著者: 雷歌/らいと
2016-10-31 22:36:15
3317文字
Public 戦セバシリーズ
 

【デイB】ハッピーハロウィン?

現代なのかよくわからないどっかの時代のパロ、悪魔デイビッドさんとBくんのお話(出会い止まり)
名前有りのオリキャラ出演とハロウィンの特殊設定ありです。

10月31日、ハロウィンと呼ばれるその日は、特殊な日である。
Bの住む街では、供物とされる菓子類を街中にばらまき、人々は仮装をする。その仮装には、ひとつだけ決まりごとがある。

必ず、顔の全面もしくは一部が隠れていること。

Bも、その日は仮装の用意をしていた。
派手なのはあまりしたくないので、地味で目立たないような黒い法衣の聖職者の格好だ。
しかし、肝心の仮面は不注意で壊してしまっていた。
思わず手を滑らせてしまい、床に落とした上にそれを踏んでしまったのだ。
幼馴染との約束の時間に間に合わないからと慌てていたのが仇になった。
割れた仮面を手に、困ったように眉を寄せる。

……まあ、いいか」

Bはそうつぶやいて、割れた仮面をテーブルに置いてから外へと出た。

決まりごとを破ったとしても、ペナルティがあるわけではないのだ。
それに、小さい頃は仮面を嫌がってつけなかったこともある。仮面は、そして仮面をする理由のひとつであるいわれは、このお祭りを盛り上げるための要素なのだろう。
そう、Bは考えて駆け足で家を出た。

「悪い、遅れた!」

待ち合わせ場所には、幼馴染であるロマンがすでに来ていた。
Bと並んでも可笑しくないようにと、ロマンは吸血鬼の格好をしている。
そこに、やはり顔上部のみを隠す仮面。

「おー……って、B、お前仮面は?」
「家出る前に、割っちゃって」

苦笑しながら言えば、ロマンは眉を寄せて言う。

「大丈夫か?」
「なにが」
「いや、ほら、仮面するいわれって、あれだろ。街にまぎれこむ悪魔や妖精のたぐいに、魂を見られないためって」
「ただの御伽噺だろ? まだ小さいころに仮面しなかった日があるし」
「魂を気に入られたら、あっちの世界に連れてかれるってことだから、その時は気に入られなかったんじゃない?」
「その時に気に入られなかったんなら、今でも変わらないだろ。ほら、さっさと行くぞ」

そう言って、ロマンの腕を引いて目的の場所へと向かう。
いろんな屋台も出ており、気温も下がってきている季節なため、暖かい飲み物――もちろんお酒類も――を出すところもある。
地元だけではなく、少し離れた地の珍しい料理も出店されているため、そういうのを巡るだけでも楽しい。

何かのコスプレのような格好だけでなく、オリジナルの衣装を用意して来ている人も多い。いつもと雰囲気の違う街は、どこか異様で、確かにそこに異形の何かが紛れ込んでいても分からなさそうだ。

飲食スペースでハロウィン仕様のジョッキを手にビールを飲んでいると、ふとBは視線を感じた。
辺りを見回しても、視線がかちあうような相手は見つからない。

「どうしたー?」
「いや……

なんでもない、とロマンに返している間も視線は確かに感じる。
こちらを見ているだけではなく、何か体にまとわりついているような、そんな視線だ。ぞわぞわと鳥肌が立つのが気持ち悪くて、思わず腕をさする。
そんなBに、ロマンは首を傾いだ。

「風邪でも引いた?」
「いや、そうじゃないけど……悪い、先に帰るわ」
「送ってこうか?」
「へーきへーき。また埋め合わせは今度な」

気をつけてな、というロマンの声を背にBは帰途へ着いた。

二人のいたところから少し離れたところ。
腕を組んで二人を見つめていた青年が口角を持ち上げる。
その青年は、Bと同じく仮面をつけておらず、ただ真っ黒な衣装に包まれている。
大胆に胸元を広げた黒のシャツに、ところどころ破けたように見えるパンツは、このハロウィンという状況に相まって不自然に見えない。

Bの姿が見えなくなると、青年はゆっくりと歩き出した。





家に戻ると、Bは大きく息を吐き出す。
一人暮らし用の家は、壁は確かに薄いのだが、まるで外とは別世界のようだ。
帰宅中に視線は途中から感じなくなった。気のせいだったのかもしれない。

衣装をくつろげながら、もう今日は寝てしまおうかとベッドへ向かっているとき、ふと妙な違和感を得て顔をあげた。

「え……?」

部屋の奥、窓の横に青年が一人立っている。
それは、さきほどBとロマンを見ていた青年だ。
明るい髪の毛が、黒の服装に映える。

「だ、誰?」

思わずBは後ずさっていた。目線をはずさずに、じりじりと後ろへ移動する。やがて背に壁があたる感覚を得て、目の前の青年を睨みつけた。
青年は柔和な笑みを浮かべる。

「はじめまして」
……はあ」

敵意は感じられない。それどころか、人のような気配も感じないのだが。

「俺はヴォルスト様配下、デイビッドという」
「ええと……
「ああ、ヴォルスト様ってのは、あれだ、七つの大罪でいう色欲にあたる大悪魔の名前でな」
「あ、悪魔……?」

笑顔でさらっと信じられないことを言う。
嘘を言っているかどうかは分からないが、怪しいことを言う以上は信じることは出来ない。
そもそもどうやって家へ入ったのか。戸締りはきちんとする方だし、この家は3階にある。窓から入ることも、通常の人間ならできないはずだ。
雰囲気からして空き巣などの泥棒目的のようにも見えない。

「あの、とりあえず、うちから出てってもらえますか」
「えっ、なんで?」
「なんでって、不法侵入ですけど」
「え、でも、誘ったのは君だよな?」
「は?」
「外で、仮面をつけてなかった。それってつまり、見初めたら連れてっていいってことだぞ?」
「はあ?」
「知らなかったのか?」

デイビッドの言う言葉は、ロマンが語った、Bが迷信だと言ったあの話と似ている。
それとも、この目の前の青年は、そういう迷信を盾に人攫いでもしようというのだろうか。

「あの、さっきから何を言ってるのか」
「あ。悪魔って信じてもらえてない?」
「ええ、まあ……
「じゃあ、これならどうだ?」

そう言って指をならすと、頭に青い炎が勢いよく二つともり、消えた。
その後には、黒く光るうねった角が2本生えている。

「マジックでもなんでもないぞー。とれないからな、触ってみるか?」

頭をこちらに向けて申し出てくれたが、やんわりと断った。

「よし、じゃあ信じてもらえた所で」

にっこり、デイビッドは笑みを深くして、それなりにあったBとの距離を一気に詰めた。
歩いた様子は見られない、消えて、現れたのだ。Bの目の前に。
思わず身を引いたが、すでに背後は壁である。逃げられない。
そして、ふわりと甘い香りが鼻腔をくすぐる。香水かなにかだろうか。

「きみを、俺のお嫁さんにしたいんだ」
「え?」
「見た目は申し分ないし、その魂もきらきらしてすごく美味しそうだし」
「いや、えっと、その、性別的な問題は?」
「ないな!」

はっきりとそう言われ、Bは何も言えなくなる。
いや、言い返したいことはいろいろとあるのだが、頭がうまく働かない。

(なんだ……ぼんやりする)

思わず顔を歪めると、デイビッドが、ああ、と声を漏らした。

「いきなり直は、きついかもな」
「なに……?」
「言ったろ? ヴォルスト様は色欲。その配下もその力を得る。つまり、俺から香る甘いそれは、そういうものなんだ」

Bの髪に指をすべらせながら、楽しげにそんなことを言う。
一房持ち上げて、そこに口付けを落とした。
直接肌に触れられたわけでもないのに、びくりと肩が揺れ動く。
へたり込みそうになるのを、デイビッドがBの腰に腕を回して引き寄せた。
甘い匂いが、より強く香る。

「このままシてもいいんだけどなー。まずは……きみの名前を教えてくれ」

悪魔とは思えないほど明るい笑顔に、眩暈を覚える。
ただ確実に体が熱をはらみ始めているのを感じて、Bはそれをどうにかしたくて。
働かない頭のまま、熱に浮かされるように自分の名前を口にする。
名前を聞いたデイビッドは、にたり、と笑みを変化させた。





翌日、目が覚めたBは、やたらと疲労を蓄積した体と隣に眠る青年の顔に、昨日のことが夢ではなかったことに頭を抱えたのであった。



end.