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らん
2022-04-24 13:50:02
1579文字
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イルマとアメリ
高潔にして冷血、悪魔の中の悪魔。現生徒会長、アザゼル・アメリを人々はそう呼ぶけれど、果たしてそれはいつ付いた異名だったのか。
談話室で初恋メモリーの朗読を終え、ひと休憩としてアメリが手ずから淹れてくれた紅茶と共に茶菓子を食べながらイルマは思案する。
(初対面は、人間だってバレたかな?っていうのもあって怖かったけど
……
)
会うたびに彼女は笑う。話すたびに彼女は表情を変える。野望に対して誠実で、欲に対して忠実だ。
悪魔の中の悪魔、ということに同意こそすれ、冷血という評価とは結びつかなくなってしまった。
「アメリさんはいつから冷血って呼ばれるようになったんですか?」
「それを本人に聞くのか?」
突拍子もないイルマの発言に苦笑しつつ、アメリは記憶を辿っていく。一年生の頃から既にその呼び名は自身にも届くようになっていただろうか。
「おそらく収穫祭あたりから定着したような気もするな。誰が言い出したかは知らんが、躊躇もしなければ容赦も基本しないからじゃないか?」
「自己分析がスゴい
……
」
「自分を理解出来ない悪魔の野望など、誰も見向きもしないだろう」
上手く淹れることのできた紅茶の芳しさを楽しみながら、アメリはイルマを見つめた。
「イルマは、そういう意味では私と真逆だな」
自分の事は理解しきれていない代わりに、他者に対する理解とそれに付随する自己の感情には敏感なのがイルマだ。他者の機微を察する事は、アメリは自己理解が深まってから出来るようになったことなのでイルマの才能は稀有に感じる。
(人間だから、なのだろうか?)
それはひとえに彼の生きた環境から育まれたものだということを知らないアメリは、種族による違いだと思っていたけれど。
「
……
僕、今まで自分のことってあんまり考えたことがなくて。必要なかったというか、邪魔だったんですけど」
何もかもが飽和していた生温い世界の中、イルマだけは受容し、絶望さえ諦めなければ死ぬ世界で生きてきた。その寛容さを保つために無意識に捨てていた自己の感情を、諦め続けた発露を、今ようやく取り戻している最中である。
そしてその発露の一端を担い、標をくれたのが、目の前に居る会長だった。
「アメリさんに出会えて、邪魔なものなんて無かったんだなって思えました」
自己の希薄性を持ってして生まれた歩み方を心酔してくれたアリスに、他者への絶対的寛容を受け入れてくれたクララ。そして、諦めて捨てていた自分の感情と野望を新しく創造してくれた、アメリ。
きっとアメリに出会わなかったら、イルマは今も目立つことを良しとはしていなかっただろう。
「ありがとうございます」
「すべての悪魔の手本となるのが生徒会長だ。私はその役目に尽力しているだけだし、気づけたのはイルマの意思があったからだぞ」
実は、お前は目立ちたがり屋なのだ。
ニヤリと笑うアメリに、イルマも笑みを返す。そうだったんですかね、などと否定しないあたり彼の成長と言えるだろう。
「
……
ワガママでもいいって、前にアメリさんは言いましたよね」
「野望のためなら、勿論」
「じゃあ、僕の次の野望はアメリさんの恋人になることです」
「
……
、
……
ハ?」
高潔にして冷血、悪魔の中の悪魔。それは生徒会長としてのアメリであって、イルマの前のアメリはただひとりの女のコであり、隣に並びたい悪魔だ。
彼女に淹れてもらった紅茶を飲み干すと、イルマはやっぱり笑ったまま宣言する。
「実習先で誰かに取られたりとか死んでも嫌だし、諦めたくもないし、生徒会長じゃない、ただのアメリさんについていく悪魔は沢山いても、隣を歩くのは僕だけがいいので、
……
覚悟しててくださいね!」
それは先に自覚していた私の台詞だ!なんてアメリの言葉は声にならず、ただ覚悟を決めたイルマの笑顔に、彼女は目眩がするのだった。
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