らん
2021-12-21 22:25:20
1422文字
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イルマとアメリ


今なら、許されるだろうか。
好きだとこぼしても、怒られないだろうか。呆れられないだろうか。……本当に?
「あ、あめ、りさん、は」
自分の声が思った以上に震えてる。彼女を戸惑わせてしまうだろうか。それでも、確認したかったんだ。
「アメリさんは、僕のこと、好き、ですか」
顔なんか見れっこない。ひたすらにギュッと瞑った視界は暗いはずなのに、ちらつく光が眩しいくらい。
数秒続く沈黙に耐えきれず、そろりと押し上げた目蓋は、僕の瞳に予想外のものを写した。
「ずるいぞ、イルマ」
アメリさんの顔が、泣きそうな、怒りそうな、そのくせ嬉しそうな、でも、それを上回る悲しさで溢れた曖昧なものでぐちゃぐちゃになっていた。
ひく、飲み込んだ息はカラカラと乾ききっていて、思わず繋いでいた手の力を弱める。それを許さないように、アメリさんは声を鳴らした。
「私の気持ちなんて前から知っているくせに!前に告白した時から、ずっと、ずぅっと、私はイルマが好きだって、それ以外言ったことはないのに!お前の『好き』を、私に言わせるのは卑怯だ!」
ぼろぼろとアメリさんの瞳から涙がこぼれていく。煌めくオレンジトパーズに魅入られて、僕の無自覚な卑怯さを指摘されて、なぜだか僕まで泣きたくなった。
「〜〜っ、卑怯だって思うのに、どうしてこんなにも嬉しいんだ……ッ!」
僕から緩めた手のひらをもう一度しっかりと繋ぐ。痛いくらいに、強く。
ごめんなさい。僕の気持ちは僕のもので、貰い続けたものをもう一度貰って、僕はそれを返さず、言わないまま甘んじようとした。
何度もくれた肯定を、僕が自分で蔑ろにしようとした。
「っアメリさん、ごめんなさい」
……何に対しての?」
鋭い視線は健在だ。何も隠せないな。それさえ心地よいと思うのは、いつからだったか。
「アメリさんに甘えて、自分の感情を発さずに分からせようとしました。……ごめんなさい、僕、こんな気持ちはじめてで、……こわく、て、」
離れない確証が欲しかった。怒られない感情だと思いたかった。呆れられないモノだと信じたかった。
だから、アメリさんが察することに頼った。
「すきです、アメリさん」
もしもこの感情が、拒否されたら。
(ああ、アメリさんは、この恐怖をひとかけらも僕に感じさせずに、ずっと好きだと言ってくれてたんだな)
それさえも、今の僕にとっては愛しい。愛しくて、こわくて、欲しい。
「すき、です。……ごめんなさい、好きなんです」
どうしようもないくらいに好きになってしまった。誰にも僕と同じ好きをあげないでほしくなってしまった。
その感情を閉じ込められるなら、きっと僕は頑張れてしまう。アメリさんの好きが欲しいという欲が、溢れてやまない。
「好きです」
みっともない告白だった。ロマンスの欠片もなかった。初恋メモリーみたいには上手くいかないや。
どこが好きで、なにが良くて、そんな理由なんか言えもしない。ただ好きでどうしようもなくて、そして、この感情を拒否されたくなかった。
どれだけ我儘で卑怯なんだろう?失笑と共に僕もいつの間にか泣いていて、止まらない涙を無理矢理に拭う。
……鈴木入間、」
私も、イルマが好きだ。謝る必要なんかどこにもないんだ。
泣きながらアメリさんが笑っている。触れた指先が絡まって、僕の冷えた指先がアメリさんの体温でほどけて、同じ熱さになる。
赦された感情の名前を、僕はようやく恋だと知った。