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らん
2021-02-07 23:19:37
1148文字
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伊哀
※付き合ってる
※色々捏造してる
手を伸ばした。なんの前触れもなく、ただ、触れるためだけに。
放課後、護符まみれの教室なんてさぞかし情緒がないけれど、互いにとっていつのまにか安寧の地に等しくなった空き教室は、普段より少しだけ気温が高いように感じる。だから哀別に触れたくなった。そんな言い訳を脳裏に用意して。
「どうしたの?」
無言で伸びた手を見て哀別は首を傾げた。そのまま声は出さずただ伸ばし続けていれば、意味が分からないなりに哀別が一歩近寄る。手首に触れられる距離だった。
ただ、それじゃ足りないんだ。
なおも伸ばしたままの手に、哀別はやっぱり不可解そうな顔をしたまま、もう一歩進む。
「伊織くん
……
?」
コツリと哀別のローファーの爪先が、僕の座っている椅子の足に触れた。そこでようやくほぼ数センチの隙間を埋めるように細い腰を抱いて、哀別の体勢を崩してやる。
哀別が悲鳴をあげる暇もないまま唇を重ねた。追うように僕の足の隙間に哀別の膝が乗って、見方によっては僕が襲われてるような、そんな体勢。
「
……
っいおり、くん」
急展開について来れていない哀別も無意識的に腕が僕の首に回るあたり、だいぶ慣れたのかもしれない。
もう一度塞いでやれば、今度こそ哀別は瞳を閉じた。
「
……
哀別、」
名を呼べば、照れたようにはにかむ。なぁに、なんて、恋人になってから聞けるようになった甘い声は悪くない。
「なんでもない」
「えぇ?
……
今日も調整してくれたの?」
このところ、哀別は気分の持ちようで霊怪との接触頻度が変わる。楽しかったり、嬉しかったり、ポジティブな思考が強い時は遭いづらく、ネガティブな思考に支配され始めると霊怪を呼びやすくなるのだ。
招き手としての素養が高まっているからだとしても、哀別を危険に晒す機会が増えるのは宜しくない。
どうせ恋人になったのなら、と立場を使って哀別の気分を転換させるようにしていることを、彼女自身察知していたらしい。
いや、今はただ触りたかっただけ。
なんて、バカ正直に答える意味もないだろう。無言で笑めば、何故かすぐにバレた。軽く頬を抓られるけれど、痛くはない。
「ベツに減るもんじゃないしいいだろ」
「心の準備させてよ!」
僕の片膝に腰を降ろした哀別は、更に腕を絡ませてきた。密着すると哀別のシャンプーの香りが鼻腔をくすぐって、此処に居るのは本当に哀別なんだと認識できる。この瞬間が、一番悪くないかもしれない。
「伊織くんのえっち」
「
……
、
……
いや、哀別、お前それは今言っちゃ、」
ダメだろ。
最後まで言えなかった分の呼吸は、哀別に吸い取られた。どっちがえっちだよ、なんて、言うのも野暮だろ。
「
……
奪っちゃった」
結局、いつも負けるのは僕らしい。
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