えぬを
Public TGM
 

HoneyTrap

以前呟いた小ネタルスマヴェSS。
デキてから数十年後、マヴ退役済み&ルスが将官に就いてていろんなあれやこれやでじじマヴがハニトラするネタ。
ほんと書きたいとこだけ。
じじマヴ絶対キュート。

執務室のブラインドは全て下ろした。陽の光を照り返すプラチナヘアのキラキラした光を見るのが一等好きなルースターからすれば、大層不満だったけれど、致し方ない。
少し袖の余るカーディガンは、3年前にプレゼントしたカシミアだ。新しいものへの買い替えを薦めても、マーヴェリックは首を縦に振らなかった。
──お前からのプレゼントだ。もう少し着たいよ。
随分とそのカーディガンを気に入ってくれているらしいマーヴェリックは、新しいものを贈られることよりも、数年前に比べ体型が細くなった事実に対しての、年月を大切にしている様子だった。その行動の真意がルースターと過ごした時間との思い出を大切にしてくれているのだと理解してはいる。
重ねた年数分過剰に年老いた風を装って、マーヴェリックはルースターを翻弄する。それでいながら、マーヴェリックの記憶力は抜群で、セルフォンの向こうの相手との思い出話をスラスラと紡いでいく。
「『だって君には若い頃から世話になっていたし……食事の後? あぁ、構わないよ、僕のパートナーはその日確か1000km先の基地で会議なので』」
あの時はこうで君ははあれで、僕はこうだったね、というセリフの一つ一つが甘く湿っていた。意図しているのかいないのか。後者なのだろうけれど、それこそ余計にタチが悪い。それ以上にルースターが気に入らないのはマーヴェリックの会話の相手だ。
ルースターは額に血管を浮かび上がらせながらも、執務机に両肘をついてその上に顎を乗せ、辛抱強く会話の内容を聴き続けた。マーヴェリックはスピーカーをオンにしていたので、会話の相手の弾んだ声色にも虫唾が走る。
そんなルースターの様子にとうに気づいているマーヴェリックは、会話を続けながらルースターに近づいてくる。執務椅子に腰掛けたルースターの横手に回り、背に手をかけて、ぐるりと回転させる。
男盛りのルースターは若い頃に比べ、体重も増え、筋肉もみっしりと詰まっている。内勤も増えてきた現職位のせいでもある体重の増加分をものともせず、マーヴェリックはルースターを安易と執務机から遠のけると、こめかみに血管を浮かせたままのルースターの膝にそのまろい尻を載せた。ため息をついて、ルースターはその腰ごとマーヴェリックを引き寄せて、膝に座らせる。
セルフォン越しの会話を続けるマーヴェリックの腰を支え、そのまま軽く背中を愛撫する仕草にマーヴェリックが笑う。
マーヴェリックはルースターの眉間に深く刻まれた皺を揉んでから指の背で頬を撫で、そのまま気に入りの口髭を弄る。
「『じゃぁ2日後に。僕も久しぶりに会えるのが楽しみだよ、〝サー〟』」
甘い声で囁いてから、マーヴェリックは通話を終了させた。
「取り付けたぞ、約束」
マーヴェリックの言葉に、ルースターは長く長く息を吐いて、怒りに満ち満ちた自身を宥める。
そうして眼前のマーヴェリックを両腕に囲い、カーディガンのボタンの間に鼻をねじ込むようにして顔を押し付けた。堪能するように息を吸ってマーヴェリックの存在を確かめる。頭上からの〝くすぐったい〟という声を無視して尚も強く抱きしめた。
……ごめんね。あいつを基地の執務室から離して、不正の証拠を探す話しになったら獲物で釣るのが一番だって。そしたらマーヴがいいって満場一致。嫌な過去思い出せるようなことさせて本当にごめん」
マーヴェリックが誘い出した官職は、とある基地で横領の疑義ある将官だ。同基地のルースターの同期である友人からの協力要請を受け、基地の数名と警察関係者とで証拠探しに奔走している。
ルースターの同期の友人が、幾度か鎌をかけて確たる証拠を引き出そうとするも、なかなか尻尾を出さない件の将官に対しての新たな策の提案。どうやら執務室内にある将官のPCに、あらゆる証拠ありと判断したルースターの同期からの懇願だった。
『過去、あのファッキン中将が夢中になったピート・〝マーヴェリック〟・ミッチェルが、久しぶりに会いたいなんて懇願してみろ。イチコロだろ。だから頼むよブラッドショー准将』
友人の言葉がルースターの脳内で再生される。渋るルースターを説得し、餌になることを厭わなかったのは他ならぬマーヴェリック自身だった。
過去、上官だったマーヴェリックに熱を上げていたことを逆手に取る、所謂ハニートラップだが、当然のごとく、ルースターは自分の伴侶──マーヴェリック──をそんな役目に引っ張り出す気はなかった。
「眉間の皺が取れないな。癖になるぞ? なぁ、ルースター、ルー、ブラッド。これが一番手っ取り早いし効率的だろう?」
……あなたそういうとこ昔から変わらないけど潔いっていうかなんていうか」
「僕はお前の役に立てて嬉しい」
「でも嫌だ」
立派な髭、刻まれた皺、最近はプラチナも混ざるブラッドリー・〝ルースター〟・ブラッドショー准将がマーヴェリックを抱きしめ、胸元に顔を埋めたまま嫌々をする。ブラッド坊やを思い出させるようなその仕草に、マーヴェリックは一瞬だけ決意が鈍る。
年経た分だけ賢しく、甘え方をその都度で変化させ、マーヴェリックの弱いところをあらゆる意味で熟知しているこのパートナーは、どれほどに男ぶりが上がり、この先今よりも上の地位に就いたとしても、きっとマーヴェリックにとっての一等愛しい〝坊や〟であるに違いない。
溢れる愛しさにわずかな呆れとやっぱり嬉しさと。少しも心配するようなことなどないと言ってやるのは容易いが、マーヴェリックはもうこの年下の伴侶への甘え方を知っている。
「ぼうや、なるべく早く証拠を見つけて僕を迎えに来ておくれ。お前を疎かにしてもいい伴侶だと、一瞬でもあいつに思わせるのは嫌だ」
「あぁもう。そんなこと言われたら頑張らざるを得ないじゃん」
そう言ってルースターは、膝に座らせているせいで、いつもより高い位置にあるマーヴェリックの唇に口付けた。
「マイサー、マッハで済ませてくるからご褒美くださいね」
ルースターが胸元の略綬を戯れに指し示すのに、マーヴェリックは笑った。