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らん
2020-05-10 00:50:01
4240文字
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コハクとルリ。
※現パロ
※現パロ
※ルリ大学4年、コハク2年イメージ。千コハとクロルリそれぞれ付き合ってる
「ルリ姉、私達は姉妹だ」
突然実家に戻ってくるや否や、コハクはろくな挨拶もせずルリの部屋に駆け込んできた。
ちょうど講義が午前だけでバイトもなく、部屋に居たからいいものの、ルリ本人が居なかったらどうするつもりだったのか。妹のお転婆娘は、たまに連絡もなしに姉の下を訪れる。
今日も三回ノックで返事をする前にコハクはドアを開けており、これまた唐突に話しだしたのだ。
「姉妹なのだから、やましい事もない」
「えぇと、コハク?話が見えないわ」
すべて慣れたものだと苦笑気味にルリが本題に進むよう促すと、コハクは一度深呼吸してからルリを見据えた。
何か言いにくいことなのか、それにしてはやけに真っ直ぐな視線に、ルリは姿勢を正す。
「く、クロムとは、その、」
最後までシたのか?
その声はコハクのものとは思えないほどか細く、けれどもルリの情緒を一瞬で不安定にさせるには充分すぎるほどの爆弾だった。
#
「一体何があったのコハク」
ようやく感情が鎮火したところで、ルリは一度咳払いをしてから切り出した。
姉の部屋でのコハクの定位置はサイドテーブルの貝殻クッションの上だ。今日はそのクッションを両腕に抱き、コハクはモゴモゴと歯切れの悪い返事をする。
「いやな、ちょっと、気になって」
「貴方がこういうことを聞いてくるときは、大抵千空と何かあったときでしょう」
赤く染まる妹の顔を見るに図星なのだろう。前にも同じことがあった記憶を掘り出し、ルリは続けた。
「千空と、そういうコトをシたって事?」
「ち、違う!シてない!っシてないというか、
……
」
何かを思案し、コハクは黙りこくってしまった。まるっきり前回の時と同じ反応だ。前回は、そう、はじめてコハクが千空とキスをした時。
あの時も同じようにクッションに顔を埋めながら、コハクは真剣に悩んでいた。
(恋人になるとキスをしなくてはならないのか、なんて)
嬉しかったけど恥ずかしい。思い出すと千空の顔が見れない。私がおかしいのだろうか。ルリ姉は、皆は、こうならないのだろうか。
きっと千空にはなかなか見せないであろう真っ赤に染めた顔で、さも最難関問題だとでもいうように。
正直、ルリもクロムと付き合い始めてから日は浅い。コハク達よりも幾分か早かったとはいえ、そういう色恋の相談は同年代の友人、杠が適任ではないかとも思う。
けれど、わざわざ頼ってくれた妹に応えないワケにもいかない。これは姉の挟持というより、単に妹に甘いだけだが。
ルリは耳まで染めた実妹の隣に座り、ひとつの疑問を口にした。
「千空に無理矢理迫られましたか?」
「それは断じて無いぞ!千空は絶対に、そんなことはしない!」
勢いよく顔が持ち上がり、必死に誤解を解こうとするコハクの姿に思わず笑みが溢れる。千空がそんな人物でない事はルリも勿論知っている。なんなら、キスの時は確認無しにしてしまったことを謝ったという話さえコハクから聞いているのだから。
けれど、悩みが表面化しない以上、確認はしなければならなかったのだ。
「じゃあ、何を悩んでいるの?」
姉の優しい声色に胸を撫で下ろし、コハクは視線を下に彷徨わせつつ、ゆっくりと口を開いた。
「
……
一昨日の土曜、千空が泊まりに来たのだ。その時に、その、
……
はじめて、そういう雰囲気になって、」
「むしろ今まで一度も無かったことにビックリしてるわ。何度か互いの家に泊まってるでしょう」
「うむ。付き合う前も、付き合い始めてからも、互いの研究とか部活とかでずっと会えないと泊まりはしていたのだが
……
千空は一切手を出してこなかったから」
はじめてキスをしてから、たまにキスはしてたが。そう呟きながらはにかむコハクの顔につられて少し赤くなるも、ルリは先を促す。
「ただ、一昨日はちょっと違って
……
付き合いはじめて、ちょうど三ヶ月でな。先進んでもいいかって、聞かれたのだ。覚悟はずっとしてたし、私も良いと思ってたから、了承したんだが
……
」
「
……
怖くなっちゃった?」
何度も首を振るコハクの肩に手を置いてやる。コハクはすべて吐き出すように続けた。
「その場で思わず泣いてしまってな、うまく言葉にも出来なくて、
……
千空は、無理するなって引いてしまって、次の日にはもう何も無かったみたいに、いつも通りだった」
「嫌じゃなかったのだ。キスだって嬉しかったし、そういう行為も千空となら大丈夫だって自信を持って言える。私はもっと深く千空と関わってもいいんだと許されたみたいで、千空も私を知りたいと思ってくれて、嬉しかった。嬉しくて、泣いてしまった。でも、うまく伝えられなかった」
コハクはルリから見ても裏表が無く、真っ直ぐな子だ。男勝りなところがあって滅多に泣くこともないし、言葉を素直に伝えられないことも少ない。どちらかといえば何よりも他者を思いやる心が強く、信じたことはそのまま口に出すタイプである。
きっと、千空はいつものコハクとは違う言動に戸惑ったのだろう。自身の気持ちに追いついていないと踏んだのかもしれない。ああ見えて彼もまた、心優しく、他者を思いやる人だから。
(どうしてこと恋愛において、この二人は不器用なんでしょうね、クロム)
ルリは自身の幼馴染であり、大病を患った時も傍に居てくれた彼を脳裏に描いた。病に打ち勝った時は父のコクヨウと同じくらい泣いてくれた人だ。
「それで、私にはじめての時どう進んだのか聞きにきたのね」
「
……
ああ、そういうことだ」
クロムはどうしようもなく鈍いけれど、言葉にすることを躊躇わない。なんの混じり気もない言葉で、実直に伝えてくれる。そこが千空と違う箇所だろう。どれだけ恥ずかしい言葉でも、クロムは口にして、察するのが下手だからと、何度も確認して。
大きく溜息をついてクッションに顔を埋め直してしまった妹に、ルリはサラリと思ったことをそのまま口にした。
「貴方も千空も、緊張してたのね」
「どういう意味だ、ルリ姉」
「貴方、人前でほとんど泣かないでしょう。大丈夫だって覚悟したって、心のどこかでは不安に思ってたのかも。嬉しいからって緊張しないわけじゃありません。同じように千空も、受け入れられたけど、って不安や緊張があったのかも」
あのコハクが緊張だなんて、滅多に見れないですよ千空。
いつだってコハクを恋に惑う女の子にしてくれるのは、千空だけだ。
「貴方達は精神的に距離が近いから、言葉にしなくても伝わる時も多いでしょう。大事な事はちゃんと言葉にするけど、千空は頭の回転が速いから、人より察する力も強い。コハクが思うよりもずぅっと千空はコハクのことを考えてくれてて、それでいて自分も緊張してて、何も無かったようにしてるだけかも」
「千空が緊張
……
?」
あの男が私に対してか?些か信じられないという声はクッションに飲み込まれていく。ルリはコハクの肩に置いていた手を、彼女の頭へとやり、ゆるりと撫でる。
「ねえ、コハクはどうしたいの?」
「
……
無理はしてないって何度も言った上で引かれたし、今更蒸し返しても、とは思っている。でも、多分私から行かないと、千空は暫く何も言ってこないとも思う」
「なんだ、もう決まってるじゃない」
そもそも、未遂でも良かったならルリに相談すら来ないだろう。来た時点でコハクの悩みは一点に集中している。そして、結論もほぼ出ているのだ。ただ、聞いてほしくて、確認が欲しいのだ。恋愛においてはコハクも自分の選択に自信がなくなる時があるらしい。
「ルリ姉、私はめっぽう浅ましいのかもしれない」
私は千空に、触れてほしいのだ。
それは好きな相手になら誰だって思う感情だ。
きっと、あの千空でさえも。
「姉としては、まだ早いのでは?とも思いますが」
「
……
」
「冗談よ。付き合って三ヶ月記念、ちゃんとお祝いしてないんでしょ?仕切り直ししちゃいましょう」
「お互いに記念日に興味がなさすぎるがな」
「
……
コハク、そこは流石に千空がちょっと可哀想かも」
「な、なぜだ?」
おそらく千空は、記念日を覚えている。
でなければ今回の記念日をさりげなくコハクに伝えることも、恋人として先に進もうとステップする日を偶然記念日に合わせるなんて芸当は不可能だ。
(なんだかんだちゃんと愛されてますね、コハク)
ようやくあがった顔は既に落ち込みもなく、いつものコハクの表情だった。やはり覇気のある快活な表情でいるほうが、姉としても嬉しい。
「ありがとう、ルリ姉!」
「なんにもしてないけどね」
「話を聞いてくれたではないか!それだけでめっぽう心が救われる」
頑張ってみる、そう笑うコハクの顔は、ルリにとってももう見慣れた乙女の顔だ。
「もう今日はこのまま泊まっていけば?お父さんもそろそろ帰ってくるだろうし」
「む、いや、善は急げと言うしな、千空を迎えに行く。どうせ誰かが声をかけんと非合理的でない限り研究室に籠もりっぱなしだからな」
そういうところは男前ね、言いかけた言葉は飲み込み、ルリは別の言葉を紡いだ。
「行ってらっしゃい、コハク」
きっと上手くいくわ。
END
蛇足後日談千空とゲン(会話のみメモ)
「そろそろ私はバイトの時間だ。ゲン、千空のことを宜しく頼む」
「ハァイ。あいっ変わらず男前だねぇコハクちゃんは」
「あ、おいコハク。今日バイト終わったら連絡しろ」
「了解した。それではな!」
「バイトがんばってね〜
……
でね、千空ちゃん」
「いや今のどこにでね、が入ンだよ」
「そんなのはいいのよ、もうね、今日来てからずっと聞きたかったんだけどさあ、コハクちゃんが居るところで聞くのもどうかと思ってぇ」
「アホ面倒くせぇ引っ張り方すんじゃねーよ、何が聞きてーんだ」
「じゃあ単刀直入に聞くけど千空ちゃん、童貞卒業したでしょ」
「ブッッ殺すぞテメー!どこどう見てそうなった?!なんだそのくだらねえ質問は?!」
「2択断定問題にイェスノー解答じゃなくて理由を聞く時点で、イェスって言ってるもんよー千空ちゃん
……
」
かまかけただけだったのになぁ
コハク、クロムは大学から一人暮らし設定。千空、ルリは実家で父と二人暮らし。千空とクロムは同じ国立大の学科別でルリ文系私文、コハク体育大イメージ。何も活かせてない
……
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