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らん
2021-03-22 23:46:41
661文字
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伊哀
伊織くんが私を見る目は、時たまひどく寂しそうになる。
私の前になにか別のフィルターがあって、そのフィルター越しに私を見ているような、そんな感覚。
そういうとき、決まって私は彼の名前を呼べなくなる。
何故か壊してはいけないような気がして、けれど、きっと、本当は壊したほうが良いのだろう。
そうと分かりながら、私は今日もフィルター越しの誰かに成り代わる。
「
……
お前、無自覚か?」
大きく溜息をついた研真の言っている意味は、なんとなく分かる。哀別を雪月と重ねるな、そう言いたいんだろう。
分かってるさ、それぐらい。死んだ人間を目の前で生きてる人間に重ねるなんて冒涜、侵すもんじゃない。
僕だってどうしたらいいか分からないんだ。もうこれ以上他人との関わりは欲しくなかったから、哀別とだってこのフィルター越しに生きていきたいんだよ。
雪月と重ねていれば、きっと、哀別に対する思いなんて薄れるだろ。
髪がもっと長ければ良かった。僕より身長も高ければもっと良かった。雪月と哀別を重ねられる要素が増えれば増えるだけ、僕は哀別に対して無感情でいられる。そうしていたい。
だから、これでいいんだ。
哀別だけに抱く愛しさを、まだ理解したくなかった。これが好きという感情なら、どうか消えてくれ。
ただ僕を見て、哀別は何も言わずに笑っている。何も知らずに、ただ、微笑んでいる。
笑う顔はどうしたって雪月と重ならなくて、泣きたくなった。
全然違う。どれだけ似ていても、まったく。
「
……
、自覚してるよ」
今はまだ、このままで居させてくれ。
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