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らん
2020-07-25 23:54:01
1201文字
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千コハ
現パロ
※いつもの設定の現パロ。11月の学生セッションイメージ。
夜が明けたばかりの空は薄暗い。
ずかずかと入り込んだコハクの部屋の温度は肌寒いくらいで、俺が来たことなんて知らずに眠っている姿は悪くなかった。
「ドロボーだったらどうすんだ」
なんて、俺だから許された無防備さなのだろう。コハクは野生の勘というのか、見知らぬ人間への警戒心は強い。慣れた足音だから、何も気づかず寝ているのだ。
合鍵でこっそりと侵入した詫びに、コンビニで買ってきた菓子パンを置いといてやる。最近ハマってたメロンパンと3個入りのビスケット。朝飯でも昼飯でも、好きなように食えばいい。
ぐるんと布団に包まった姿はまるでミノムシだった。枕に沈む顔を見たらなんだか無性に愛しくなって、気づいたらバカみたいに好きになっているんだと自覚する。
非合理的な恋だの愛だの、別にそんなの興味もなければ食おうともしなかったのに。
コハクの隣に居るのは俺が良いと感じることが増えて、コハクの隣に並ぶのが見知らぬ奴だったら嫌だと思うことが増えて、そういう積み重ねで、俺は非合理への敗北を認めた。テメーは気まぐれだとでも思ってんだろーがな、俺は大概、龍水と考えは同じなんだよ。
口に咥えられた髪を取り除いてやってもコハクが起きる気配はなかった。ベッドサイドに腰を降ろしたことによるたわみすら気にならないらしい。それでいい。
「
……
行ってくる」
このあと朝一の便で地方に飛ばなければならない。学生セッションでの講演のためだ。これまで考えてきた宇宙科学についてお有り難く機会をいただいたんで、なんなら今後の発見の為にも全部拝聴するつもりだった。
人前で研究成果を発表することに臆することなんてひとつもない。いつも通りでいい。分かってはいるけれど、ただ、出発の前にひと目コハクを見ておきたかった。
なんせ今回の講評会のことは伝えているとはいえ、遠征だと教えるのは忘れていたのだ。そんな気にすることもないだろう。それも分かってる。そう、ただ、理由もないくせに顔が見たくなっただけ。
ゆるく頬を撫でる。無意識に擦り寄ってくるところがまるで猫みたいで思わず笑ってしまった。
「寝坊すんなよ」
手を離そうとした瞬間、その手に指が伸びてきた。
「せん、く
……
?」
「あ゛ー、悪ィ起こしちまったか」
ほぼ閉じたままの目蓋が懸命に押し上がろうとしているけれど、重力に負けて下りていく。揺れる睫毛を指先で弄んで、そのまま身を任せてやった。
次の瞬間にはまた寝息が聞こえてくるもんだから面白い。そんなところさえ、いとおしい。
最後に指先を合わせて、布団の中に仕舞い込んでやった。土産は何がいいだろう?ひとまず、空港に着いたら電話のひとつでもしてやろう。
夜はいまだうっすらと輪郭を残している。名残惜しさなんて残さずに、今度こそ音もさせずに外へ出た。
今日は晴天になりそうだ。
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