らん
2020-05-15 00:24:13
1394文字
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千←コハ


神をも食う蝙蝠男はかく言う。
「嘘は便利だけど、何が本当かを忘れたら終わるのよ」
本人にとっては全て本当になってしまうのに、周囲には嘘としか思われなくなるのだと。
神に浄められた姉は説く。
「この世の全ては神の下にあり、欺くことは時として凶器になります」
その正誤の判断は、本人に拠る術はなく、周囲に委ねられていると。
ならば、神ではなく、科学だけを信じる君は?
「嘘も方便、使い方次第だろ」
ゲン見てりゃ分かるだろうが。
ラボで今日も科学を扱う千空は、フラスコから目を離さずに即答した。私はと言えばその通りだと頷くくらいしか出来ない。そう、間違っていないのだ。
「つかいきなりなんなんだ、嘘をどう思う?ってのは」
「科学使いとしては嘘というものをどう位置づけているのかと思ってな」
科学と嘘は余程遠い関係性だと認識はしているものの、実際のところ、千空にとって嘘は科学抜きに考えているものらしい。
まあ共存出来るものでもないし、当たり障りのない回答だろう。
千空の目はずっとフラスコに向けられていて、私を見ることもなかった。
「コハク、テメーはどう思ってんだ」
「私か?そうだな、……
私はもう、嘘の本質を知っているのだ、千空。
「嘘は、貫き通せば真になる」
父上に嫌われるよう動いたことで、沢山嘘をついた。嘘をついた相手は、護りたかったルリ姉にすら及ぶ。
神の存在など、本当はとうの昔に信じていないのだ。だって、もし神が居たのなら、巫女として定められていたルリ姉がどうして病を患う?治してくださらない?後世に語り継ぐ者を奪う道理もないだろうに。
だから、私はこれからも嘘をついていく。嘘でした、なんて言わない。全て自分で背負う。
(そういうことだろう、ゲン)
何が本当か、忘れてしまえばいいのだ。その上で、貫けば嘘だとも思われないのだから。
つい先程までフラスコを見ていた千空の目が、私を見ていた。かち合わなかった視線が離れない。何か思案しているのだろう、私から逸してやる気は更々なかった。
「ゲンの入れ知恵か?」
「君のゲンに対する認識はそういうモノなのか……
興味を失ったように外れた視線は、またフラスコに戻っていく。そうだ、こうやって全部貫いてしまえばいい。なんでもないことだ、これまでもずっとやってきた。三文芝居にだってならない。
だって、本当なんだから。
好きだ、なんて、言わなければいい。このまま何もないのだと未来永劫貫けば、なにも辛くない。
トライアンドトライ。エラーは吐いてはいけない。嘘つきは嘘だとバレたらジ・エンドと云うらしい。
惚れたと言ったら、君は私に幻滅するだろうから。いや違う、千空は悪くないことで、私が君を困らせてしまうから。
(人間として、好きだ)
そうやって、黙るのではなく嘘を貫く。真にする。
真剣にのめり込むその姿をずっと、近くで見るために。
私だけが知っている、私のための、『本当』だ。
「千空達の時代の嘘は、善も悪も受容されていてめっぽう素晴らしいな」
呟いた声に返ってくる言葉は無かった。


ゲンは自分の芯がブレなくて嘘をつくけど(本心は決まってるし嘘に対する矜持がある)、コハクはルリの時の前例として相手のために嘘をつくくせに自分のためみたいに言う節があるので、たまにこえーなと思う。千空テメーもだ。お前らは自分を可愛がってくれ