甘いものを好きになった。甘いものといえばオレだよね、とのたまえるようになった。形だけじゃなくて、本当に好きになれたように錯覚した。
それがなんだと言われればそれまでなんだけど、まあつまり何が言いたいかっていうと、
「オレだけのものがいいんだよね」
食堂奥、対面であんずさんとパフェを食べながらにこやかに告げれば、彼女はきょとりと瞬きを繰り返した。
「……なにが?」
スプーンでちまちまとコーンフレークをすくっていたあんずさんの手は止まって、オレの目を見る。こういう瞬間が好き。この時間だけはオレのものだから。
ザクザクとコーンフレークを粉末になっちゃいそうなくらいつついて、オレはあんずさんから目を逸らす。
「甘いもの、ぜーんぶ!」
オレに甘い人も、ぜんぶ、オレのものにならないかなあ。
なんて、少し前だったら思わなかった。甘さはゆうたくんが受け取るべきもので、苦さはオレが受け入れるものだと信じていたから。
それなのにさ、あんずさんはみんなだいすきだなんて言うから。オレのものには一ミリだってならなそうだから。
そんなのズルいって、逃げだって、誰かを選ぶ度胸のない卑怯者だって、ゆうたくんだけを選んできたオレが否定されたみたいで苛ついたんだ。なんて、ゆうたくんと比べること自体が間違っているんだけれど。
安いパフェ特有の、底に沢山詰まったコーンフレークは今日も食べづらい。ザクザク、何度も突き刺して潰して壊して、僅かばかりのソフトクリームと混ぜて口に運んだ。ザラリと口内に張り付く安い味はただ甘ったるい。
「甘いものの代名詞はひなたくんでしょう」
「そうなんだけどー、でもでもまだ強欲に行きたい!」
「ひなたくんは二年生になっても変わらないねぇ」
そうだよ、変わらないように見せてるんだよ。ホントは何もかも変わって、本当に甘いものが好きになって、それで、アンタのことも好きになったのにさ。
いつまでたってもアンタの中でオレは変わらないね。だから、甘いもの全部オレのものにしたいんだよ。
こんな想いだって全部、変わった証明なのに。
ネクタイの色が変わったって、事務所に所属したって、ユニット衣装を新調したって、身長が伸びたって、あんずさんの中の葵ひなたは変わらないのだ。
あんずさん自身は変わったくせに。ずるいよ、どうしてオレの認識を変えてくれないの?
オレを好きになってよ。オレだけを見てよ。みんなだいすきなんて誤魔化さないでよ。
ゆうたくん以外要らなかったオレに沢山の居場所をくれた癖に、アンタの中でオレはみんなの一部なんだ。
そうだ、知っている。葵ひなたはあんずさんの星にはなれない。
なんて、変えてないのはオレなのに。
「変わったらビックリしちゃうでしょ」
呟いた負け惜しみは、甘ったるいコーンフレークで誤魔化した。
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