなか難しいことではあるが、どうにかなるだろう。ツテはいくらでもある。

「うちの使用人がちょうどやめたところだから、ちょうどよかったよ」

そうもやに話しかると、中にある光が少しだけ瞬いたような気がした。





「ご主人様、こちらの件ですが……何か?」

じ、と見られていることに気付いたアルベルトがユーゼフへ視線を向ける。
主が読み終わった本をまとめていたロベルトもアルベルトの声に顔をあげて、兄、ユーゼフという順に視線をやった。

「いや、なんでもないんだけどね……

善も悪も知らなかったもやが、今や主人の仕事も手伝うように育っていた。手伝うどころか、自分たちの判断でお茶目なこともするようになった。けして主人の不利益にならないように。
二人がそろえば、頭の回転はすでにユーゼフの上をいっているのかもしれない。

「頼もしくなったなァ……

ぼそりと。二人に聞こえない程度の声でそう言う。
気紛れで拾ったものだったが、我ながら良い拾い物だったと、ユーゼフはときおり自画自賛するのであった。



end.