らん
2018-06-28 08:24:25
530文字
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アマデウスとマリー

オルレアン終えた記念

初恋は叶わないものらしい。それはマスターに教えてもらったことだった。
「マリーのこと好きなんでしょ?」
「二元論は好きじゃないな」
「じゃあアマデウスにとって、マリーはなんなの」
なんなの、と問われれば、彼女は初恋の具現化だ。差し伸べられた掌、受け入れられなかった結婚の申し出は、僕が他の人を好きになる時ですら思い返せたほど鮮明な記憶。
マリーのことは好きなんじゃないよ。愛しているんだ。人間として。
言葉にすることは得意じゃない。音楽家は歌わないから。僕は作曲家だから、奏でることしか出来ない。だから、伝えない。
「マリーは、王妃さ」
それは史実だと溜息をつくマスターはきっとまだ知らないんだろう。恋は好きだけじゃないのだ。尊敬や、敬愛さえも含めることだってある。時には憎悪や嫌悪さえ孕む。理屈じゃないというのはあながち間違っていないけれど。
僕が恋をしたのは、あの時から貴族の品格を兼ね備えていた、王女の彼女だった。それだけ。
「君もいつか出会えるといいね」
ねえマリー。君のためにピアノを弾くのは、僕にとって至上の喜びになるはずなんだ。言葉は難しいけれど、奏でることは得意だよ。だから、はやく、もう一度僕に手を差し伸べて。もう一度、僕に夢を見せて。