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著者: 雷歌/らいと
2017-06-11 02:48:48
2087文字
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その他
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【FWSS】三年の想い、希望
FW3周年2次創作SS企画へ寄せたもの。
「あれから3年経って」
とても短い話なのですが、私はまだ諦めていない、という想いを込めて。
天獄アブダクター“コウシン”が動かなくなってから、軽く息を吐いた。
足元に転がっている、今はもうただのガラクタ
――
と言ってはベアトリーチェに怒られるだろうが
――
を軽く蹴る。
今回も違った。今回も、あの人はいなかった。
苛立たしげに舌打ちをして、とりあえず使えそうな資源回収へと気を向けた。
帰還してから、ガソリンへと向かう。お気に入りのポテチを頼んでつまみながらため息をついた。
「元気がないね、どうしたの?」
後から来たベアトリーチェが気付いて、そう声をかけてくれた。向かいのソファに座って、いつもの可愛らしい笑みを向けてくれている。
父親のチェーザレは少しも笑ってくれないが、笑みを浮かべたらこんな風なのかもしれない、とぼんやり思った。
「こいつさあ、最近ボランティア成功しても嬉しそうじゃないんだよな」
その手に合成モロQを持ちながら、マティアスが隣に座った。
そうかな、と苦笑を浮かべながら返す。
「天罰ボランティアばっか行ってるから、刑期もがんがん減ってるのに」
「や、刑期のために天罰ボランティアばかり受けてるわけじゃなくて
……
」
刑期をゼロにしたところで、本当の自由は手に入らない。
サイモンの口振りからしても、天獄をどうにかしないといけないのだろう。だがその方法がわからない。
せめて天獄へ行ける方法があれば、さっさと会いに行けるのに。
「天罰でさ、もしかしたら来るかもしれないから
……
シルヴィアとか」
それに、と続けて口を閉ざす。
ウーヴェは気にしていないという。その他の仲間たちも、あり得ない事ではないからと、納得している素振りを見せる。
けれどあれ以来、その名を自ら口にする者はいなかった。
「カルロスも」
一瞬、三人の間で静寂が訪れる。それを破ったのはマティアスだ。
頭をかきながら、不思議そうな表情を浮かべた。
「シルヴィアは、まあ分かるとして。なんでカルロスなんだよ」
「皆は気にしてないって言ってるけど、私は
……
許してないよ」
最後の言葉に力を込める。
もともと同じPTではないから、裏切られたという心情を持つのは間違いかもしれない。けれど、それでも。
「私はさ、あの時、酷く動揺した。背後から刺されたことも実は天獄の人間だったことも、もちろんそうだけど、それだけじゃなくて」
動揺しながらも、ただ仲間の危険だけは分かって、その後の行動は起こせた。
けれど一人になると、とたんに体が震えた。仲間をロストした時にさえも流したことない涙が溢れた。
――
そうか、悲しいのか。
飄々としているカルロスは、この牢国にあっても自由に生きているように見えた。本当とも嘘とも分からない巧みな会話技術や高い戦闘技術。話していて楽しかったし、学ぶ点も多かった。
憧れだった。
カルロスに懐いている私を見て、ウーヴェは冗談めかして気をつけろと言ったことがあるけれど、もしかしたらこういう事態を想定していたのかもしれない。
違うPTなら、いずれ対立することもあっただろうから。
ホウライPTから帰ってカルロスのことをウーヴェに聞いたとき、むしろ心配されたのは私だった。
気付いていたのかもしれない。私からカルロスに向ける感情が、本当はどういうものだったのか。
「好き、だったみたい」
今も好きなのかどうかはわからない。会ってみればそれがわかるかもしれないと思って、わずかな可能性にかけて天罰ボランティアばかり行っているだけだ。
私の発した言葉に、マティアスもベアトリーチェも目を見開く。
それはそうだ。今までそんな素振りを見せたことないのだから。
「それで、会いたいってことか」
「うん
……
ついでに、刺されたお礼もしたいね」
「お、お礼?」
「やられっぱなしなのは性に会わないからさ。会うまでにもっと強くなっておかないと」
サイモンからの報酬もあり、それなりに強くなったつもりだ。けれど、天獄アブダクターにまだ苦労することもある。だから、まだ足りないのだろう。サイモンから具体的な指示がこないのも、まだ力が足りないから。
「まだ強くなるつもりかよ」
「ああ、もちろん皆も一緒に強くなってもらいますケド」
「そうね。もし天獄が本気出してきたら、ホウライのようになってしまうかもしれないし」
「確かになー」
あれから三年。
マティアスやベアトリーチェにずっと思っていたことを話せたのは、ようやく自分の中で整理がついたからなのかもしれない。
乾いた空気の匂い。風が吹けば砂埃が容赦なく口の中に入ってくる。
パノプティコンの建物の方が快適だろうが、私はこの外の空気が好きだ。
空気の切る音が聞こえて飛び退く。
地響きとともに天獄アブダクター“コウシン”が地に降り立った。
その背を見やるも、やはりカルロスは乗っていない。
「まったく。毎度毎度相手してあげてるんだから、手土産のひとつやふたつ欲しいんだけどな!」
茨を打ち込んで、地を蹴った。
強くなろう。貴方に会える、その日を希望に。
end
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