らん
2019-05-24 08:19:13
439文字
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アギトと中山


言葉にすることに意味なんか無いと思っていた。オレとコイツは王と調律者という関係の上で成り立っているし、言葉以上にオレの身体の音で、コイツはオレの心情ぐらい容易く理解出来るから。
それでも、コイツはーー中山は、言葉にした。
「好きです」
知ってる、喉につかえた照れ隠しさえ言えなかった。ありえねえほど心音が掌から伝わってる。分かってる。いつだって中山の音はオレよりも速い。いまだに肌を合わせる時ぎこちない時だってあるし、他の調律者に比べたら技術も未熟だ。
それでも、オレの音を一番汲み取るのは中山以外いないのだ。だってコイツは、オレを好きだから。
言葉にしなくたって自明の理であることを、わざわざ言葉にするなんて、意味がないと思ってた。時間と酸素の無駄だろうが。そう言えると思ってた。言われなくたって知ってンだよ、じゃなきゃオメェはオレの調律者ですらねェだろうが。オレだって、選ばなかった。
ああ、クソ、バカじゃねえの。
「Fuck」
キスをしたいと、はじめて思わされた。