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らん
2018-02-21 15:17:59
1870文字
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エーダッシュとカノジョ。
ディアヴォ
「病院、どうする?」
ハニィの問いかけに、オレの喉は返答を拒んだ。これは熱のせいだと言い訳するにはあまりにも長過ぎる沈黙が生まれて、ああやっちゃったと心の中でひとつごちる。
ツイッターで熱を出したと呟いたが最後、というか本当は呟く気はなかったんだけれど、あまりにも熱くて冷えたオレの脳内と身体は言う事をきかないので、気づいたらあんなことを呟いていた。まあ他のメンツに騒がれるよりはマシだろう。
あとほら、ヨシュアとか。アイツ、オレのことパシったから、変にオレのことを気遣ってしまったらどうしよう、とか、そういうのも感じてしまっていたせいかもしれない。
そんでそこまで考えが至ったのに、ハニィから電話が来るまで発熱したことを最愛に伝えていなかったことをすっかり忘れていたのだ。
紆余曲折、というにはあまりにも舗装された道を通って、案の定ハニィが仕事が終わるなりオレの家へとやってきた。
薬局で買える解熱剤と、冷えピタ、塩分多めのドリンクを引っさげてきたハニィの顔はお説教する時のソレだ。
「エー
……
?」
「アハハー
……
ゴメンナサイ」
病人に叱るのも変な話だと思うけど、なんて前置きもそこそこに結構ガッツリとお説教されてしまって、オレはもう頭が上がらない。世の中の旦那達はこうやって日々説教を食らってるのかと思うとなぜか涙が出そうだった。強く生きてくれ、リーマン達よ。
「次からはちゃんと連絡してね。連絡してくれないと逆に不安になっちゃうから」
「ハイ、スンマセンっした」
優しくオレの髪を撫でるのは、許された合図だ。毛布も布団も被っているのに寒い身体はハニィの体温さえもちょっと冷たくて、説教しながら貼られた冷えピタはもっと冷たい。
説教を耐えたご褒美とでもいうのか、夜ご飯は消化のいいモノを作ってくれるらしい。ジャンクフードがイイと駄々をこねる前に笑顔で相殺された。ハニィ、こーいうときはめっちゃ怖い。
そうして何事もなく、いや、熱出てる時点で一大事なんだけど、このまま後はメシが出来るまで寝るだけだと思っていたオレに爆弾を落とすのも、目の前の残酷な女神様だった。
ハニィはもう知っている。オレが病院に行けないこと。トラウマを持っていること。
そりゃ克服したいって思ってるけど、一体何年このトラウマと生きてきたか分からないくらい、身に滲みてしまった内傷だ。
だから、やっぱり今日もオレは答えられなかった。答えたくなかった。行かなきゃならないのは分かってるけど、行きたくなかった。
ハニィが来てくれて嬉しい、でも風邪移したくはねーしどうしよう?!とりあえずマスクして?!なんて騒いでいたオレが瞬間的にしおらしくなれば、ハニィだってもう悩んでいる沈黙じゃないことくらい分かってるんだろう。
どうしよう、なんて返そう、行ったほうが良いのは分かってる。でも、
冷えた身体はまだ温かくならない。ぼうっとした頭が嫌だと地団駄を踏んでいる。さむい、こわい、しろくて、こわい、あの場所。
「エー、行きたくないなら行きたくないで良いよ」
「
……
え、」
噛み締めていた唇が、ハニィの一言で解けた。マスクをしているから大部分が覆われているせいで分かりにくいけど、ハニィの瞳はとても優しくて、甘かった。
「風邪だって誤魔化して休んじゃおうか。
……
でもね、前みたいに頑張って行くって決めたなら、私も一緒に行く」
選択権はハニィにあるんじゃない。オレにある。
その優しさと配慮と理解に、全部すくわれている。
だから、ハニィは「どうする?」と聞いてきたのだ。「行こう」とは言わなかったのだ。
ああ、オマエがオレのハニィで良かったな。
「
……
待合室とか、一緒に居てくれる?」
「もちろん」
「診察室も、」
「お医者さんに止められなければ、一緒に行けるよ」
「チョット、そこは意地でもダーリンと一緒ヨ、とか言ってくれよ」
「はいはい、意地でもダーリンの隣に居るよ」
この前ちゃんと行けたんだ。行けないワケじゃない。ハニィがいれば大丈夫。頑張れる。
というか、マジで頭朦朧としてるしヤバすぎて選択肢なんて残っていやしないんだわ。
「
……
病院、行く」
「うん。病院帰ってきたら、お粥食べようね」
「えー
……
ニクは?」
「ちゃんとお薬まで貰えたら、肉あんかけをつけましょう」
「絶対だかんな、ハニィ」
いつもより冷たく感じるハニィの掌がオレの掌と合わさって、ゆっくりと指が絡んでいく。
「大丈夫、一緒にいるよ」
その言葉だけでダルさもほんの少しだけど和らいだ気がした。
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