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らん
2019-11-04 20:12:31
701文字
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乙綾
身に余る感情はうざったかった。俺は俺として生きていて、それに見合うだけの評判になんの感情も沸かなかった。
ただ、過大評価だけはいつだって、俺の身に纏わりつくたび反吐が出そうだった。
なんて、思っていたのに。
「乙幡くん」
初恋は重い。反吐が出る前に、傷つける前にそう突き放した女が、今日も俺の隣に居る。
泣いてばかり、誰かに流されてばかり、俺の顔色ばかり窺って、自分のことは何ひとつ教えてくれなかった。そんな女が、俺の隣で笑っている。
「
……
お前さ、いつまで俺のことそーやって呼ぶの」
「ええっ、だ、だって恥ずかしいっていうか
……
あとね、なんかもう乙幡くんってずっと呼んでたせいか馴染んちゃって」
どんな感情だって今は伝えてくる。嬉しい、楽しい、そんなポジティブな感情から始まって、前は下手くそな笑顔で隠していた負の感情まで、全て。俺に過大評価を押し付けるみたいな「察しろ」という感情はなくなって、ただ、綾は声に出す。
「ちょっとね、練習はしてるの。れ、麗
……
くん、って、呼べるように
……
」
「ふぅん。それ、俺の前で出来ないと意味なくね」
「そうなんだけど!ぶっつけ本番は厳しいよぅ」
「綾?」
「
……
乙幡くん、」
「綾」
「今日の乙幡くん、なんかイジワル
……
」
「どっちが」
はやく俺の名前で、感情を出してほしい。
そこまで思わせてくれるほど、バカみたいな重い感情にほだされた俺も案外重いのかもしれない。
「れ、れい、くんッ!キャーっ無理!恥ずかしい!」
「次また乙幡って呼んだら二度と綾って呼ばねぇ」
これぐらいの仕返し、許してくれよ。
感情を出せないのは俺だって同じだ。だから、名に乗せて。
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