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著者: 雷歌/らいと
2017-08-09 01:21:01
2382文字
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バンやろ
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【bnyr / 翼宗】こころの蘇生装置
#翼宗イメージソング企画 様への寄稿
担当イメージソング:東京事変/能動的三分間
すいません、かなりの雰囲気話になってしまいました……。
カチっと音を立ててスイッチがあがった。
湯の沸いたケトルを持ち上げて、慎重に即席カップ麺へと注ぐ。それから、あらかじめ三分で用意していたキッチンタイマーのスタートボタンを押した。
アラームが鳴るまで、何をしようかといつも悩む。
ふと目に付いたゴミ袋には、コンビニ弁当や即席カップ麺の食べ終わった空の容器ばかり。時には外で食べるから、ゴミが溜まるスピードはそんなにはやくない。けれどソレは、いつも独りでいる証明のように思えて、気持ちが暗くなる。
ゴミ袋の口をさっと縛って外へと持っていく。ゴミ置き場にソレを置いてすぐに家へと戻った。
それからタイマーを見る。
後一分。
その一分が長いのだとため息を吐く。何もすることもなくぼんやりと宙を見つめていれば、ようやく、けたたましいアラーム音が三分経ったことを知らせた。
ストップボタンを押してアラーム音を切る。一気に家の中が静かになり、何故か耳が痛いような気がした。
箸と即席カップ麺を持って、テーブルにつく。椅子は四つあれども座るのはいつも一人だ。
「いただきます」
一人では空しいけれどいつもの癖で言う言葉を口にして、即席カップ麺の蓋をべりべりと開けた。
一口、口に運べどもけして食欲増進をしてくれるような味ではない。むしろ、ほぼ味は感じなかった。腹は空いているのだから、後は事務的に箸を動かすだけだ。
美味しいも、美味しくないも、関係ない。
バンドは楽しい。練習もライブも。誰かと一緒に同じ目標に向かって走っている感覚が、生きていると感じさせてくれる。食事よりもよっぽど。
だから、練習やライブが終わった後は少しだけ寂しい。
わいわいと話している三人の少し後ろを歩く。この時間がどれだけ続くのだろう。永遠にと願っても、それが叶わないことぐらい知っている。
ふと、宗介と目線があった。
なあに? と首を傾げれば、なんでもねえと不機嫌そうな表情で返された。
「なあなあコンビニ寄っていいか? 俺、ビッグロマンチョコ買って帰りたいんだ!」
「じゃあ俺も寄ろうかな」
大和の提案に俺が乗る形で、結局四人でコンビニに寄った。
パンにしようかホットスナックにしようかと悩んでいると、珍しく宗介が即席カップ麺の陳列する棚を眺めていることに気付く。
「どした?」
「抹茶風味って、うめえのかと思って」
「まっちゃ
……
」
どういう狙いなのかは分からないが、ときどき即席カップ麺には変り種が登場する。それでも俺はいつもの味を買ってしまうのだけど。
独りで食べるのだ。どの味を買っても変わりはしない。
「試してみるか? 俺が買ってみてもいいけど」
「マズくても全部食うんだろうな?」
「
……
あ、俺が食べるんだ」
まあいいけど、と言って抹茶風味と書かれた即席カップ麺を一つ取った。
それから、変り種の即席カップ麺を宗介とよく食べるようになった。
カチッとスイッチのあがる音で我に返る。
久しぶりの即席カップ麺だから、つい昔のことを思い出してしまったようだ。
ケトルから即席カップ麺へとお湯を注ぐ。
片方は夏をイメージしたエスニック風なもの、もう片方は真っ黒なパッケージのイカ墨が入ったものだ。
内側にある線までしっかりお湯をいれると、蓋を閉じて添付されているテープをしっかり貼る。それからキッチンタイマーのスタートボタンを押した。
二つの即席カップ麺と二膳の箸を、宗介が座っているソファの前にあるローテーブルへ置く。
宗介は新曲の譜面を確認しながら、ギターを爪弾いている。こちらのことには気付いていないらしい。いつものことだ。
あとは飲み物を用意しようと再びキッチンへと向かった。
二つのマグカップに麦茶をそそいで、ふと顔をあげる。ソファに座っている宗介の後姿に自然と口角があがった。
そこに、誰かが居るということがこんなにも心を温かくしてくれるものだっただろうか。
マグカップを二つ持って、そっとその背後に近づく。宗介のつむじを見ながら彼の頬に一つのマグカップをくっつけた。
「んだよ?」
そう言いながら宗介は顔を上に、俺の方に向ける。
ギターを弾くという至福の時間を邪魔されて不機嫌そうな表情に苦笑を浮かべた。
嫌なら続けていいのにと思いながらも、けして無視しないことを知っていてやる俺も性格が悪いのだろう。
誘うように軽く開いている唇へ己の唇で触れれば、多少は機嫌が直ったのかまんざらでもない顔をしている。
「で?」
続きの催促まで来た。けれど、それを邪魔するようにアラームが鳴り響く。
「とりあえずギターは横に置いて、食べよ」
マグカップをローテーブルに置いて、タイマーを止めに三度目のキッチンへ。
ソファに戻れば、言われた通りに宗介はギターをきちんと置いていた。さっさと即席カップ麺の蓋も開けて箸を手に持っている。
俺もすぐに蓋をあけてから、二人でいただきます、と口にした。
一口、口にする。俺のはイカ墨の方だ。ほんのりとした酸味と苦味とで、けして美味しいと言えるものではないが、確かに味がする。
それが嬉しくて、笑みが浮かんでしまう。
「んだよ、気持ち悪ぃ」
口の中のものをきちんと飲み込んでから、口を開く。
「俺さ、宗介と一緒になってから、三分間があっという間に感じるようになった」
「
……
そうか」
「ん」
「翼」
「ん?」
「ひっでぇことになってんぞ」
「は?」
鏡見ろ鏡、と言われてセット用のスタンド鏡を手に顔を見る。
唇が黒くなっているし、口を開ければ口の中もだ。それもこれもイカ墨の所為だろう。
なんだかそれがおかしくて、くつくつと笑う。宗介もおかしそうに笑った。
ああ、俺は今日も生きている。
end
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