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らん
2018-01-15 21:26:40
1267文字
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りつかさ。
誰かの幸福を喜べることは幸せなことだと微笑んだのは、多分、ま〜くんだった。
誰かの悲しさに寄り添いたいと思えることは情を知ったのだと言ったのは、きっと、ナッちゃんだった。
誰かの背中を見て、その背を支えたいと奮い立つことは慈しみなのだと語ったのは、おそらく、セッちゃんだった。
「リッツ、おまえは優しいな」
王さまは俺に、いつも優しいと言う。そのワケを俺は知らない。王さまはいつも『語らない』で『旋律を紡ぐ』から。
じゃあ、ねえ、この感情に名前をつけてほしい。
その笑顔が可愛いと思った。震えた足を隠す気高さに寄り添いたいと思った。守るために灰になってもいいと思った。打ち解けると随分と子供らしくて、一挙一動が幼く見えるのに、いざという時誰よりもへこたれない姿を、『愛しい』と思った。
「愛しの凛月や」
兄者の呼ぶ『愛しの』の形容詞と、俺の『愛しの』はおそらくきっとイコールだけど、ほんの少しだけ違う。
あの笑顔が俺だけのものじゃないと認識するたびにほんの少し寒く感じる。それが寂しさなのだと教えてくれたのはま〜くんだった。
寄り添ってもらえない時、頼ってもらえない時、不甲斐なさに掌に熱が篭もる。それが悔しさなのだと教えてくれたのはKnightsの皆だった。
『愛しい』につける名を、教えてくれるのは誰が良い?そんなの、聞かなくたって分かるでしょう。
「ス〜ちゃん、」
愛称を呼べば振り返るその顔に、その所作に、愛しさを募らせる。
分からなくていい。理解しなくていい。気づかなくていい。なにも、知らなくていい。ただ俺が、ずっと憶えていたい愛しさだというだけ。
この『愛しさ』に名前をつけてほしい。俺にとって今、『愛しさ』とイコールになるのは『ス〜ちゃん』だから。
「いかがなさいましたか、凛月先輩」
名前なんてただの識別認証なのにね。どうしてこんなにも愛しいのかなあ。
「それは愛してるって言うんだ、優しいリッツ」
そうしてそれは、恋って言うんだ。
「ねえス〜ちゃん、恋をしたって自覚するときっていつ?」
二人きりのレッスン室、俺を気遣って夕方から始まった自主練習のお付き合い。たった10分の休憩時間に何を話し出すのかと疑問符を浮かべる後輩の顔はなんだか頓珍漢で面白かった。
「突然なんですか
……
」
「ス〜ちゃんって恋したことあるのかなーって」
「失敬な、私にだって色恋のひとつやふたつありますよ」
「ふーん、で?」
そうですね、顎に手を当てつつ思い返すス〜ちゃんの顔は真剣だった。冗談だと流してくれたっていいのになあ。
「私の何かをあげたいと、そう思えた時でしょうか」
ああ、なんだ、じゃあ、俺のすべては、恋なのだ。
「
……
そっか」
分からなくていい。理解しなくていい。気づかなくていい。なにも、知らなくていい。ただ俺が、ずっと憶えていたい愛しさだというだけ。
この恋という感情を、忘れたくなかった。
ス〜ちゃんによって恋と名付けられた俺のすべては、今日もこの子に俺が残してあげられるだけのものをすべてあげたいと疼いていた。
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