らん
2021-11-10 22:14:02
822文字
Public
 

入間とアメリ


※付き合ってる

イルマの掌は、存外に冷たい。その笑顔や野心と同じように温くて熱いと思っていたけれど、彼の身体は冷えていることを、付き合いだしてはじめて知った。
しゃがみこんだ私に覆いかぶさって何度も唇を奪っていくイルマのそれも、やはり私のものより冷えている。
「チクショウ」
普段のお前なら言わないだろうな。悪周期のイルマはいつだって不遜で、そして、ネガティブな思考に素直だ。普段のイルマが無意識的に抑えているものを発散させているのだと思うと、不器用だと感じるけれど。
……泣くな、イルマ」
意思と反して溢れているのだろう、イルマの頬を伝う雫だけはやけに熱い。泣くな、泣くなよ、イルマ。私まで泣いてしまうだろう?
「イルマ、」
絶対に私は忘れないよ。きっと、お前を慕っていた奴等も。
魔王のようにお前は語り継がれていく。もしかしたら魔王もお前のように人間だったのかもしれないな。記憶を消して帰ったのか、それとも寿命を迎えたのかなんて、今考えるのは不敬だろうか。
ともかく私がするべきは泣き続けるイルマをあやすこと。悪周期になるほど抱えたストレスと感傷を癒やす術を、私はこれしか持ち合わせていなかった。
「鈴木入間、お前が何者でも、私はイルマが好きだ」
冷えた掌は私の体温で温めてやれる。切れそうな唇は私の舌と涙で濡らしてやる。お前の目からこぼれる色のない血は私が飲み干してやろう。それでも不安なら、何度だって紡ぐ。
なあ、イルマ。私はお前に出会えたこと、絶対に忘れないよ。繋がれたこと、後悔なんてひとつもないんだ。
だから、残して行くことを嘆くな。これは私が望んだ帰結で、私はこの選択を過ちだと思わない。
何もかも背負うな。背負うのなら、私にも寄越せ。
「アメリ、さん」
普段のイルマがちらつく。やっぱりそっちも泣いていて、ああ、不器用なイルマ。そんなところすら愛しい。
「好きだ、イルマ」
本当は、私はお前のすべてが欲しいんだ。