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倉木
2024-09-18 19:02:51
3510文字
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他🐢
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スパークサンプル②SPFTブロマンス
タイトル「Deep Descent」
SPFT(スプ運)ブロマンス 文庫本70P
メイン軸は原色ですが全員それなりに出てます、全体的に湿っぽい。
・本編2~3周間の話なので多少のネタバレ含みます(本編には極力触れてません)
・以下表現が含まれます:流血表現、欠損描写、自死表現
殊更強く拳を叩きつけるとスパークリング用のサンドバックは大きく傾いだ。跳ね返る質量を肩で受け止める。
一度動きを止めたことで吹き出た汗にラファエロは握っていた拳を解いた。
汗ばんだその手は過去の戦闘と修行と、ちょっとの喧嘩で出来た小さな傷が掌に残っている。
前回の戦闘でラファエロは左腕に大きな傷を負った。
フット団により大きく切り裂かれた腕は熱刀のせいで失血することはなかったものの痛みは凄まじく、叫び声は喉を傷める程だった。
それなのによくわからないポータルを通ったらそんな怪我などなかったかのように元通り。
摩ればまだ仮初の痛みに顔を顰め、綺麗な自分の腕に違和感すら覚える。
感覚はあるのにまるで継ぎ接ぎされた自分のものではないようだ。
そう思って眺めていたら気分が悪くなってきて、ラファエロは一度トレーニングを引き上げることにした。
広場に戻ると騒がしいミケランジェロの笑い声が響く。
メタルヘッドに何かと話しかけながらいつものようにゲームをしていて、その姿は昨晩のあのしょぼくれた態度は消え失せていた。
その奥で耳障りな金属音が鳴り続けている。おそらくドナテロが何かしているのだ。
「あら、もう休憩?ラファエロ」
コーヒーカップを片手にエイプリルが声をかけてきた。
「ああ、まぁな」
「ほどほどにね」
そう微笑む姿になんとなく自分の心情を見透かされている気がする。
なんとなくいたたまれなくて足早にその横を通ろうとしたら、他でもないエイプリルに止められた。
人差し指が指した向こう、その先は本来なら父が寛ぐ憩いの間で今は大きく抉られた痕になっている場所だ。
今まではこの家の中で一番家族が集まっていたのに、今はその温かさだけをもぎ取られ空虚さが漂っている。
「今レオが居るの。少しだけ時間をあげてね」
父であるスプリンターは今ここには居ない。
しかしいない筈の父が魂だけ転移して少しだけ会話ができる。
今の自分の心情を吐露できる相手はスプリンターが一番適任で、できれば教えを請いたい。
会えて嬉しい気持ちと、そこに実体がない歯がゆさとで気持ちがいっぱいいっぱい。
初めてそのことに気付いた時、喜びより先にどんな仕組みかとドナテロが興味津々で乗り出したものだから、苛々して後頭部を殴りつけたんだったか。
聞きたいのは自分の不甲斐なさへの懺悔と、恐らく気落ちしているであろう兄弟達のことだ。
特にレオナルドは無意味なくらい責任を感じているに違いない。
しかしそんな彼が先にいるのなら、ラファエロも遠慮せざるを得なかった。
エイプリルに頷くと彼女は微笑み背を向けた。
携帯電話を握っていたからケイシーに連絡を試みるつもりなのかもしれない。
再びトレーニングに戻るのも気分ではなく、ラファエロはそのまま近くの壁にもたれて目を瞑る。
特に意味はない、戻るのも億劫だっただけだ。
だから、聞こえたのは本当に偶然だった。
「
……
できれば、誰にも言わないでください」
普段よりずっと沈んだ声。
『誓おう、息子よ』
思わず身を潜めたラファエロだが、そこから先のぼそぼそとした言葉はより一層控え目になり聞き取ることは叶わなかった。
それからしばらくして姿を見せたレオナルドは佇んだラファエロにすぐ気付いたらしい。
一瞬だけ驚いた顔をして、さっと視線を逸らした。
「
………
盗み聞きなんて趣味が悪いな」
「あ?自意識過剰だな、んな聞いちゃいけない話でもしてたのかよ」
ラファエロをじっと見る視線は探っているようにも見え、ラファエロは殊更堂々とした態度で向き合った。
たまたま少し聞こえただけで盗み聞きなんてしたつもりもない。
そんなラファエロに未だ疑っている眼をしていたが、レオナルドは首元をを摩りながら小さく息を吐いた。
「親父に話せて俺等に話せないようなことか?」
ほとんど聞こえていなかったのは事実だ。
だが先ほどから目を合わせようとしないレオナルドは明らかに気落ち程度じゃ済まされないくらい、いつもと違った。
「なぁ、やっぱ何かあったんだろ」
ジンギス率いるフロッグ集団に散々な目に合い、後ろから飛んできたマウサーのレーザーでラファエロは気を失った。
気が付いたらポータルを通る奇妙な感覚と、傷ひとつない自分の身体と兄弟達。
完遂叶わず負けてしまったのだと最後まで意識のあったらしいドナテロが教えてくれた。
しかし同じく最後までいたらしいレオナルドの様子はその時からおかしかったのだ。
いつものように思い悩んでるだけならまだいい。
なんとなく、そうなんとなく昨晩からラファエロが避けられているような、そんな感覚に陥っている。
それが暗に弱いことを責められているように感じていた。
最初に倒れたことを責めるのならそうすればいいのだ、回りくどいやり方は好きじゃない。
「
……
別にそこまで大事な内容じゃない。力不足で負けたから、教えをもらっていただけだ」
そう言いながらレオナルドは相も変わらず視線をさ迷わせたまま。
いつも何かと言い合いになる時に真っすぐに睨んでくるくせに、そんな仕草が余計不振さを募らせていた。
「ほぉ、まあそれでもいいけどよ」
執拗に首筋を摩る手を掴む。
「お前、そんな癖あったか?」
掲げられた手をレオナルドは驚いた顔で見つめていた。
ラファエロと自分の手を交互に視線をさ迷わせる。
「いや、全然気付かなかった
…
」
どこか呆然とした表情に重ねようとした皮肉は終ぞラファエロの口から外に出ることは無かった。
それどころか足早にラファエロから背を向け去っていくレオナルドにかける言葉は見当たらず、見送ることしかできない。
避けられているのはどうやら本人の意図ではなかったらしいが、だからといって何かがあったことは間違いない。
追い縋って怒鳴りつけても良かった。
今までならそれでよかったのかもしれないけど二日後にはまた新しい戦闘が待っている。
中途半端にぎくしゃくさせるのはよくないことくらい、ラファエロにだってわかっていた。
なので少し考え、ラファエロはそのまま煩い音がする方へ足を向ける。
「で、お前はなんでそんな喧しいんだギーク」
雑に転がったアーティファクトの類とよくわからない器具に埋もれたまま、ドナテロはかけていたゴーグルを外した。
手袋の汚れが頬を擦り、黒ずんだ痕が一筋残っている。
「見てわからない?せめて治療道具くらい持ち込めたらいいのに、と思って試行錯誤中だよ」
怪訝そうな顔にわかるわけねえだろ、と内心毒づいた。
口に出さないのはいらない講釈が始まるのを防ぐ為だ。
ポータルを潜ると装備と武具以外身に着けていた物は消失してしまう。
そして何故か帰って来た時に元に戻ってきていた。
何かとガジェットを持ち歩いているドナテロが当初ショックを受けた顔をしていたものだが、案外立ち直りの早い弟は既に抜け道を探しているらしい。
言葉の割に目の前に広がっている中に包帯や消毒液の類がないのが懸念点ではあるのだが。
「なぁ、昨日のことで言ってないこと話せよ」
「なんで僕に聞くの?」
「ドニーも最後までいたんだろ」
「レオから聞き出せなかったんだ」
見てたよ、て言うから苛立ちに舌を打つと動じてない様子でけらけらと笑っていた。
なよっちくてオタクなくせ、案外図太いドナテロにはこれくらいの凄みは一切通じない。
だからってその態度にイラっとしない訳がなく、詰め寄って拳を振り上げると持っていたアーティファクトのひとつを顔面に掲げた。
そんなことして殴れるわけがない、やることがあくどすぎるだろこいつ。
「あのあとすぐに僕も落ちたし、最後に残ってたのはレオだったからね。僕に聞かれてもラフが知り
たいことはわからないよ」
「
………
その割には随分とキてるみたいだからよ」
「どうだろうね、ああなったレオは頑なだし言いだすまで待つ方がいいと思うよ」
ドナテロの言葉はほぼ的を射ていた。
確かにそれはそうだ。でもそのままにしておくわけにはいかないんだとどこかで告げている声がする。
話しは終わりとばかりに作業に戻ったドナテロを見下ろす。
言葉として聞き取れないくらいに何かをぶつぶつと呟きながら、知性を讃えた瞳で考える顔は真剣そのもの。
家にいる間ラファエロにできることは何もないというのに。
この焦燥感はレオナルドを心配してのことだけではない。
今この瞬間何もできない自分への歯がゆさ故だ。
無力さを感じることが何よりも憤る。
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