ゆらりと眼前に漂うその髪を手酷く掴めばきっと、カノジョは泣くんだろう。枕に頭を預けたまま伸ばした手がカノジョの髪を掬う。すくって、掴めなくて、落ちていく。掴みたかったはずなのに。もう一度掴み直す気にはなれなかった。どうしてか、今日はそういう気分じゃなかったから。
「どうしたの?」
構ってほしい意思表示じゃないよ、なのにどうしてアンタは微笑むの?バカだね、アンタはそうやっていつも自分から飛び込んできては失敗して痛みを自分に返す。学習をしない。いや、学習はきっとしていて、それは刷り込みに近いほど従順に享受する。オレの言葉を、全部飲み込む。
「煙草、」
そう言おうと思ってやっぱりやめた。別に、カノジョの笑う顔は嫌いじゃない。
(ずっと笑ってればいいなんて思えないのに)
泣いた顔が好きだった。オレのために伸ばされるすべてが愛おしいと思っていた。離れないと分かっているから甘えていた。愛を与えられれば返していたはずなのに、返すことがいつから恐くなったのか。
カノジョが居ないとオレは歌えない。歌えないことは生きられないことだと、どこかでまだ認めたくないオレが今日もカノジョを傷つけていく。飽きたら捨てる、そんなトラウマを植え付けて、追いかけてくるカノジョに満足して、オレだけがカノジョが居ないと生きられないワケではないと認識する。
「好きだよ」
なんてね、さえも言えなかった。ただ、呼吸と同じようにこぼれ落ちた。
好きが免罪符になるはずないのにね。知っている上で、カノジョは今日もオレのすべてを許す。
どうして泣くんだよ、アンタって本当に、どうしようもないよね。
「私も、好き」
嘘ついたら針千本飲ますから。今はキスで許してあげる
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